賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第18章 サイレンス

アリサ

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「――いや、全然めでたくないにゃん。魔女のツケはどうなったにゃん?」

「今もそのまま、利子が増え続けていると聞く」

 それは恐ろしいな、おそらく天文学的額に膨れ上がっていることだろう。
 まあ、そんなことはどうでもいい。

「つまり、酒場のトイレに行けば、魔術書のページが貼り付けてあるということだな。しかし今まで見たことも聞いたこともないぞ」

「魔女だからな、当然貼ってあるのは女子トイレだ」

 なるほど、もっともだ。
 
「ところでにゃんけど、さっき、魔術書を破ってどーたらとか言わなかったかにゃん? もしかして、何軒も回らなきゃいけないのかにゃん?」

 ジャニ・アランはすました顔で「まあ、そうなるな」と言った。

 はー、面倒だが仕方ない。
「では酒場めぐりといくか」
「いいけど、みーは飲まないにゃん」
 そうだった。うちのギルドの中で、フィッツだけはほとんど酒を飲まない。なぜなら彼女の体の四分の一くらいは猫だ、アルコールは体に毒というもの。
 しかし俺は男だ、俺一人が行ったところで女子トイレには入れない。
 ううむ、困った。

 頭を抱える俺に、ジャニ・アランが助け船を出してくれた。
「それならアリサを連れて行くと良い。酒場には詳しいからな。ついでに彼女の婚活についての依頼も遂行してやってくれ」
「ふえ? いきなり何いってるんですか、ギルド長!」
「彼氏と最近うまくいってないんだろう? よく愚痴をこぼしていたじゃないか」
「いやいや、たしかにそうですけど! いやでも、……この二人に?」

「ではたのんだぞ、イングウェイ君。私は忙しいので、この辺で失礼する」
「よくわからんが、俺はかまわんぞ。よし、行くかアリサ」
「ふえええ? いやいやいやいや、だめですって! 恥ずかしいから! あー、ちょっとー」
「いってらっしゃいにゃー。みーはホームに帰って、みんなに報告しとくにゃー」

「あー、ちょっと待て、牝猫ー!」

 ということで、俺とアリサは酒場巡りの旅に出た。
 冒険者ギルドにあるお馴染みの酒場から始まり、飲み屋街の酒場を片っ端から渡り歩く。さすがに腰を据えて飲んでいるわけにはいかないので各所数杯ずつにはしているが、それでも数が多く、けっこうなペースで酔っていく。

「それでですえー、ひっく、イングウェイさん、彼ぴがですねー、最近つめたいんれすよー」
「まあ男には思い悩む時期もあるからな。気長に待つのはどうだ」
「そーれすかあ? わたひ、浮気だと思うんれす。うえっぷ」
「しかし、確証があるわけではないのだろう? 例えば、そうだな、帰ってくるのが遅いとか、他の女からのプレゼントを身に着けていたとか」
「そんなもんないれすよー。っていうか、そもそも一緒に住んでるわけでもないですしー。こないだ送った指輪、受け取ってくれてるかなあ」
「ふむ、積極的だな、最近の女性は自分からプロミスしに行くのか」
「あー、イングウェイさん、よくないれすねえ、それ。そういう『最近の女性は~』って決めつけは、へんけんですよー。直さないと、イングウェイさんも結婚できませんよう?」
「俺に結婚願望などない」

 酔えば酔うほど、アリサは饒舌になっていくが、どうも彼ぴに具体的な問題があるようには思えない。アリサの気持ちの問題だけで、愚痴っているうちに解決すればいいのだが。
 魔術書集めも今のところ順調だ。そこでわかったのは、どうやら魔術書は書き写されて複数の酒場に出回っているらしいということ。複数のダブりページは出てきたものの、次元魔術に関する記載について、残すはあと1か所というところまでこぎつけていた。
 
 そんなこんなでたどり着いたのは、酒場『狼と鴉亭』だ。
 さほど大きい店ではないが、この店のウリはお抱えバンドによる派手なステージだ。アリサのような若い女性に大人気らしい。

「わたひの彼ぴは、ここでバンドしてるんですよー。ドラムなんです、髪が長くて赤毛のひとー」

 ふむふむ、どれどれ。
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