Family 〜愛の歌〜

帆希和華

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誕生の日に

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 令和元年5月3日。
 早朝にアネラが出産をしました。全部で4匹です。
 ですが、3匹目の女の子は逆子でなかなか出て来れず時間がかかってしまい、生まれたときにはすでに天国に旅立っていました。蘇生を試みましたが、素人にはどうすることもできませんでした。お腹から出てくるときは、まだ一生懸命に足をバタつかせていました。本に書いてあったことと違うじゃん! 逆子でも普通に生まれてくるって書いてあったじゃん! アネラも痛みに耐えて一生懸命だったのに…… 残念、そんな言葉では言い表せないくらい、ショックでした。
 4匹目の男の子も逆子で少し時間がかかってしまい、元気がなく息もしてるかわからない状態でした。人工呼吸やマッサージを何度か繰り返し、何とか一命を取り止めました。
 それは本当によかったんですが、へその緒が根本から千切れていたようで、血がどくどくと出てきていました。すぐさま病院へ連絡をし連れて行きました。1時間ほど止血に時間を要したものの、何とか血は止まり帰ってこられました。
 他の2匹よりもおっぱいの吸いつきがよくなかったり、ママから離れてしまったり、ちゃんとミルクが飲めてなかったのか、体温も低いように感じました。
 翌日の早朝、これではまずいと思い、人口哺乳を試みました。なかなか飲んでくれず自分の小指にミルクをつけて少しずつ与えると指を吸ってきました。これでいける! そう思っていました。それでも飲んだ量は規定の半分ほどでとりあえずママに戻し、一旦仮眠をした。
 目が覚めてどれどれどんな調子かなと、軽い気持ちで様子を見てみました。すると、ママから離れていて身体は冷たく、呼吸もありませんでした。
 頭が真っ白になり、流れる時間が嘘のように感じました。
 すぐに後悔がよぎりました。もっと初めから人口哺乳していたら、ママと離れて体温を奪われてしまうなら、自分が抱っこして温めてあげていたらよかった……
 逆に、自分が何もしないでいたら、こんなことも起きなかったのかもしれない。余計なことをしてしまったのかもしれない。
 朝から涙が止まらず、沈み込んでしまいたかった。
 病院に行く途中の道でク~ク~と必死に鳴いていました。絶対助けてあげるから、そう、思ったのに、結局何もできていなかった。
 悔しくて、悲しくて、どうしたらいいかわからなくて崩れそうでした。
 でも、これじゃいけないと横を見て思い起こされました。
 それを思わせてくれたのも、まだ元気に生きている赤ちゃん犬のウ~ウ~、ク~ク~という鳴き声と、一生懸命面倒をみているママ犬、パパ犬の姿でした。
 そこでどうにかこの思いを整理して残したいと思い。歌を書きました。
 小説ではないですが、どうかこの思いを聞いて欲しいです。
 そして、この子たちが誕生したことを1人でもいい、知ってほしいと思いました。
 
 男の子をアロハ、女の子をモアニと名付けました。
 両方ともハワイの言葉で、アロハは愛、愛情、愛するという意味があります。
 愛される子、愛のある子、愛してるよと願いを込めました。
 モアニは海から流れてくる香り、そよ風という意味があります。
 海から流れる香りのようにみんなに笑みを与えて、誰からも好まれるそよ風のようになれますようにと願いを込めました。
 



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