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第2章 荒れ狂う極寒の都市『スノーガーデン』編

第60話 試し切りと王子の話

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パァン!パァン!

蒼い閃光と紅いスパークが混じった弾丸が黒杉の拳銃から放たれる。
放たれた弾丸は化け物頭を的確に抉るように頭はポッカリと大きな穴が出来る。

「意外と脆い・・・ん?」

しかし、抉られた頭部がぐにゃりと生えてきて、元の口だけの頭の状態に戻る。
生えてきた頭部からは血が滴る。
その際、化け物は嘲笑うかの様に、"お前たちの攻撃が効くわけが無い"と歯をカタカタ鳴らし不気味に笑う。
3人は察する。
並みの攻撃ではこの化け物にはダメージは通らないことを。

「普通の攻撃じゃあ、効かないって事か・・・」
「あんなすぐに再生するなんてチートじゃない!チート!?」
「クレナ・・・落ち着いて・・・」

クレナは目の前の出来事に混乱する中、アイリスが宥める。
落ち着いた所で、気持ちを切り替える。

「さて、ヨウイチどうする?」
「そうだな・・・武器に変わってくれ」
「分かったわ」

そう言って、クレナは黒杉の手に吸い込まれるように短刀に変わる。

「さて、お前の試すときが来たぞ」

そう言って、”収納”を発動させ、黒い鞘を納めた、蒼く怪しく光る一本の刀を取り出す。
黒杉は刀を鞘から抜くと、美しい刀身から身にまとうように蒼く燃え盛る。

「さあ、黒姫ノ紅!お前も燃え盛れ!」

クレナは答えるように、短刀から剣になり、刀身事態が紅の炎のように燃える。
左手にシグルート、右手にクレナを持って構える。

「アイリス、援護は頼むぞ」
「分かった・・・任せて!」

足に魔力を込め、敵に向って駆け抜ける。
それを見た、化け物たちは自分たちの餌が来たと言わんばかりに、数百体が一斉に襲い掛かる。

「お前たちが、超再生持ちなら、それを止めればいい話だろ!十文字切り!」

そう言って、敵に目掛けて二つの燃えるの刃が交差するように斬られる。
相手はケタケタを笑う。
しかし、その笑いは次第に止まる。
斬られた部位が灼熱の温度によって、溶けて傷口が塞がれていた。
化け物は再生できない事が理解しもがくように暴れる。

「いつまでも再生できると思うなよ、そのまま死にやがれ」

攻撃が飛び交う中で、次々と切り伏せていく。
煌めく紅と蒼の炎が化け物達を燃え上がらせ溶かしていく。
その度に、プスプスと黒い炭になる、出てくる黒い煙からは、元人間だからだろうか、若干すっぱい匂いが焦げるように刺激臭がする。

「ヨウイチ・・・!右に避けて!」

アイリスと掛け声と同時に、右に避ける。
その瞬間、後ろから赤い龍の頭見たいな形した炎が大きく口を広げて、化け物たちを飲み込んで燃やし尽くしていく。
片手を左に動かすと、それに連動して炎が動く。

ケタケタケタケタケタ・・・!!

次は上から、化け物が降ってくる。
それに気づき、シグルートを鞘に納めて、すぐさまに収納から手榴弾を手に取る。
投げさせるわけには行かないとばかりに、次は数十体の化け物が鋭い爪で攻撃してくる。
しかし、もう片方の手に持ってたクレナで巻き込むように横に一閃する。
化け物は苦しみ、悶え絶命。
その一瞬の隙に、口でチィンッと音慣らしピンを抜き、上に向けて投げる。

ドォオオオオオン!

上から振ってきた化け物に当たって、周りを巻き込み轟音と共に爆発四散。
その際に飛び散った、肉片が脈を打っていたが、次第に活動が止まる。
流石に肉片の状態では再生できないようだ。


化け物を達は黒杉とアイリスの手によって、次々と一掃される。
だが、一向に減る気配はなく、無尽蔵に湧き出て押し寄せてくる。

「ったく!どこから来やがるんだ!」
「方向を見た感じ・・・門から・・・もしかして」

アイリスを魔眼を発動させ、何処から湧き出ているのかを確認する。
嫌な予感がする、アイリスが言うことが本当なら、町の人達はどうなってるのかが予想が出来る。
スカラ女王がやってる事に少し腹が立ってくる。

次第に、押し寄せてくる敵に囲まれる。
化け物の歯のカタカタを鳴らす音が耳障りになる。
実に不快だ、このまま城事を木端微塵にしようと思ったが、後でめんどくさくなるのは勘弁だったので爆発物をしまう。

「しかし、困ったな、このままだとこいつ等の餌になりかねない・・・どうする?」
「鬱陶しい・・・」

互いに背中合わせになり、化け物たちを見渡す。
血と焦げ臭さがその場に充満し最悪の状況下のなかで、緊張が走る。
黒杉は顎から汗が落ちると同時に、再び一斉に襲い掛かる。

「っく・・・!」

覚悟して、武器を構える。
その時、何処から逞しい声をしながら、魔法の詠唱が聞こえた。

「"暴雨の壁(グラヴィス・プルーヴィア)"!!」
「な、なんだ・・・!」

黒杉たちが一斉攻撃されそうな瞬間だった。
突如、自分たちを守るように水の渦が壁のように防いで化け物の達を吹き飛ばす。

黒杉は声の方向を見るとそこには、水の壁から通り穴見える、そこから大柄の筋骨隆々な男性が入ってくる。
しかし、それとは別で何か高貴な感じを漂わせる雰囲気を醸し出していた。
白いスーツだからだろうか?
黒杉は警戒するにも、先に男性の方から話しかけてきた。

「ガハハ!どうやら無事の様だな!」
「貴方は一体・・・?」
「おっと、紹介するのが最初だったな!俺の名前はニルヴァフだ!」

ニルヴァフ、何処か聞いたことある名前だった。
頭を捻り、何処で聞いたかを思い出そうとする。
元々はこの場所は結婚式、白いスーツ、聞いたことある名前、この高貴な雰囲気、そこで導き出される答えは・・・。

「ニルヴァフって・・・あのスカラ女王の婚約者相手の!?ニルヴァフ王子か!?」
「ハハハ!そんな驚かなくても良いだろう!今は脱出だ!どうやらこの町は危ないらしいからな!」

そう言って、ニルヴァフ王子は何かを唱えると水の壁が広がっていき徐々に化け物たちを飲み込んでいく。
化け物は抵抗できずに、渦の中で漂うように回っている。
まるで、子供を遊ぶように。

そして、ニルヴァフのさっきまでの笑顔とは別に真剣な顔になり、話はじめる

「さて、ここで話すのもあれだ、何処か安全な場所に移動しようか。」
「しかし、ニルヴァフ王子、安全って言っても、先ほどここの町は危ない事を言ってましたよね?」
「あぁ、それなら大丈夫だ!心当たりはあるからな!」

そう言って、ニルヴァフは城の外に向って出ようとして歩き出す。
歩き出すと、水の渦壁も彼の動きを合わせるように動く。
当面の間は、安全のようだ。

「さぁ、行こう!案内をしよう!」

俺達はニルヴァフ王子に守られながら向かうのであった。
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