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第2章 荒れ狂う極寒の都市『スノーガーデン』編

第65話 VSスカラ女王 傷つけるの者の戦い【上】の話

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パァンパァンッ!!

銃声音と共に、スカラと化け物たちは、銃弾を避けて、黒杉たちに向かって真っすぐ滑る。
化け物たちは、ニルヴァフ王子とビャクヤに目掛けて、走り出し、鉄のような拳で殴り掛かかる。

「クロスギくん!スカラは君に任せたよ!」
「ご武運を」

そう言って、茶目っ気にウィンクをするニルヴァフは水魔法で化け物を拘束し、ビャクヤはナナイの強化魔法で拳と拳でぶつかり合い、衝撃波が広がる。
そんな、簡単に拘束できるなら、スカラを相手してほしいものだが、既にあっちで戦いが。
どうやら、戦うしかないようだ。

「さあ、存分に踊ろうじゃないか」
「踊るのは舞踏会で十分だよ」

拳銃を構えて、4発撃ち、【大元帥】の効果で、全員にバフを掛けつつ、加速の効果を使って、銃弾を高速装填し、5発を撃つ。

パァンパァンッ!

そのまま、スカラは武器を構えて、舞うように巧みに槍で弾丸を捌く。
その動きは、一本の槍とワルツを踊るように美しく、こちらに少しずつ迫ってくる。

「無駄だ。飛び道具如きで、私の槍は止められない」
「そうかよ!んじゃ、これはどうだ!」

【収納】から、手榴弾を取り出し、【極限投擲】を発動させ、光速で投げつける。

「だから、言ったろう!私には飛び道具は効かないと!」

そう言って、槍で攻撃しようとした時、スカラは黒杉が凶悪な笑みを浮かべてるのが見えた。
しかし、槍は手榴弾に目掛けて、既に振られていた。

ドオオォォオオン!!

黒杉の狙い通り、この世界は現代科学と言う物は知らない、それを逆手に取ったものの・・・。

「やっぱり、うまくは行かないか・・・」

凄まじい轟音と共に、爆風は一瞬で”凍る”。
本来、残らないものが、形として残っている。異常な光景。
飛び道具が効かないとなれば、近接戦闘のみになってくる。
しかし、あの槍捌きを見る限り、リーチの問題で、剣と短刀の相性が悪い。
どうしたら、いいものか・・・。

「さて、考える余裕を与えると思ったか?穿て!魔弓ガイ・アイフェ‼︎」

そう考えていると、膨大の魔力を感じる。

──パキャアアン!

凍った爆風の壁が粉々に砕け、何かが飛んでくる。
見えたのは、真っすぐこちらに飛んでくるの赤槍と、奥に弓を構えたスカラの姿があった。

「うおあっ!?そんなのありかよッ、そんなの矢だけにしろよ!」
「ハハッ、君も面白い物を使っているではないか、これぐらい、良いだろう?」

向って来る槍を避けようとするが、思ってた以上に早く避けきれそうにない。
その時、アイリスが横から、大剣で槍を弾く。

「ほお、燃ゆる大剣か・・・魔剣使いに会えるとは、今日は運が良い物だな」
「ヨウイチ・・・大丈夫?」
「ああ、助かったよ」

アイリスは笑顔で頷く。
そんな、姿を見ていた、スカラは苦虫を潰したような顔をし、そのまま腕を上げる。
すると、槍はガタガタと振動する。
そのまま、飛び上がるように宙で回転しながら、彼女の手に戻り、再び構える。

「ふん・・・黒杉と言ったか?そいつは、お前の恋仲か?」

そう言われると、少し言葉に詰まる。
自分が告白したわけでもないから、恋仲でもない・・・ただ、アイリスから好意を寄せられているのは分かる。
何なら、夜を共に営んだこともある。
俺にとって、アイリスはどんな存在なんだ?
しかし、復讐と守ることしか考えなかった、俺にとってアイリスは旅仲間の意識しかなかった。
思え返せば、そんなことしか考えられていない、自分は最低な野郎だ。

「ヨウイチは・・・私の大切な人」

アイリスはスカラに立ちはだかるように、立って言う。

大切な人、確かにそう言った。
自分の目に映る、その小さいようで、大きな背中は気持ちの支えとなっていた。

そうか、簡単な事だ。
俺にとって、アイリスは・・・。

「そうだな。掛け替えのない、俺の大切な人だ」

そんな、自分にとっての都合の良い答えを、言葉にして出す。
今までの事を思い返せば、そんな資格はない。
そして、思われる資格もないだろう。
だけど、それでも、アイリスは俺にとって、守りたい存在、大切な人には変わりない。
俺は自分自身を悔やむ。最低だ。
だけど、次言われた時には、胸を張って言えるような、人物でありたいと思う。

スカラは納得した顔で言う。

「そうか、なら・・・幸せ者だな。だが・・・」

スカラは、爆発で少しボロボロになった、紫のドレススカートの部分を破り、脚が見える。
そのまま、動きやすいように太ももの辺りに結ぶ。

「妬ましい。その自由と通じ合える仲が妬ましい。そして、憎い」

スカラは走り出し、長槍を黒杉に向けて、貫こうとする。
しかし、アイリスは、その攻撃を許さず、燃え盛る大剣で応戦する。
武器同士でぶつかり合い、甲高い音が耳に鳴り響く。

「アイリス!耳を塞ぎながら、しゃがめ!!」

黒杉の合図で、勢いよく姿勢を低くする。
スカラが目にしたのは、先ほど飛び道具とは一回り大きい武器。

「オラァッ!これでも、食らって寝てろ!」

黒杉が収納から取り出したのは、ハグレ特製のポンプ式【散弾銃(ショットガン)】。
スカラとの距離は、1.5m弱ぐらい。アイリスを影にして、完全不意打ち、避けるのはほぼ不可能。

そのまま、散弾銃に【極限砲撃】を付与し、【仁王】【大元帥】の能力で更に上乗せさせ、極限まで動きを加速させる。
スカラに標準を合わせ、最速で引き金を引く。

ドオォォンッ!

その雷のような轟音と共に、地面一面が抉り吹き飛ぶ。
もはや、散弾銃の領域を超える威力。
直撃した、スカラはタダでは済まないだろう。

蒸発した雪煙から、見える景色は左右に分かれて抉れる地面と、その真ん中を突いた後であろうと、構えるスカラの姿。
槍の先端に向かって、黒い魔力が集中していた。
その力を一点集中したおかげなのか、防ぐことが出来たのだろう。

「ほほう、見た事のない技だな。凄まじい力だ・・・だが、儂の槍の方が勝ったようだな」
「そりゃあないぜ、規格外すぎんだろ・・・っと!?」

最後まで発言する前に、スカラは槍を振る。
低姿勢で身を翻して、ギリギリ避ける。
その状態で、右手の黒姫ノ紅を顔に、目掛けて投擲する。
投げられた武器は、顔を小さく避け、頬に掠り血が滴る。

黒杉は【黒姫ノ影】を発動させ、瞬間移動し、そのまま、収納から竜刀を取り出し抜刀する。
しかし、頭の後ろ眼に付いているかと思えるほどに、後ろを向いたまま、的確に槍で防ぐ。

「ハハッ!女性の顔に向って、ナイフを投げることはないだろう?」
「だったら、人の話ぐらい最後まで聞いたらどうですかね!!」

二人が話をしている隙をついて、アイリスが攻撃する。
何やら、大剣に【魔術執印】を書く。
その瞬間、今まで大剣にため込んでいたかのように、更に炎が燃え盛る。
姿勢を低くし身体を捻る──抜刀の構えだ。
そのまま、横に一閃に振るう。

「叉斬火(さざんか)・・・!!」

三つの煌めく紅い閃光が一直線に伸び、上段、中段、下段のほぼ同時の剣撃が襲う。
大剣と思えない、恐ろしい程の速剣。
そして、この技は何処かで見たことがある。

「あれは・・!月ノ城さんの抜刀術の【皐月】!?」
「ほお・・・!!速いな!だが、ただの"連撃"なら防げるぞ!」

本家の技と比べたら、まだまだ遅い。それでも大剣であの速度は威力が爆発的。
だが、スカラは冷静に対処する。
アイリスが振るう前に、黒杉の脇腹に目掛けて、回し蹴りを食らわせ、吹き飛ばす。
そのまま、回し蹴りの回転を利用しながら、長槍で受け流すように捌く。

「カハッ!?」
「ヨウイチッ・・・!!」
「ほら、休んでいる暇はないぞ」

そのまま、スカラは攻撃を畳み掛ける。
アイリスに向けて、連続突きを繰り出す。
流石に、直撃は不味いのか、距離を取ろうとして、後ろに大きく後退する。

「槍に対して、後ろに後退は愚策だな。降り注げ損害の槍───【三十・穿つ損害(トリジィタ・プントゥム・ダルグ)】!」

そのまま、槍をアイリス向けて投げる。
投げられた赤槍が、瞬く間に分裂していき、襲い掛かる。

「っく・・・!」

大剣を盾にし、降り注ぐ槍の猛攻を防ぐ。
その間、スカラは弓を構え、手から黒い氷の矢を作成する。

「さあ、このままだと、追い詰められるばかりだぞ」

矢に魔力が一転集中する。
避けようにも、降り注ぐ槍が動きを限定させ、避けれない。
そして、アイリスに向けて放つ。

バシュンッ!
パァン!!

放たれた矢は、アイリスの一直線に飛ぶ。
当たる寸前、銃声音が聞こえると同時に、矢は砕ける。
スカルはその音を方向を見ると、黒杉が拳銃を構えて、先端から煙をだしていた。

「あっぶねえ・・・」
「良い腕してるじゃないか」
「そりゃあ、どうも!」

黒杉は、緑の丸薬と赤の丸薬を取り出して、口の中に入れて砕く。
先ほど、もろ食らった回し蹴りの痛みが引いていき、身体から力が漲る。
槍を持っていない、今がチャンス。
起き上がって、黒姫ノ紅を投げて、瞬間移動し近接戦に持ち込む。

「良い判断だが、何時から私が槍が一本しかないと思った?」
「何ッ!?」

スカラの手元が空間が歪む。
そこから、先ほどよりも、短い槍を取り出し、刀と剣で攻撃するが、防がれる。
そのまま、下に受け流し、素早く顔に目掛けて槍を突こうとする。

黒杉は槍の動きを捉えて、顔を掠めて、ギリギリ避ける。
しかし、スカラ女王は不気味に笑う。
嫌な予感がする。

「ハハッ、やっと当てられたぞ。意外とすばしっこくてびっくりしたぞ」
「いったい、何を・・・ッ!!」

何処から、ミチミチと音がする。
意外と近くに聞こえる、何処だ、何処から聞こえる?

ふと、先ほど掠れた、頬を触る。

「・・・痛ッ!?」

頬を触ったはずなのに、何かに噛まれる。
嫌な予感がする。
しかし、スカラ女王は考える暇を与えず、槍を攻撃する。
反応に遅れ、次に腕を掠める。
次は鮮明に聞こえた。

攻撃された、腕の傷を後を見る。
ケタケタをぎらつく歯。不気味に笑いながら血を口。
今回の元凶とも言える。"血黒病"が自分の腕に出来ていた。

その瞬間、身体が重りが付いたように重くなる。

「っぐ・・・!」
「これじゃあ、動くことすら至難だろう」
「ヨウイチッ・・・!?」

遠くから、アイリスの声が聞こえる。
次に激痛、吐き気、耳鳴り。
非常に気持ち悪い。
明らかに、進行速度が異常だ。

そして、スカラは黒杉を見下ろすよに見つめる。
そのまま、顔に槍を向ける。

「これが・・・我が能力【傷つける者(クィ・ノチェレ・スカジ)】、この槍に傷つけられた者は、呪いによって蝕み、そして死ぬ」

スカラの声と眼は、この極寒地帯に相応しいぐらいに冷たかった。
そして、黒杉の意識が、少しずつ遠のいていく。



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