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灰の果て、潮の灯り
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僕と奈緒が初めて深く言葉を交わしたのは、設計事務所での出来事がきっかけだった。横浜市、みなとみらいの事務所で、僕の描いた設計図の断熱計算がズレて、上司に「ゼロカーボン基準に届かねえ」と怒鳴られていた。
奈緒は事務所のバイトで、建築学科の学生として現場の下見やデータ入力を手伝う後輩だ。普段は「鈴宮さん、これ間違ってますよ」と鋭く指摘してくる彼女に気圧され、仕事の話以外はろくに会話していなかった。
その日、初回クライアント打ち合わせで藤原さんが現れた。みなとみらいの再開発を依頼してきた藤原瑠璃だ。薔薇の香水を纏った彼女は、「横浜の海辺に映える美しいランドマークにしてね」と微笑んだ。
打ち合わせ後、先輩の佐藤さんが「鈴宮、ホルモン食って元気出せよ」と僕を中華街の焼肉店に連れ出し、奈緒も「私も行きます」とついてきた。彼女は網にホルモンを放り込み、僕を見た。
「ホルモン、初めてじゃないですよね?」
彼女の声に鼓動が速くなった。「いや、ただ……あんまり」と返すと、彼女は目を細めて笑った。
「もったいないですよ。内側から燃える感じがするんです。恋みたいに。鈴宮さんも燃えてみませんか?」
胸が熱くなり、佐藤さんが「鈴宮、食えよ」と肩を叩いてきた。奈緒が僕にビールを差し出し、油で光る指がグラスを握った。
「鈴宮さんって、意外と可愛い顔してますよね。壊してみたいくらい」
彼女が寄りかかり、息が首筋に当たった瞬間、心臓が跳ねた。
佐藤さんが「轟、そいつ口説くならもっとやれ」と笑った。
藤原さんは事務所に何度も足を運び、僕が設計に没頭する姿や、ミスに落ち込む表情を遠くから見ていた。彼女は打ち合わせの合間に僕に近づき、「鈴宮君、頑張ってるわね」と声をかけたり、設計図を手に持つ僕の指先に触れたりして、距離を縮めてきた。
ある夜、藤原さんが僕に電話をかけてきた。「鈴宮君、今夜、会いたいわ。事務所で待ってる」と個人的な口調で誘われ、迷いながらも向かった。
オフィスの灯りが薄暗く、窓からみなとみらいの夜景がぼんやり見えた。彼女はデスクに腰掛けて胸元を緩め、スカートの裾を少し上げた。膝が露わになり、白い肌が蛍光灯に映えた。
「鈴宮君、疲れてる顔がたまらないわ。こんな男らしい体、放っておけない」と囁き、僕の肩に指を這わせた。彼女の瞳は深く、薔薇の香水が鼻をくすぐり、心臓が激しく鳴った。「私、あなたの熱を全部味わいたい。抱いてくれなきゃ、私が壊れちゃうよ」と甘く耳元で囁き、僕の首筋に唇を寄せた。冷たい息が肌を這い、彼女の指がシャツのボタンを外し始めた。「私の肌、触ってごらん。火傷するくらい熱いから」と誘う声に、頭がクラクラした。
彼女は僕をデスクに押し倒し、スカートを脱ぎ捨てた。薄い下着越しに肌が透け、彼女が僕の上に跨ると、冷たい手が胸を掴み、腰がゆっくり動き始めた。汗が混じり、息が乱れ、彼女の髪が顔に落ちてきた。服が全て剥がれ、彼女の全裸が目に入った瞬間、太ももに黒いアラビア文字のタトゥーが浮かんだ。読めなかったが、その流れるような曲線と鋭い筆致に、異様な美しさと危険を感じた。
行為が終わり、彼女は微笑みながら服を着直し、「これが私の愛の形」と呟いた。タトゥーは、かつて愛した男のために彫ったものらしい。彼女がその男に全てを捧げたのに裏切られ、痛みを刻んだ。罪悪感と混乱が胸を締め付けた。
その夜、眠れず、奈緒の笑顔が頭をよぎった。
夏の終わり、元町の小さな蓮池で花を見ていた。事務パートの暮林綾乃が加わり、彼女が「写真撮りましょうよ。緑化の資料に使える」と言い出し、佐藤さんが「めんどくせえ」とカメラを放り投げた。
僕と奈緒は池の縁に座り、水面に浮かぶ花を見上げた。彼女の手を握ると、冷たく汗ばんだ感触に胸が締め付けられた。
最近、奈緒は僕の設計ミスに気づき、「鈴宮さん、ちゃんとやってくださいね」と念を押していた。事務所でそのミスが発覚し、再開発プロジェクトのCO2排出量が基準を超えた。上司に「納期までに直せなきゃ終わりだ」と言われ、プレッシャーが重くのしかかっていた。
その日の帰り道、奈緒が僕と並んで歩き、アパートの近くで立ち止まった。「鈴宮さん、私、あなたが好きです。一緒にいたいです」と静かに言った。彼女の声は小さく震え、目を逸らさずに僕を見つめていた。胸が締め付けられ、言葉に詰まった。
僕は彼女の手を握り、「僕もだよ」と呟いた。
翌朝、藤原さんから再び電話がかかってきた。「鈴宮君、今夜、会いたいわ。設計だけじゃ物足りないでしょう?」と誘う声が耳に響いた。
でも、奈緒の手の感触がまだ残っていて、僕は冷静に答えた。「藤原さん、すみません。今、仕事が忙しくて。納期が近くて手一杯なんです。」
彼女は一瞬黙り、「そう。残念ね」とだけ言って電話が切れた。
事務所に戻り、徹夜でBIMを駆使し、廃材と緑化を融合させた設計を仕上げた。朝、奈緒が隣でデータを確認し、「これならいけるね」と笑った。僕らは手を握り合った。
その日の夕方、事務所の窓からみなとみらいの海が見えた。設計図が上司に承認され、プロジェクトが動き出すことが決まった。
奈緒と一緒に屋上に出て、夕陽に染まる横浜の街を見下ろした。彼女は僕の隣に立ち、「鈴宮さん、私、このビルが完成したら一緒に暮らしたいです。ゼロカーボンな家で、あなたと」と静かに言った。
風が彼女の髪を揺らし、笑顔が柔らかく光った。僕は彼女の手を強く握り、「そうだね。一緒に作ろう。未来を」と答えた。
遠くで汽笛が鳴り、海辺に新しいビルが立つ日を想像した。奈緒の情熱と僕の決意が、持続可能な設計と愛を両立させた瞬間だった。
奈緒は事務所のバイトで、建築学科の学生として現場の下見やデータ入力を手伝う後輩だ。普段は「鈴宮さん、これ間違ってますよ」と鋭く指摘してくる彼女に気圧され、仕事の話以外はろくに会話していなかった。
その日、初回クライアント打ち合わせで藤原さんが現れた。みなとみらいの再開発を依頼してきた藤原瑠璃だ。薔薇の香水を纏った彼女は、「横浜の海辺に映える美しいランドマークにしてね」と微笑んだ。
打ち合わせ後、先輩の佐藤さんが「鈴宮、ホルモン食って元気出せよ」と僕を中華街の焼肉店に連れ出し、奈緒も「私も行きます」とついてきた。彼女は網にホルモンを放り込み、僕を見た。
「ホルモン、初めてじゃないですよね?」
彼女の声に鼓動が速くなった。「いや、ただ……あんまり」と返すと、彼女は目を細めて笑った。
「もったいないですよ。内側から燃える感じがするんです。恋みたいに。鈴宮さんも燃えてみませんか?」
胸が熱くなり、佐藤さんが「鈴宮、食えよ」と肩を叩いてきた。奈緒が僕にビールを差し出し、油で光る指がグラスを握った。
「鈴宮さんって、意外と可愛い顔してますよね。壊してみたいくらい」
彼女が寄りかかり、息が首筋に当たった瞬間、心臓が跳ねた。
佐藤さんが「轟、そいつ口説くならもっとやれ」と笑った。
藤原さんは事務所に何度も足を運び、僕が設計に没頭する姿や、ミスに落ち込む表情を遠くから見ていた。彼女は打ち合わせの合間に僕に近づき、「鈴宮君、頑張ってるわね」と声をかけたり、設計図を手に持つ僕の指先に触れたりして、距離を縮めてきた。
ある夜、藤原さんが僕に電話をかけてきた。「鈴宮君、今夜、会いたいわ。事務所で待ってる」と個人的な口調で誘われ、迷いながらも向かった。
オフィスの灯りが薄暗く、窓からみなとみらいの夜景がぼんやり見えた。彼女はデスクに腰掛けて胸元を緩め、スカートの裾を少し上げた。膝が露わになり、白い肌が蛍光灯に映えた。
「鈴宮君、疲れてる顔がたまらないわ。こんな男らしい体、放っておけない」と囁き、僕の肩に指を這わせた。彼女の瞳は深く、薔薇の香水が鼻をくすぐり、心臓が激しく鳴った。「私、あなたの熱を全部味わいたい。抱いてくれなきゃ、私が壊れちゃうよ」と甘く耳元で囁き、僕の首筋に唇を寄せた。冷たい息が肌を這い、彼女の指がシャツのボタンを外し始めた。「私の肌、触ってごらん。火傷するくらい熱いから」と誘う声に、頭がクラクラした。
彼女は僕をデスクに押し倒し、スカートを脱ぎ捨てた。薄い下着越しに肌が透け、彼女が僕の上に跨ると、冷たい手が胸を掴み、腰がゆっくり動き始めた。汗が混じり、息が乱れ、彼女の髪が顔に落ちてきた。服が全て剥がれ、彼女の全裸が目に入った瞬間、太ももに黒いアラビア文字のタトゥーが浮かんだ。読めなかったが、その流れるような曲線と鋭い筆致に、異様な美しさと危険を感じた。
行為が終わり、彼女は微笑みながら服を着直し、「これが私の愛の形」と呟いた。タトゥーは、かつて愛した男のために彫ったものらしい。彼女がその男に全てを捧げたのに裏切られ、痛みを刻んだ。罪悪感と混乱が胸を締め付けた。
その夜、眠れず、奈緒の笑顔が頭をよぎった。
夏の終わり、元町の小さな蓮池で花を見ていた。事務パートの暮林綾乃が加わり、彼女が「写真撮りましょうよ。緑化の資料に使える」と言い出し、佐藤さんが「めんどくせえ」とカメラを放り投げた。
僕と奈緒は池の縁に座り、水面に浮かぶ花を見上げた。彼女の手を握ると、冷たく汗ばんだ感触に胸が締め付けられた。
最近、奈緒は僕の設計ミスに気づき、「鈴宮さん、ちゃんとやってくださいね」と念を押していた。事務所でそのミスが発覚し、再開発プロジェクトのCO2排出量が基準を超えた。上司に「納期までに直せなきゃ終わりだ」と言われ、プレッシャーが重くのしかかっていた。
その日の帰り道、奈緒が僕と並んで歩き、アパートの近くで立ち止まった。「鈴宮さん、私、あなたが好きです。一緒にいたいです」と静かに言った。彼女の声は小さく震え、目を逸らさずに僕を見つめていた。胸が締め付けられ、言葉に詰まった。
僕は彼女の手を握り、「僕もだよ」と呟いた。
翌朝、藤原さんから再び電話がかかってきた。「鈴宮君、今夜、会いたいわ。設計だけじゃ物足りないでしょう?」と誘う声が耳に響いた。
でも、奈緒の手の感触がまだ残っていて、僕は冷静に答えた。「藤原さん、すみません。今、仕事が忙しくて。納期が近くて手一杯なんです。」
彼女は一瞬黙り、「そう。残念ね」とだけ言って電話が切れた。
事務所に戻り、徹夜でBIMを駆使し、廃材と緑化を融合させた設計を仕上げた。朝、奈緒が隣でデータを確認し、「これならいけるね」と笑った。僕らは手を握り合った。
その日の夕方、事務所の窓からみなとみらいの海が見えた。設計図が上司に承認され、プロジェクトが動き出すことが決まった。
奈緒と一緒に屋上に出て、夕陽に染まる横浜の街を見下ろした。彼女は僕の隣に立ち、「鈴宮さん、私、このビルが完成したら一緒に暮らしたいです。ゼロカーボンな家で、あなたと」と静かに言った。
風が彼女の髪を揺らし、笑顔が柔らかく光った。僕は彼女の手を強く握り、「そうだね。一緒に作ろう。未来を」と答えた。
遠くで汽笛が鳴り、海辺に新しいビルが立つ日を想像した。奈緒の情熱と僕の決意が、持続可能な設計と愛を両立させた瞬間だった。
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