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第10章
スーパーインコ
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かご抜けで私の世界は一気に広がった。
飼い主が出かけた後の心細さより、楽しさが勝るようになっていた。
飼い主が出かけると、かごの外に出て運動をこなす。飛べないので、羽をバタバタさせながら床を走り回る。この運動はストレス発散でもあるが、太らないために重要だった。
なぜなら、私は飼い主から与えられてないことになっているヒマワリの大粒を一つ毎日食べているからだっ!
運動してゼェハァ肩で息をしながら、大きなかごに入る。
オカメ女のグレ子と協定を結んであるのだ。飼い主がグレ子用に朝餌箱に用意するヒマワリを私のために残す。その代わり、私はグレ子に頭突きすることをやめることになっているのだ。
本日もヒマワリをグレ子は私用に残してあった。よしよし、いい奴だ。平和は大事だよ。
ヒマワリを味わうと、一休みだ。
すでに、3羽は私に一目おくようになっていた。飼い主を出し抜き、好き勝手やっているわけだから。
「今日の運動も激しいね」
セキセイ男のハル男が話しかけてきた。
「う~~~ん、でもヒマワリのカロリーを消費するには、まだ運動不足だよ」
「か、カロリー? 消費??」
ハル男は、人間の専門用語に目を白黒させた。そして
「りょうちゃんは、スーパーインコだね」
と尊敬の視線を私に惜しげもなく送ってくる。悪い気はしないものだ、えへへ。かみ砕いて再び説明する。
「ヒマワリは太りやすいんだよ」
「じゃあ、食べなきゃいいんじゃないの?」
尊敬していても忖度しないのがインコだ。カチンとくるが、本質をついてきやがる。
「それを制御できない悪魔のような誘惑があってだな……」
「僕は食べること出来ないから、よくわからないな。運動してまで食べたいなんて、面倒くさいね」
どこまでもまっすぐな思考回路である。飼われインコである以上、飼い主に管理されていることを受け容れて生きている、それは正しい飼われいんこの姿だ。
しかし、私は飼い主を出し抜いた。そのツケを自分で支払う代償があるということだ。
「りょうちゃんはスーパーインコだけど、面倒なことも多そうだね」
ハル男の素直な感想は、中身が人間のインコにはかなりグサグサ刺さる言葉だ。
「さて、自分とこに戻るかな。グレ子、これからヒマワリ半分でいいわ」
「半分?」
グレ子が首を傾げた。あー、理解できないかぁ。
「いや、いつもように一個残しておいて」
「うん、わかったよ」
これからは、ヒマワリは半分にしよう。自分で欲求を制御しなければいけない問題だ。グレ子に頼ろうとした自分がおかしいのだ。
私が「スーパーインコ」であるならば、「スーパーインコ」であるべき姿勢でなければならないのだ。
はぁ……。自分のかごに戻ってため息をついた。他のインコが出来ないことをやることでいい気になりすぎていた。ハル男の屈託ない「スーパーインコ」という言葉が、私には重かった。
勝手なことをしている自覚があって、実際飼い主を出し抜いた行動をしている。そのツケを払うのは自分だ。
それが人間の時に出来なくて、インコになりたいと逃げたのに、インコになっても私は全然変わっていないではないか。考えるほど自己嫌悪に陥った。
その日の夜。飼い主による定期体重測定が行われた。
「りょうちゃん、ちょっと太ったね。う~~ん、ちょっと餌減らすかぁ」
うへぇ、早速ツケが回ってきた。餌も減らさるのかよ。じゃあ、ヒマワリ半分は撤回しようか? 誘惑が頭に忍び込む。しかし、私は頭を振った。駄目だ、今自制できなくてどうする? 体重が減れば飼い主は餌の量を戻してくれるはずだ。ここは。人間の理性にかけて! スーパーインコと言われた名誉にかけて! 私は決意を変えてはならないのだ。
私が頭を振ったのを、飼い主の彼女は完全の取り違えていた。
「嫌でも、体重戻るまで餌は減らすよ」
笑いながらしかし、私に釘を刺す。いやぁ、餌減量で悩んでいるわけではないのだが……盗み食いしているヒマワリを半分にする決意を崇高に誓ったところなのだが……あれ? 全然崇高でないかもしれない??
私は、スーパーインコという肩書に混乱し始めていた。
しかし思考の混乱は、飼い主の緊張する声で中断した。
「グリ子、どうしたの? 体重減っているじゃない? 食欲も落ちているよね」
私は、グリ子を眺めた。確かにしょんぼりとして元気がない。あの強気のセキセイ女と思えないしょげ方だ。飼い主が心配するのも道理だ。飼い主は続けた。
「これが続くなら、次の休日に動物病院連れて行くよ?」
え? 動物病院? グリ子どうしたの? いや、それよりも、「スーパーインコ」で浮かれていてグリ子が体調崩しているのに全く気が付いていなかった。元インコの飼い主と名乗るのに、グリ子の異変に気が付かなかった自分に腹がたった。
飼い主を出し抜いていい気になるより、元飼い主なら仲間の変調を一番最初に気づくべきではないか。それを見落としていた私に「スーパーインコ」の資格はない。
いや、そんなことよりも。グリ子、どうしたっていうの?
(つづく)
飼い主が出かけた後の心細さより、楽しさが勝るようになっていた。
飼い主が出かけると、かごの外に出て運動をこなす。飛べないので、羽をバタバタさせながら床を走り回る。この運動はストレス発散でもあるが、太らないために重要だった。
なぜなら、私は飼い主から与えられてないことになっているヒマワリの大粒を一つ毎日食べているからだっ!
運動してゼェハァ肩で息をしながら、大きなかごに入る。
オカメ女のグレ子と協定を結んであるのだ。飼い主がグレ子用に朝餌箱に用意するヒマワリを私のために残す。その代わり、私はグレ子に頭突きすることをやめることになっているのだ。
本日もヒマワリをグレ子は私用に残してあった。よしよし、いい奴だ。平和は大事だよ。
ヒマワリを味わうと、一休みだ。
すでに、3羽は私に一目おくようになっていた。飼い主を出し抜き、好き勝手やっているわけだから。
「今日の運動も激しいね」
セキセイ男のハル男が話しかけてきた。
「う~~~ん、でもヒマワリのカロリーを消費するには、まだ運動不足だよ」
「か、カロリー? 消費??」
ハル男は、人間の専門用語に目を白黒させた。そして
「りょうちゃんは、スーパーインコだね」
と尊敬の視線を私に惜しげもなく送ってくる。悪い気はしないものだ、えへへ。かみ砕いて再び説明する。
「ヒマワリは太りやすいんだよ」
「じゃあ、食べなきゃいいんじゃないの?」
尊敬していても忖度しないのがインコだ。カチンとくるが、本質をついてきやがる。
「それを制御できない悪魔のような誘惑があってだな……」
「僕は食べること出来ないから、よくわからないな。運動してまで食べたいなんて、面倒くさいね」
どこまでもまっすぐな思考回路である。飼われインコである以上、飼い主に管理されていることを受け容れて生きている、それは正しい飼われいんこの姿だ。
しかし、私は飼い主を出し抜いた。そのツケを自分で支払う代償があるということだ。
「りょうちゃんはスーパーインコだけど、面倒なことも多そうだね」
ハル男の素直な感想は、中身が人間のインコにはかなりグサグサ刺さる言葉だ。
「さて、自分とこに戻るかな。グレ子、これからヒマワリ半分でいいわ」
「半分?」
グレ子が首を傾げた。あー、理解できないかぁ。
「いや、いつもように一個残しておいて」
「うん、わかったよ」
これからは、ヒマワリは半分にしよう。自分で欲求を制御しなければいけない問題だ。グレ子に頼ろうとした自分がおかしいのだ。
私が「スーパーインコ」であるならば、「スーパーインコ」であるべき姿勢でなければならないのだ。
はぁ……。自分のかごに戻ってため息をついた。他のインコが出来ないことをやることでいい気になりすぎていた。ハル男の屈託ない「スーパーインコ」という言葉が、私には重かった。
勝手なことをしている自覚があって、実際飼い主を出し抜いた行動をしている。そのツケを払うのは自分だ。
それが人間の時に出来なくて、インコになりたいと逃げたのに、インコになっても私は全然変わっていないではないか。考えるほど自己嫌悪に陥った。
その日の夜。飼い主による定期体重測定が行われた。
「りょうちゃん、ちょっと太ったね。う~~ん、ちょっと餌減らすかぁ」
うへぇ、早速ツケが回ってきた。餌も減らさるのかよ。じゃあ、ヒマワリ半分は撤回しようか? 誘惑が頭に忍び込む。しかし、私は頭を振った。駄目だ、今自制できなくてどうする? 体重が減れば飼い主は餌の量を戻してくれるはずだ。ここは。人間の理性にかけて! スーパーインコと言われた名誉にかけて! 私は決意を変えてはならないのだ。
私が頭を振ったのを、飼い主の彼女は完全の取り違えていた。
「嫌でも、体重戻るまで餌は減らすよ」
笑いながらしかし、私に釘を刺す。いやぁ、餌減量で悩んでいるわけではないのだが……盗み食いしているヒマワリを半分にする決意を崇高に誓ったところなのだが……あれ? 全然崇高でないかもしれない??
私は、スーパーインコという肩書に混乱し始めていた。
しかし思考の混乱は、飼い主の緊張する声で中断した。
「グリ子、どうしたの? 体重減っているじゃない? 食欲も落ちているよね」
私は、グリ子を眺めた。確かにしょんぼりとして元気がない。あの強気のセキセイ女と思えないしょげ方だ。飼い主が心配するのも道理だ。飼い主は続けた。
「これが続くなら、次の休日に動物病院連れて行くよ?」
え? 動物病院? グリ子どうしたの? いや、それよりも、「スーパーインコ」で浮かれていてグリ子が体調崩しているのに全く気が付いていなかった。元インコの飼い主と名乗るのに、グリ子の異変に気が付かなかった自分に腹がたった。
飼い主を出し抜いていい気になるより、元飼い主なら仲間の変調を一番最初に気づくべきではないか。それを見落としていた私に「スーパーインコ」の資格はない。
いや、そんなことよりも。グリ子、どうしたっていうの?
(つづく)
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