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第11章
奔走するインコ!(後編)
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私はハル男に餌を腹一杯食べさせ後、かごから連れ出した。
こんな状況で外に出たのが珍しかったハル男はまわりをぐるりと見まわすと、ブワブワ羽を膨らませた。まずい、飛ばれてしまったら、飛べない私がとっ捕まえることが出来なくなってしまう。
なので。間髪いれずハル男のしっぽを思いっきり引っ張った。
「ぴゃあぁぁぁ~~」
気持ち悪そうにハル男が悲鳴を上げた。
「こらっ! 遊びに出てきたわけじゃないよ!」
一喝してそのままグリ子のかごの前までしっぽを咥えたまま引きずった。
つ、疲れるが、もうひと踏ん張り。今度はグリ子のかごの扉を押し上げ、ハル男に中に入るように促した。
「は、ハル男……」
ぐったりとうずくまっていたグリ子が懸命に頭を上げた。いつものでかい態度はすっかり消え失せて、素直に喜ぶその姿が儚げでとても可愛らしかったから、ハル男の惚れっぽいハートをぐっと掴んだのは間違いない。
男ってやっぱ単純……。
「起きないでいいから、僕が暖めてあげるから。」
ここまで誘導すればもう私の出る幕ではない。男らしくハル男が、グリ子に寄り添った。
「ハル男……」
「僕の吐き戻した餌なら、食べることできそう?」
グリ子が、恥ずかしそうにもじもじしながらも、こくんとうなずいた。
だああぁぁぁ~~~っ‼ べったべたなメロドラマが目の前で展開されるのを見ていると背中がモゾモゾしてきもいっ! 見ていられない! 恥ずかしいっ! 背中がかゆいっ!
そもそも。こんなに簡単に愛が芽生えるなら、グリ子が嫉妬で体調崩す前に、カップルになって欲しい。
ハル男には後々、しっかり言い聞かせなければ気持ちがおさまらない、と私は思った。
とにかく、ハル男に吐き戻し餌をもらって食べ始めたグリ子の体調が快方に向かってるのを確認して、私は自分のかごに戻った。
あとは勝手に二羽でいちゃついていれば? 結局二羽の恋のキューピット役をやらされちゃっただけじゃない? アホらしい。疲れたからふて寝よ、ふて寝。
飼い主が部屋に帰宅した音で、私は目が覚めた。
グリ子のかごの前で大きなクエスチョンマークを顔にくっつけて飼い主が座りこんでいた。
グリ子とハル男の二羽はぴったりとくっついて、「グリ子」のかごの中から飼い主を見返していたからだ。
「なんで? なんでグリ子のかごに、ハル男が入っているの??」
しまった! ハル男をいつものかごに連れ戻す作業をすっかり忘れていた! 呆然としながらも事態を飲み込もうとしている飼い主にハラハラする。ど、どうしよう、バレちゃう?
「あっ!」
と飼い主が叫んで、グリ子のかご前に一粒乾いたフンが落ちているのを発見した。
ぬおっ! あれは私のフンだよ! そうだ、グリ子のかごに入るのに勇気ふりしぼって、無意識でプリッとやってしまったんだ。なんという失態! これまで慎重にかご抜けして秘密散歩を楽しんできた私にとって、汚点としかいいようのない失策だ……。
「かご抜けして、さらにグリ子のかごに入ったってこと? ハル男、すごいじゃない!」
へ? 驚いて私は顔を上げた。そうか、そっちに考えがいっちゃったかあ。
フフフ、飼い主さんよ、あなたに真相がわかる日が来ることはないようだな。
グリ子の体調が戻ったのを確認した飼い主の彼女は、いつものように放鳥を始めることにしたようだ。 カップル成立した二羽も、バサバサと軽快に部屋の中を飛び回り始めた。
一旦水を飲みに戻ってきたグリ子に私は声をかけた。
「もう体調は大丈夫?」
「うん、ありがとう。今回はすっかり借りを作ってしまったね」
「そんなことはいいんだけど。今日は、グレ子に飼い主貸し切らせてあげて欲しいんだけど? ハル男にもきつく釘さしておくのよ、いい?」
「わかった。ハル男は私からがっちり言っておく」
「元気出てきたら、やっぱり態度でかくなってきたようね。ま、安心したわ」
私はいつものお気に入りの場所で羽繕いを始めた。グリ子はハル男の元に戻るとがっちりとッ掴まえた。ハル男の顔に一瞬、後悔のようなものが顔に浮かびかけたが、グリ子と私が二羽で睨みつけて黙らせた。もう観念するんだ、ハル男よ。
飼い主の肩の上では、オカメのグレ子がいつまでも甘え続けていた。
「グレ子、随分甘えてくるねぇ。珍しくセキセイ達も邪魔しにこないし。今日みんな変よ??」
飼い主は首をひねりつつも、グレ子のほっぺをじっくりカキカキしてあげていた。不毛とはいえ失恋の痛手から立ち直るには、飼い主の愛情が一番のクスリだと思うよ、甘えるグレ子を遠く眺めながら、私は一羽うなずいた。気分は「一件落着!」と宣言する遠山の金さんのようにすがすがしかった。
後日談。
ハル男のかご抜けを確信した飼い主は、ハル男とグレ子の大きなかごにナスカンを施した。これによって、私は大きなかごの中に遊びに入ることができなくなった。
仕方がないので、グレ子にヒマワリを一粒外に落とすように命令した。
それから、飼い主の疑問が始まった。
「毎日、半粒だけヒマワリが外に落ちているのはなぜ? ねぇ、グリ子なぜ半分だけ必ず外に飛び散らかすの? 他のヒマワリはきちんと食べているのに??」
飼い主があらぬ方向に勘違いしたままなので、私はこっそりほくそ笑んだ。
(つづく)
こんな状況で外に出たのが珍しかったハル男はまわりをぐるりと見まわすと、ブワブワ羽を膨らませた。まずい、飛ばれてしまったら、飛べない私がとっ捕まえることが出来なくなってしまう。
なので。間髪いれずハル男のしっぽを思いっきり引っ張った。
「ぴゃあぁぁぁ~~」
気持ち悪そうにハル男が悲鳴を上げた。
「こらっ! 遊びに出てきたわけじゃないよ!」
一喝してそのままグリ子のかごの前までしっぽを咥えたまま引きずった。
つ、疲れるが、もうひと踏ん張り。今度はグリ子のかごの扉を押し上げ、ハル男に中に入るように促した。
「は、ハル男……」
ぐったりとうずくまっていたグリ子が懸命に頭を上げた。いつものでかい態度はすっかり消え失せて、素直に喜ぶその姿が儚げでとても可愛らしかったから、ハル男の惚れっぽいハートをぐっと掴んだのは間違いない。
男ってやっぱ単純……。
「起きないでいいから、僕が暖めてあげるから。」
ここまで誘導すればもう私の出る幕ではない。男らしくハル男が、グリ子に寄り添った。
「ハル男……」
「僕の吐き戻した餌なら、食べることできそう?」
グリ子が、恥ずかしそうにもじもじしながらも、こくんとうなずいた。
だああぁぁぁ~~~っ‼ べったべたなメロドラマが目の前で展開されるのを見ていると背中がモゾモゾしてきもいっ! 見ていられない! 恥ずかしいっ! 背中がかゆいっ!
そもそも。こんなに簡単に愛が芽生えるなら、グリ子が嫉妬で体調崩す前に、カップルになって欲しい。
ハル男には後々、しっかり言い聞かせなければ気持ちがおさまらない、と私は思った。
とにかく、ハル男に吐き戻し餌をもらって食べ始めたグリ子の体調が快方に向かってるのを確認して、私は自分のかごに戻った。
あとは勝手に二羽でいちゃついていれば? 結局二羽の恋のキューピット役をやらされちゃっただけじゃない? アホらしい。疲れたからふて寝よ、ふて寝。
飼い主が部屋に帰宅した音で、私は目が覚めた。
グリ子のかごの前で大きなクエスチョンマークを顔にくっつけて飼い主が座りこんでいた。
グリ子とハル男の二羽はぴったりとくっついて、「グリ子」のかごの中から飼い主を見返していたからだ。
「なんで? なんでグリ子のかごに、ハル男が入っているの??」
しまった! ハル男をいつものかごに連れ戻す作業をすっかり忘れていた! 呆然としながらも事態を飲み込もうとしている飼い主にハラハラする。ど、どうしよう、バレちゃう?
「あっ!」
と飼い主が叫んで、グリ子のかご前に一粒乾いたフンが落ちているのを発見した。
ぬおっ! あれは私のフンだよ! そうだ、グリ子のかごに入るのに勇気ふりしぼって、無意識でプリッとやってしまったんだ。なんという失態! これまで慎重にかご抜けして秘密散歩を楽しんできた私にとって、汚点としかいいようのない失策だ……。
「かご抜けして、さらにグリ子のかごに入ったってこと? ハル男、すごいじゃない!」
へ? 驚いて私は顔を上げた。そうか、そっちに考えがいっちゃったかあ。
フフフ、飼い主さんよ、あなたに真相がわかる日が来ることはないようだな。
グリ子の体調が戻ったのを確認した飼い主の彼女は、いつものように放鳥を始めることにしたようだ。 カップル成立した二羽も、バサバサと軽快に部屋の中を飛び回り始めた。
一旦水を飲みに戻ってきたグリ子に私は声をかけた。
「もう体調は大丈夫?」
「うん、ありがとう。今回はすっかり借りを作ってしまったね」
「そんなことはいいんだけど。今日は、グレ子に飼い主貸し切らせてあげて欲しいんだけど? ハル男にもきつく釘さしておくのよ、いい?」
「わかった。ハル男は私からがっちり言っておく」
「元気出てきたら、やっぱり態度でかくなってきたようね。ま、安心したわ」
私はいつものお気に入りの場所で羽繕いを始めた。グリ子はハル男の元に戻るとがっちりとッ掴まえた。ハル男の顔に一瞬、後悔のようなものが顔に浮かびかけたが、グリ子と私が二羽で睨みつけて黙らせた。もう観念するんだ、ハル男よ。
飼い主の肩の上では、オカメのグレ子がいつまでも甘え続けていた。
「グレ子、随分甘えてくるねぇ。珍しくセキセイ達も邪魔しにこないし。今日みんな変よ??」
飼い主は首をひねりつつも、グレ子のほっぺをじっくりカキカキしてあげていた。不毛とはいえ失恋の痛手から立ち直るには、飼い主の愛情が一番のクスリだと思うよ、甘えるグレ子を遠く眺めながら、私は一羽うなずいた。気分は「一件落着!」と宣言する遠山の金さんのようにすがすがしかった。
後日談。
ハル男のかご抜けを確信した飼い主は、ハル男とグレ子の大きなかごにナスカンを施した。これによって、私は大きなかごの中に遊びに入ることができなくなった。
仕方がないので、グレ子にヒマワリを一粒外に落とすように命令した。
それから、飼い主の疑問が始まった。
「毎日、半粒だけヒマワリが外に落ちているのはなぜ? ねぇ、グリ子なぜ半分だけ必ず外に飛び散らかすの? 他のヒマワリはきちんと食べているのに??」
飼い主があらぬ方向に勘違いしたままなので、私はこっそりほくそ笑んだ。
(つづく)
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