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君とともに歩む未来(ヤマト編)

13話 二回目の初めて

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 アデルを壁に押し付けたまま、ヤマトが長く深いキスを繰り返した。
 ようやくヤマトはアデルの唇だけは解放した。
「プハッ」
 アデルはなんとか一息つけた。しかし、両腕を壁にがっちり押し付けられた状態でからだの自由は奪われたままだ。
 目の前のヤマトがアデルに問う。
「以前、僕の目が虚ろだと言っていたよね? 今はどうなっているんだ?」
「怒っていて、怖い」
「答えになっていない。僕の目は今の虚ろなのかっ?」
 震える心を抑え込み、アデルはヤマトの瞳を見た。

 ヤマトの瞳の奥に迷子がいた。不安で仕方ない迷子がいた。
「探し物を続ける迷子がいる」
 ヤマトもアデルの瞳を見て言った。
「君の瞳にも、置き去りにされた迷子が途方に暮れている」
 
 アデルはつぶやいた。声が震えて涙が瞳に盛り上がってくる。
「そっか、ヤマトも私も、迷子になのか」

 ヤマトは腹がたって仕方がなかった。そんなの当たり前だ、特別なことじゃない。生きていたら、いつだって誰だって迷子だろう? どこまでも独りよがりで頓珍漢な奴だ。 
 
 迷子が二人、出会った。
「迷子どうし、いっしょに居ようって言っているんだよ!」
 そう言うとヤマトは、アデルの腕を手荒に引っ張って歩き出した。
「大丈夫、必要な物は忘れていないから!」
 アデルの腕を掴んだままキャンディ色のコンドームを手にとった。

 ベッドにアデルを沈めると、コンドームを枕元に挟んだ。
 そのままアデルのシャツを脱がすこともせず、ヤマトは胸にむしゃぶりつく。
 初めての時、アデルは何をされても考える余裕なく最終的に痛みしか感じなかった。しかし今、アデルは、からだの火照りに動揺していた。理性が置いてきぼりになっていく。
「怖い」
 アデルが思わず声に出した。ヤマトはアデルの胸から顔を上げて、アデルの顔を見た。
「手荒すぎたか、ごめ……」
 怒りを含んだ興奮から、引き戻されてヤマトが我に返った。と、アデルは慌てて言う。
「ちがっ、あ、あのねっ」
 ヤマトの勘違いを説明したいのに、アデルの顔が見みるみる真っ赤になっていく。ヤマトの視線に耐えられなくてアデルはあらぬ方向に顔を向けるとポツポツとようやく呟いた。
「からだが……反応して……んあっ!」
 最後までアデルに言わせず、ヤマトは再びアデルの頂きを攻め始めた。
「わかった、もう止めない」
 ヤマトはアデルの頂きを再び口にふくんだ。もう一方の膨らみを揉みしだき、自由な手で、アデルの上から下まで確かめるようと這いまわる。
「ウッ」
 からだをしならせながら、耐えようとするアデルにヤマトは言った。
「喘ぎ声、我慢するなよ」
 ヤマトはアデルを貪りながら、アデルに追い打ちをかけた。
「いじわ……アウッ」
 アデルが感じている、ヤマトは前回と違った興奮が自分の中で高ぶっているのに気が付いた。

 ニーナの代わりを抱いた時――手ごたえのない沼に欲望がいくらでも吸い込まれ続ける感覚だった。今、欲望が欲望と激しくぶつかり、摩擦がからだを更に熱くした。
 アデル、僕と君は迷子かもしれないけれど、いっしょに探しに行こうよ、ヤマトは、からだの反応に耐え切れず喘ぐアデルのからだに、更に刺激を与え続けた。



(つづく)



 


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