ふと頭をよぎったことを書いておく、いわゆるブログ的なあれ

ぽんたしろお

文字の大きさ
2 / 59
2021年11月

おもい手編みのセーター

しおりを挟む
 今の流行の発信はインターネットなのだろうけれど、私が十代から二十代の時のそれは、テレビであり本屋であった。

 時代的には見合い結婚から恋愛結婚へトレンドがシフトしていた。トレンドに信仰めいた
憧れがあった。恋愛したい、恋愛結婚素敵だろうな、なーんて思ったものだ。

 流行に乗り遅れがちの傾向があったのだが、おそらくその危機感ゆえ、彼氏ができた。彼氏ができたから流行に乗り遅れないように張り切ってみた。
 心に刺さったのが,本屋さんで見つけた手編みのセーターの本である。
 その本はゼロから準備して一冊読み終わる時|(本の指示どおり編めばってこと)、手編みのセーターが出来上がるように写真や図解されていた。
 生来、不器用な手の持ち主だったのだが、手編みのセーター本を見ていると、なぜか出来る気がしてきた。
 『編み目に想いをこめて』
 素敵な言葉だなと夢中になってしまった。手編みブームに乗っちゃおう、そう思った。

 実際のところ手編みブームで作られた編み物が各々の彼氏に届き始めると「こめらた気持ちが重い」という感想が当然のようにあがってきたわけだが。
 贈られた方が迷惑と思うだろうとまで思いを馳せるには遅すぎた。本に出された指示どおり、編み棒やら毛糸を購入して、編み始め編み上げることが第一目的になって突っ走り始めていたわけだから。

 猪突猛進。一度決めると、やり抜いてしまう性格であった。中途半端に終わるなら、へし折ってでも強引にゴールにもっていく。
 編み始めたセーターは編み上げるのだ!

 不器用で、強引な性格が編み目にも、思いっきり現れた。つまり編み目がガチガチに詰まった編み方になってしまったのだ。
 必要なサイズに編み上げるために毛糸が全然足りない。本では目安の毛糸玉の数が表記してあったが、全く足りない。毛糸玉を追加して購入することを繰り返した。
 セーターは前身頃、後ろ身頃、腕二本。ざっくり四パーツを作ってつなぎ合わせる段取りであった。パーツに分かれていた分、見たくないものを見ない、その期間が長引いていく。
 セーターが物理的に重いという事実に、正面から向き合ったのは、パーツを繋ぎ合わせる段階になった時であった。すでに本の表記の二倍弱の毛糸を消費|(あるいは投資)していたゆえ、ひき返すにひき返せなくなっていたのだ。
 繋ぎ合わせながら、物理的に重いことを実感した。こんな重いセーターを渡していいのだろうか?という想いがよぎるが、それを打ち消す。手編みのセーターを喜ばないなんて、許さない。予算も編む時間も想定をはるかに超えていたのだから。

 めっちゃ重いセーターを彼は一度着てくれた。重すぎて、セーターが引力でさらにびろーんと下に伸びていたな。それを見て、さすがに申し訳なくいたたまれない気持ちになった。手編みのセータープロジェクトは、達成し終結したのであった。
 想いの重い、物理的に重い、とにかく『おもい』セーターは、その一度きりの晴れ姿で、十分役目を果たしたのであった……。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...