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4話 龍之介の部屋
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栞と龍之介の生活時間がかみ合わない日々が続いた。
「早く来て欲しいのに」
龍之介が忙しい合間に、栞にメッセージを送ってきた。
互いに仕事がある。仮想空間を飛び回り仕事の合間にメッセージのやり取りをするのがやっとの日々が続いていた。
ある日、龍之介の部屋に荷物が届いた。差出人は栞だ。開封した中から出てきたのはセンスの良い男性物のカジュアルウエアと女性用のカジュアルウエア。そして化粧道具。
「荷物届いたよ」
龍之介が栞にメッセージをいれると、栞は
「時間できそうだよ。荷物が間に合ってよかった」
と嬉しそうに言った。
「やっぱデートだもの、おしゃれしたいなって思ったんだよね」
栞のメッセージを聞きながら、龍之介は思わずシオリの手を握った。連携をきってある栞は気が付かない。
「早く会いたい」
龍之介の声に少し焦りを感じた栞が釘を刺した。
「シオリに変なことしないでよ!」
なぜわかった? 龍之介は焦りながら手をシオリから慌てて離した。
「何もしてないって。早く君と会いたい」
二日後。
シオリが起動を開始した。
「うわっ、慣れるかな? あ、お邪魔します……」
龍之介がハラハラしながら、シオリの動く後をついてまわる。
「いっしょに歩いてくれると安心す、うわっ」
栞がしゃべるのに気を取られた途端、シオリのバランスが崩れた。龍之介がすかさずシオリを支える。そのまま、龍之介はシオリを抱きしめた。
「ありがとう」
栞は龍之介が抱きしめる力が強くなっていくのを感じ、クラクラする。
「龍之介、もう大丈夫。もうちょっと練習させて?」
シオリは龍之介の抱擁をひき離す。
「あ、ごめん」
しばらく動かすうちに、栞はシオリと一体感が出てきた。
「うん、なんとかなりそう」
少し大きく動かしてみて、納得すると、栞は言った。
「洋服着替えるから、ベッドルーム借して?」
「わかった。じゃあ僕も着替える」
シオリはベッドルームに消えた。
龍之介も着替え始める。
「お、いいじゃん。栞の好みってこんな感じなのか」
着替えた姿を鏡で見る。自分では選びそうにないファッションが新鮮だった。
「まだかかるの?」
龍之介は鏡の前でポーズをとるのにも飽きて、着替えている栞に声をかける。
「うん、もう少し」
そういえば、見合いサイトのレクチャーにあったな、と龍之介は思い出した。
『急がせるのは、おすすめしません』
こういうケースを指すのか、と龍之介は諦めてコーヒーを淹れ始めた。一人分なのが寂しい。シオリはロボットだからいっしょにコーヒーをのむことは出来ない。
「いっしょに食事をとるのが、最高の贅沢」
ここで失敗すれば、一生誰かと食事をすることなんかないかもしれない。そう考えると龍之介は急に緊張してきた。
「失敗できない」
淹れたコーヒーを一口。少し落ち着いた。ソファーに座ってシオリを待つ。
「お待たせ」
言いながら出てきたシオリを見て、龍之介は無意識に立ち上がっていた。ナチュラルメイクはすっぴんの時と大きく違いはないが、唇の艶に吸い寄せられそうになる。ふわりと薄手のワンピースもよく似合っている。
「ど、どうかな?」
栞が龍之介に意見を求める。
「か、かわい……」
思わず口走って、龍之介は口をつぐむ。気持ちをストレートに言って良かったんだっけ?
「前回、すっぴんでとスウエットだったし、少しはデート気分に」
シオリはモジモジと龍之介の視線を向けた。その龍之介を見た途端にシオリに笑顔が広がった。
「龍之介、かっこいい!」
シオリの笑顔が眩しくて、龍之介は視線を逸らし照れてしまう。
「君のセンスだ」
「気に入らない?」
龍之介の答えに、栞は急に不安になる。シオリから感覚は伝わってくる。でも薄皮のごとくシオリが二人の間に挟まっている感覚がもどかしい。仮想空間での付き合いと比較にならぬほど、龍之介の存在を感じながら、まどろっこしい感覚がなおさら邪魔に感じる。
「何言っているんだよ」
龍之介も自分の想いがうまく伝わらないことにイラついてきた。いや、そうじゃなくて!
「あっ!」
龍之介はシオリの両腕を掴むとあっという間に抱きしめた。
「わかった?」
龍之介に抱きしめられた感覚が、栞を包む。
「……わかった」
腕の中で小さく同意するシオリを龍之介はもう待たなかった。誘うシオリの唇に何度もキスを浴びせた。栞は龍之介の激しい口づけの感触に気を失いかけた。
「りゅ、りゅうの……んっ!」
龍之介が口づけを繰り返しながら、ワンピースの上からシオリのからだをまさぐり始めた。シオリから伝わる刺激に栞は必死に耐えた。
龍之介はシオリが着替えに使ったベッドルームにシオリを抱きしめたまま入っていく」。
「いいかな」
龍之介の問いは形式的だった。ダメと言われても、龍之介にはもう待てなかった。栞の同意を待たずにシオリをベッドに押し倒した。
シオリを押さえつけ、唇から首筋に何度も唇を押し付ける。シオリのからだが反応して反るのを見計い、龍之介はワンピースのファスナーを下した。露になったブラジャーから刺激を与え、反応を楽しむ。
栞の感覚はシオリと一体感を増していく。
「あぁっ」
シオリの喘ぎ声が龍之介を煽る。ブラジャーをはぎ取り、シオリの頂きに吸い付くと栞は、ベッドの上で独りで乱れた。感覚の全てを龍之介に弄ばれながら、独りでもだえる感覚は奇妙だった。
その想いすら、更なる刺激で上塗りされていく。
「龍之介!」
栞が一人の部屋で叫び、シオリが龍之介を更に求めていく。
龍之介の刺激が下半身に及び、龍之介の激しい息遣いと栞の喘ぎ声が交錯する。龍之介がシオリと一つになった。栞は感覚の全てをシオリに預け、龍之介とともに絶頂に達した。
「栞、栞……」
龍之介はシオリを抱き抱え、余韻を味わう。
栞は、愛される感覚に包まれながら、現実の部屋でたった一人で身もだえている虚しさを必死に頭から追い出そうとしてした。
私は龍之介とともに愛を確かめる行為の最中なのだ、私は龍之介に愛されて、身体を翻弄されて、喜んでいる最中なのだ、栞は頭に叩き込む。
再び、龍之介がシオリの唇をふさぎ、シオリのからだをまさぐり始めた。感覚の波に栞は感覚を投げ出した。
龍之介のことだけを――。
龍之介とシオリは朝を迎え、龍之介がシオリを抱きしめながら軽い眠りに入った。
栞は、乱れたベッドの上で龍之介に包まれる感触だけの独りぼっちが寂しかった。
「でも、リスク回避の社会の中で仕方がないんだよね」
シオリが龍之介の胸に頭をうずめた。栞もまた浅い眠りに入っていった。
(つづく)
「早く来て欲しいのに」
龍之介が忙しい合間に、栞にメッセージを送ってきた。
互いに仕事がある。仮想空間を飛び回り仕事の合間にメッセージのやり取りをするのがやっとの日々が続いていた。
ある日、龍之介の部屋に荷物が届いた。差出人は栞だ。開封した中から出てきたのはセンスの良い男性物のカジュアルウエアと女性用のカジュアルウエア。そして化粧道具。
「荷物届いたよ」
龍之介が栞にメッセージをいれると、栞は
「時間できそうだよ。荷物が間に合ってよかった」
と嬉しそうに言った。
「やっぱデートだもの、おしゃれしたいなって思ったんだよね」
栞のメッセージを聞きながら、龍之介は思わずシオリの手を握った。連携をきってある栞は気が付かない。
「早く会いたい」
龍之介の声に少し焦りを感じた栞が釘を刺した。
「シオリに変なことしないでよ!」
なぜわかった? 龍之介は焦りながら手をシオリから慌てて離した。
「何もしてないって。早く君と会いたい」
二日後。
シオリが起動を開始した。
「うわっ、慣れるかな? あ、お邪魔します……」
龍之介がハラハラしながら、シオリの動く後をついてまわる。
「いっしょに歩いてくれると安心す、うわっ」
栞がしゃべるのに気を取られた途端、シオリのバランスが崩れた。龍之介がすかさずシオリを支える。そのまま、龍之介はシオリを抱きしめた。
「ありがとう」
栞は龍之介が抱きしめる力が強くなっていくのを感じ、クラクラする。
「龍之介、もう大丈夫。もうちょっと練習させて?」
シオリは龍之介の抱擁をひき離す。
「あ、ごめん」
しばらく動かすうちに、栞はシオリと一体感が出てきた。
「うん、なんとかなりそう」
少し大きく動かしてみて、納得すると、栞は言った。
「洋服着替えるから、ベッドルーム借して?」
「わかった。じゃあ僕も着替える」
シオリはベッドルームに消えた。
龍之介も着替え始める。
「お、いいじゃん。栞の好みってこんな感じなのか」
着替えた姿を鏡で見る。自分では選びそうにないファッションが新鮮だった。
「まだかかるの?」
龍之介は鏡の前でポーズをとるのにも飽きて、着替えている栞に声をかける。
「うん、もう少し」
そういえば、見合いサイトのレクチャーにあったな、と龍之介は思い出した。
『急がせるのは、おすすめしません』
こういうケースを指すのか、と龍之介は諦めてコーヒーを淹れ始めた。一人分なのが寂しい。シオリはロボットだからいっしょにコーヒーをのむことは出来ない。
「いっしょに食事をとるのが、最高の贅沢」
ここで失敗すれば、一生誰かと食事をすることなんかないかもしれない。そう考えると龍之介は急に緊張してきた。
「失敗できない」
淹れたコーヒーを一口。少し落ち着いた。ソファーに座ってシオリを待つ。
「お待たせ」
言いながら出てきたシオリを見て、龍之介は無意識に立ち上がっていた。ナチュラルメイクはすっぴんの時と大きく違いはないが、唇の艶に吸い寄せられそうになる。ふわりと薄手のワンピースもよく似合っている。
「ど、どうかな?」
栞が龍之介に意見を求める。
「か、かわい……」
思わず口走って、龍之介は口をつぐむ。気持ちをストレートに言って良かったんだっけ?
「前回、すっぴんでとスウエットだったし、少しはデート気分に」
シオリはモジモジと龍之介の視線を向けた。その龍之介を見た途端にシオリに笑顔が広がった。
「龍之介、かっこいい!」
シオリの笑顔が眩しくて、龍之介は視線を逸らし照れてしまう。
「君のセンスだ」
「気に入らない?」
龍之介の答えに、栞は急に不安になる。シオリから感覚は伝わってくる。でも薄皮のごとくシオリが二人の間に挟まっている感覚がもどかしい。仮想空間での付き合いと比較にならぬほど、龍之介の存在を感じながら、まどろっこしい感覚がなおさら邪魔に感じる。
「何言っているんだよ」
龍之介も自分の想いがうまく伝わらないことにイラついてきた。いや、そうじゃなくて!
「あっ!」
龍之介はシオリの両腕を掴むとあっという間に抱きしめた。
「わかった?」
龍之介に抱きしめられた感覚が、栞を包む。
「……わかった」
腕の中で小さく同意するシオリを龍之介はもう待たなかった。誘うシオリの唇に何度もキスを浴びせた。栞は龍之介の激しい口づけの感触に気を失いかけた。
「りゅ、りゅうの……んっ!」
龍之介が口づけを繰り返しながら、ワンピースの上からシオリのからだをまさぐり始めた。シオリから伝わる刺激に栞は必死に耐えた。
龍之介はシオリが着替えに使ったベッドルームにシオリを抱きしめたまま入っていく」。
「いいかな」
龍之介の問いは形式的だった。ダメと言われても、龍之介にはもう待てなかった。栞の同意を待たずにシオリをベッドに押し倒した。
シオリを押さえつけ、唇から首筋に何度も唇を押し付ける。シオリのからだが反応して反るのを見計い、龍之介はワンピースのファスナーを下した。露になったブラジャーから刺激を与え、反応を楽しむ。
栞の感覚はシオリと一体感を増していく。
「あぁっ」
シオリの喘ぎ声が龍之介を煽る。ブラジャーをはぎ取り、シオリの頂きに吸い付くと栞は、ベッドの上で独りで乱れた。感覚の全てを龍之介に弄ばれながら、独りでもだえる感覚は奇妙だった。
その想いすら、更なる刺激で上塗りされていく。
「龍之介!」
栞が一人の部屋で叫び、シオリが龍之介を更に求めていく。
龍之介の刺激が下半身に及び、龍之介の激しい息遣いと栞の喘ぎ声が交錯する。龍之介がシオリと一つになった。栞は感覚の全てをシオリに預け、龍之介とともに絶頂に達した。
「栞、栞……」
龍之介はシオリを抱き抱え、余韻を味わう。
栞は、愛される感覚に包まれながら、現実の部屋でたった一人で身もだえている虚しさを必死に頭から追い出そうとしてした。
私は龍之介とともに愛を確かめる行為の最中なのだ、私は龍之介に愛されて、身体を翻弄されて、喜んでいる最中なのだ、栞は頭に叩き込む。
再び、龍之介がシオリの唇をふさぎ、シオリのからだをまさぐり始めた。感覚の波に栞は感覚を投げ出した。
龍之介のことだけを――。
龍之介とシオリは朝を迎え、龍之介がシオリを抱きしめながら軽い眠りに入った。
栞は、乱れたベッドの上で龍之介に包まれる感触だけの独りぼっちが寂しかった。
「でも、リスク回避の社会の中で仕方がないんだよね」
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