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馴れ初め編
一
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出逢いはなんの変哲もない、ただの日常でのことだった。
ジョアル・ヴァン・フランシェスはつまらない日常に辟易していた。仕事で国外へやってきたものの、国内にいた時とさほど変わらない。起きて、仕事をこなして、家に帰って寝る。その繰り返し。
ジョアルはーー刺激を欲していた。
休暇でどこに行くか予定も立てずにぶらぶらと歩いている。普段は通らない道に逸れていき、あまり人通りの無い、そんな道を突き進んでいた。そしてこじんまりとした小さな公園を発見する。そこにはベンチに腰掛けている人が一人だけいた。
ジョアルは気の赴くままに行動する。公園に入り、ベンチに座っている人目掛けて歩みを進めた。
その人は着流しを着ている男性。暗紫混じりの黒く艷やかな長髪が風で流されている。読書に耽るその横顔はとても美しかった。
「ねえ、何読んでるの?」
ジョアルは初対面にも関わらず自然と母国語で話しかけた。
話しかけられた男性はびくりと肩を跳ねらせて顔を上げる。驚いた顔をした男性は若く、二十代前半のように見える。
「……洋書を読んでいる」
ジョアルも男性の言葉に驚いた。言葉の内容に驚いたのではなく、ごく自然と自分の母国語で返してきたことにだ。
男性が読んでいる本を見てみると、内容は外国語でびっしりと書かれている。
「……凄いね。頭良いんだ」
「いや、そんなことはない」
「俺はあんまり本読まない。医学書をたまに読むくらい」
「え……医学書の方が凄いと思うが……」
まだ会って一分程話しただけだが、ジョアルは彼に興味を持っていた。彼の容姿が、自分の大好きな弟に似ていた。それだけでとても興味が湧いたのだ。
「ねえ、名前なんていうの?」
「……東堂 理一だ」
「理一ね。わかった、覚えとく。俺はジョアル・ヴァン・フランシェス。ファーストネームでいいよ」
「ジョアルか。わかった」
「この公園にはよく来るの?」
「本を読みたい時には大体ここにいるな」
「そっか。じゃあまた来たら話してくれる?」
「ああ」
快諾してくれたことが嬉しくて、普段仏頂面なジョアルが微笑む。碧色の髪に碧の瞳。白い肌に鼻筋の通った整った顔で微笑むと爽やかで、理一は思わず見惚れた。
「約束」
読書の邪魔をしては悪いと思ったジョアルはそれだけ言ってその場を立ち去った。そして家に帰ると弟に理一のことを話して一人で盛り上がっていた。
理一はというと、不思議な外国人に突然話しかけられて驚いたものの悪い気はせず、寧ろもっと話してみたかったとさえ思えた。今まで他人に興味を示すことなんてほとんど無かったのに、理一の心にはジョアルのことが強く残っていた。
ジョアル・ヴァン・フランシェスはつまらない日常に辟易していた。仕事で国外へやってきたものの、国内にいた時とさほど変わらない。起きて、仕事をこなして、家に帰って寝る。その繰り返し。
ジョアルはーー刺激を欲していた。
休暇でどこに行くか予定も立てずにぶらぶらと歩いている。普段は通らない道に逸れていき、あまり人通りの無い、そんな道を突き進んでいた。そしてこじんまりとした小さな公園を発見する。そこにはベンチに腰掛けている人が一人だけいた。
ジョアルは気の赴くままに行動する。公園に入り、ベンチに座っている人目掛けて歩みを進めた。
その人は着流しを着ている男性。暗紫混じりの黒く艷やかな長髪が風で流されている。読書に耽るその横顔はとても美しかった。
「ねえ、何読んでるの?」
ジョアルは初対面にも関わらず自然と母国語で話しかけた。
話しかけられた男性はびくりと肩を跳ねらせて顔を上げる。驚いた顔をした男性は若く、二十代前半のように見える。
「……洋書を読んでいる」
ジョアルも男性の言葉に驚いた。言葉の内容に驚いたのではなく、ごく自然と自分の母国語で返してきたことにだ。
男性が読んでいる本を見てみると、内容は外国語でびっしりと書かれている。
「……凄いね。頭良いんだ」
「いや、そんなことはない」
「俺はあんまり本読まない。医学書をたまに読むくらい」
「え……医学書の方が凄いと思うが……」
まだ会って一分程話しただけだが、ジョアルは彼に興味を持っていた。彼の容姿が、自分の大好きな弟に似ていた。それだけでとても興味が湧いたのだ。
「ねえ、名前なんていうの?」
「……東堂 理一だ」
「理一ね。わかった、覚えとく。俺はジョアル・ヴァン・フランシェス。ファーストネームでいいよ」
「ジョアルか。わかった」
「この公園にはよく来るの?」
「本を読みたい時には大体ここにいるな」
「そっか。じゃあまた来たら話してくれる?」
「ああ」
快諾してくれたことが嬉しくて、普段仏頂面なジョアルが微笑む。碧色の髪に碧の瞳。白い肌に鼻筋の通った整った顔で微笑むと爽やかで、理一は思わず見惚れた。
「約束」
読書の邪魔をしては悪いと思ったジョアルはそれだけ言ってその場を立ち去った。そして家に帰ると弟に理一のことを話して一人で盛り上がっていた。
理一はというと、不思議な外国人に突然話しかけられて驚いたものの悪い気はせず、寧ろもっと話してみたかったとさえ思えた。今まで他人に興味を示すことなんてほとんど無かったのに、理一の心にはジョアルのことが強く残っていた。
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