フランシェス兄弟はアンニュイ(兄編)

朝陽ヨル(月嶺)

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馴れ初め編

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 いつでも良かった。自信があって、なんてことないありふれた日にジョアルは理一に告白をした。返事は勿論OKで、抱きしめて、ジョアルは幸せを感じた。
 その時ーー幸せだと感じた瞬間ーー自信が急に脆くなった。ドクン、と心臓がいやに大きく鳴った気がした。 

「ジョアル?」 

 なんだか様子がおかしいジョアルから一旦離れて見つめる。
 こんなにもジョアルが動揺しているのは初めてだった。何かに怯えているような、思いつめたような、そんな険しい表情をしている。
 
「……理一、俺……こんな幸せでいいのかな」 

 ふと浮かんできたのは弟のことだった。本当は弟のことが、憎くて、憎くて、憎くて。過去に自分の気持ちを上手くコントロール出来ずにいて、自分を守ろうとして、好きだと、愛していると偽った。今でもその気持ちは少なからずあり、時々ぐちゃぐちゃと混ざってしまう。 

「シリスには嫌われてたっていい。でも理一には嫌われたくない。隠しておきたくない」
「ジョアル……?」 

 ジョアルはまた理一を抱きしめ、そのまま沈黙する。
 理一も黙って抱きしめられていた。
 そして数分間が経ち、ジョアルは短く息を吐いた。 

「……大事な話、していい?」
「いいぞ」
「俺は……、ヒドいことをした。許されないことだけど、俺はそれでいいと思ってた。一生許されなくていいって。……でも、今だけは許されたいって思ってる」
「ああ」
「話したら理一が幻滅するかもしれない」
「幻滅するわけがない。だから話してほしい」
「…………。…………俺はね、子供の頃、シリスのことが大嫌いだった。才能に恵まれてて、親や周囲に期待されてた。そんなシリスが俺を慕って後ろをついて来ることに苛立って、嫉妬して、ある日怒りが爆発してシリスを斬ったんだ。死ぬことは免れたけど、左目は失明した」
「…………そう、……か」
「シリスはあれから俺を蔑むような目を向けてきて、今でもそれは続いてる。色々あって関係は落ち着いてるけど……」 

 理一は強くジョアルを抱きしめる。聞いてほしいという合図のように。 

「……悪いことをしたのだとジョアルが反省しているなら、それはもうそれでいいんじゃないか。反省している気持ちを忘れなければいい。ジョアルだって悔しくて、苦しくて、辛かったんだろう、その時のジョアルのことはわからないけれど、今のジョアルは優しいだろう?」
「優しくなんかないよ。俺は平気で人を傷つける。戦争で何人も殺めてるし」
「それは環境のせいだ……! 国の問題をジョアルが背負うことなんかない! ジョアルは悪くない!」
「……ありがと、理一。聞いてくれて」 

 声を荒げて怒ってくれる。それだけで報われる気がした。きゅっと心が締め付けられて、切なくて、祈るような気持ちになって。 

「理一……好き。理一に隠し事したくなかった。ちゃんと話せたから、これからもっと理一を知りたいし一緒にいたい。時々怒ったり叱ってほしい。それで間違いを少しずつ正していきたい」
「俺もジョアルのことが好きだ。だからこれから一緒に分かっていけばいいんだ。色んなことを」 

 こうして理一へ隠し事をしない全てがオープンになったジョアルは上手に甘えることを覚え、理一もそんなジョアルを甘やかすようになる。
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