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付き合ってからの短編
セイなる夜に
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※12月設定
外は暗く、すっかり夜だ。待ち合わせの時間になる。ジョアルに部屋で待っていてほしいと言われ、大人しく本のページを捲っていた。
コンコン
と、ノックの音。理一は扉を開く。そこには普段着ではなくスーツ姿で髪も綺麗に整えたジョアルが、胸に手を添え跪いていた。
「Bonsoir. Je vais vous protéger ce soir. Allez, Monsieur.」(こんばんは。今宵は私が貴方をお守りします。参りましょう、ムッシュー)
「あ……えっと、……Oui, merci.」(はい、よろしくお願いします)
手を差し伸べられたが、見惚れていたことと突然の言語の変化に反応が遅れた。返事をしてそっと差し伸べられた手に自分の手を重ねる。
するとそのまま手を引かれ、手の甲に軽いキスを落とされる。それから顔を上げて甘く微笑んでいる。
理一はキュンと胸が熱くなり、顔までも熱くなってくる。
ジョアルは立ち上がり理一の横に控える。
「さすが理一。余興はこれくらいにして行こっか」
「あ、ああ……」
「理一、スーツも似合うね」
「ジョアルも似合ってる」
そんな会話を楽しみながら並んで歩いていく。
普段着流しばかり着ている理一だが、今日は珍しくスーツだ。端から見ればホストが並んでいるようにも見える。が、がっちり手を繋いでいるのでなんとも言えない。
目的地は高級ホテルのレストラン。綺麗な夜景を一望出来る、料理も絶品と評判の高いレストランだ。
きらびやかな雰囲気ではあるがそんな場所でも二人は平然と入っては予約席に着いて注文する。
「やっぱり。理一はこういう所慣れてそうだと思った」
「そうでもないが、何度かこういう場所は来たことあるな」
「所作とか分かってれば大したないよね」
「ある程度はな」
先にワインが届き、注がれたグラスを持ち乾杯する。
「お疲れ様、理一」
「ジョアルも、お疲れ様」
グラスを傾け、後から順に運ばれてくる料理を食していく。カトラリーを上手に扱う仕草が二人とも様になっており、チラホラと周りの女性客が見てくるのが窺えた。
「……ほら、みんな理一がカッコイイって見てる」
「いや、ジョアルがカッコイイからだろう?」
「俺?」
ジョアルはキョトンと首を傾げた。どうやら無自覚らしい。それもそのはずで、今まで圧倒的に怖がられることの方が多かったからだ。
「俺はいつもと変わらないよ。理一はいつもよりカッコイイ」
「そ、そうか? ……ありがとう」
真っ直ぐに誉められると世辞ではないことが分かって、ジョアルの性格からもそういうことを言わないのも知っているので尚更恥ずかしい。
「……そうだ」
何か思い出したのか、ベルを鳴らしてホテルマンを呼ぶ。耳打ちして、それから包みを持ってやってきた。
「理一、プレゼント」
「え……いいのか?」
「うん。受け取って」
その包みを開くと、中から赤い花が現れる。クリスマス、といえば。
「ポインセチア。クリスマスっぽいでしょ?」
「そうだな」
「でも俺らしくない」
確かに。ジョアルが花なんて珍しい。
「……どうしたんだ?」
「うーん……ちょっと肖った感じ?」
「肖る?」
「シリスと朱廉くんをね」
「ああ……あの二人は微笑ましいからな」
二人の間にあるポインセチアを眺める。さらりと葉に触れてみて、ぽつりと呟く。
「きっと送るのも意味があるんだろうね。どの花を渡すとか、たくさん考えてる」
「それだけ花に対して思い入れがあるのかもしれないな」
理一はもらったポインセチアを優しく抱いて微笑む。
「ジョアルも何か思いを込めてくれたのか?」
「……理一には、いっぱい込めてる」
ジョアルは一瞬、理一に見惚れて、我に返って恥ずかしくなったのか少しだけ視線を逸らした。
そんなジョアルが可愛くて理一は撫でたくなり腕を伸ばした。
「ありがとう」
「……うん」
整えられた髪を崩さないように、そっと流れに沿って撫でる。ジョアルが照れる貴重な時間だった。しかし、あまり長い時間そうしているわけもいかず再び食事に戻るのだった。
食事を終えて、お腹を休め落ち着いてきた。今日はホテルでゆっくりと過ごすのだ。
予約した部屋に二人っきりで。ここからの景色も絶景だ。街の光があちこちで輝いている。
「ジョアル、景色が綺麗だ」
「うん、そうだね」
窓際で並んで外を眺めていると、ジョアルが理一の腰に手を添える。
「でも……やっぱり理一の方が綺麗だよ」
「……っ」
腰から背中を撫でて、首筋を撫で上げて、髪を指に絡ませる。ジッと獲物を狙うような鋭く、それでいて熱を帯びた視線で射抜く。
理一は撫でられる感覚に震えながら、ジョアルの視線に釘付けになった。
「今日の理一は、カッコ良くて綺麗。ドキドキしっぱなしだよ」
手を取られジョアルの胸に手を置かれる。心臓の音がいくらか早いような気がした。
「ジョアルも……緊張、してるんだな」
「まあね」
短く返事をして、それから上着を脱ぐ。シャツのボタンを外せば、鍛えられた逞しい胸が露わになって。ネクタイを外しながら薄く笑うのだ。
「ねぇ理一、俺と遊ぼ」
その言葉と共にキスして、理一のスーツも脱がされていく。
もちろん理一が抵抗することもない。
二人っきりの部屋には、擦れる水音、掠れた淡く甘い声が響いていた……。
END
外は暗く、すっかり夜だ。待ち合わせの時間になる。ジョアルに部屋で待っていてほしいと言われ、大人しく本のページを捲っていた。
コンコン
と、ノックの音。理一は扉を開く。そこには普段着ではなくスーツ姿で髪も綺麗に整えたジョアルが、胸に手を添え跪いていた。
「Bonsoir. Je vais vous protéger ce soir. Allez, Monsieur.」(こんばんは。今宵は私が貴方をお守りします。参りましょう、ムッシュー)
「あ……えっと、……Oui, merci.」(はい、よろしくお願いします)
手を差し伸べられたが、見惚れていたことと突然の言語の変化に反応が遅れた。返事をしてそっと差し伸べられた手に自分の手を重ねる。
するとそのまま手を引かれ、手の甲に軽いキスを落とされる。それから顔を上げて甘く微笑んでいる。
理一はキュンと胸が熱くなり、顔までも熱くなってくる。
ジョアルは立ち上がり理一の横に控える。
「さすが理一。余興はこれくらいにして行こっか」
「あ、ああ……」
「理一、スーツも似合うね」
「ジョアルも似合ってる」
そんな会話を楽しみながら並んで歩いていく。
普段着流しばかり着ている理一だが、今日は珍しくスーツだ。端から見ればホストが並んでいるようにも見える。が、がっちり手を繋いでいるのでなんとも言えない。
目的地は高級ホテルのレストラン。綺麗な夜景を一望出来る、料理も絶品と評判の高いレストランだ。
きらびやかな雰囲気ではあるがそんな場所でも二人は平然と入っては予約席に着いて注文する。
「やっぱり。理一はこういう所慣れてそうだと思った」
「そうでもないが、何度かこういう場所は来たことあるな」
「所作とか分かってれば大したないよね」
「ある程度はな」
先にワインが届き、注がれたグラスを持ち乾杯する。
「お疲れ様、理一」
「ジョアルも、お疲れ様」
グラスを傾け、後から順に運ばれてくる料理を食していく。カトラリーを上手に扱う仕草が二人とも様になっており、チラホラと周りの女性客が見てくるのが窺えた。
「……ほら、みんな理一がカッコイイって見てる」
「いや、ジョアルがカッコイイからだろう?」
「俺?」
ジョアルはキョトンと首を傾げた。どうやら無自覚らしい。それもそのはずで、今まで圧倒的に怖がられることの方が多かったからだ。
「俺はいつもと変わらないよ。理一はいつもよりカッコイイ」
「そ、そうか? ……ありがとう」
真っ直ぐに誉められると世辞ではないことが分かって、ジョアルの性格からもそういうことを言わないのも知っているので尚更恥ずかしい。
「……そうだ」
何か思い出したのか、ベルを鳴らしてホテルマンを呼ぶ。耳打ちして、それから包みを持ってやってきた。
「理一、プレゼント」
「え……いいのか?」
「うん。受け取って」
その包みを開くと、中から赤い花が現れる。クリスマス、といえば。
「ポインセチア。クリスマスっぽいでしょ?」
「そうだな」
「でも俺らしくない」
確かに。ジョアルが花なんて珍しい。
「……どうしたんだ?」
「うーん……ちょっと肖った感じ?」
「肖る?」
「シリスと朱廉くんをね」
「ああ……あの二人は微笑ましいからな」
二人の間にあるポインセチアを眺める。さらりと葉に触れてみて、ぽつりと呟く。
「きっと送るのも意味があるんだろうね。どの花を渡すとか、たくさん考えてる」
「それだけ花に対して思い入れがあるのかもしれないな」
理一はもらったポインセチアを優しく抱いて微笑む。
「ジョアルも何か思いを込めてくれたのか?」
「……理一には、いっぱい込めてる」
ジョアルは一瞬、理一に見惚れて、我に返って恥ずかしくなったのか少しだけ視線を逸らした。
そんなジョアルが可愛くて理一は撫でたくなり腕を伸ばした。
「ありがとう」
「……うん」
整えられた髪を崩さないように、そっと流れに沿って撫でる。ジョアルが照れる貴重な時間だった。しかし、あまり長い時間そうしているわけもいかず再び食事に戻るのだった。
食事を終えて、お腹を休め落ち着いてきた。今日はホテルでゆっくりと過ごすのだ。
予約した部屋に二人っきりで。ここからの景色も絶景だ。街の光があちこちで輝いている。
「ジョアル、景色が綺麗だ」
「うん、そうだね」
窓際で並んで外を眺めていると、ジョアルが理一の腰に手を添える。
「でも……やっぱり理一の方が綺麗だよ」
「……っ」
腰から背中を撫でて、首筋を撫で上げて、髪を指に絡ませる。ジッと獲物を狙うような鋭く、それでいて熱を帯びた視線で射抜く。
理一は撫でられる感覚に震えながら、ジョアルの視線に釘付けになった。
「今日の理一は、カッコ良くて綺麗。ドキドキしっぱなしだよ」
手を取られジョアルの胸に手を置かれる。心臓の音がいくらか早いような気がした。
「ジョアルも……緊張、してるんだな」
「まあね」
短く返事をして、それから上着を脱ぐ。シャツのボタンを外せば、鍛えられた逞しい胸が露わになって。ネクタイを外しながら薄く笑うのだ。
「ねぇ理一、俺と遊ぼ」
その言葉と共にキスして、理一のスーツも脱がされていく。
もちろん理一が抵抗することもない。
二人っきりの部屋には、擦れる水音、掠れた淡く甘い声が響いていた……。
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