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付き合ってからの短編
留学生にご注意!
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※ジョアル(学生)×理一(教師)パロ
「ねー、理一」
「……」
「ねーってば」
最近困った事が起きている。最近、留学生が転入してきたのだが、その留学生が俺に懐いてしまったのだ。名前は、ジョアル・ヴァン・フランシェス。シリスという弟がいるのでミドルネームで呼んでいる。
「ヴァン、呼ぶ時は先生と付けた方がいいぞ」
「じゃあ理一せんせ?」
「名前も駄目だ」
「何で?」
「何でって、ここは学校だからだ」
「学校じゃなきゃ呼んでいい?」
「そういうことじゃない……」
キーンコーンカーンコーン
授業の予鈴が鳴り、理一は足早に教室へ向かう。もちろんジョアルも後ろをついていった。
「ねぇ、せんせ」
「何だ?」
「授業の後に、ちょっと時間ちょうだい?」
「え?」
何故、と聞き返そうとして、既に教室の目の前まで来ていたのでやめた。ジョアルもうっすらと笑みを浮かべて。
「楽しみにしてるよ」
それだけ言って教室へ入っていった。
その笑みに一瞬ドキッと胸が高鳴ったのは気のせいではない。軽く溜め息を吐き、気を引きしめて教室へ入った。
授業が始まれば生徒と先生だ。それ以上も以下もない。だが授業中でも目が合えば、微笑んだり手を振ってきたり、とにかく他の生徒とは違った。気が乱れてしまうから、俺は授業に集中しようとヴァンから目を逸らし続けた。
授業が終わると、後ろの席からジョアルがやってくる。
「せんせ、約束」
「約束?」
「もう忘れたの?後で時間ちょうだいって言ったでしょ」
「あ、ああ…そう、だったな」
忘れてたわけじゃない。むしろ忘れられないくらいだった。だから誤魔化したかった。けれど彼からは逃れられない。
「放課後、少しくらいならいいでしょ?」
こてん
小首を傾げる仕草。ソレを見たら、物凄く断りづらくなってしまった。何というか、小動物を見るような気分になる。見た目は小動物よりも大型に近いけれど。
放課後になり、俺とヴァンは教室に二人きりになった。
「それで、俺に何の用だ?」
「放課後に呼び出す目的って、結構限られると思うけど……ね、何だと思う?」
ずいと席から身を乗り出してくるジョアルに後退りながら、でも目は逸らさないで。逸らせないでいた。
「っ、し、質問を質問で返すなっ!」
「ふふっ……そんな顔するから、つい弄りたくなっちゃうんだよね」
そんな顔ってどんな顔だ?
怪訝な顔で見れば、ぷっと吹き出して笑っている。
「せんせってばホント……」
え? な、なんだ…?
顔が近づいてくる。突発的な行動に反応が遅れ、気付いた頃には耳に吐息がかかるくらい近くまできていた。
「可愛い」
「っ!!」
耳から溶けてしまいそうな程、甘い囁き。理一は慌てて離れた。
「お、大人をからかうんじゃない!」
赤面して、その場から逃げるようにして教室を出た。廊下を走り、教室が見えなくなる所で曲がって、息を切らせてその場にへたりこんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
荒い呼吸を繰り返し、息も心も落ち着かそうと項垂れた。
その日はもうヴァンに会わず、逃げるように帰宅した。
俺の身が保てない……!
「何なんだ、あの留学生は……!」
それになんだ……俺の心臓は……バクバクして……うるさくて……痛い……
今までに感じたことのない苦しみを紛らわそうと、布団にくるまり、早急に寝ることにした。それでも寝つくまで、耳に残る熱い吐息と囁きが残っていて、中々寝つくことが出来ないでいた。
起きれば出勤時刻ギリギリだった。いつもは規則正しく起きられるのに。急いで仕度をして、走り込んで出勤した。
「はぁ、はぁっ……はぁ……」
昨日から走りっぱなしで筋肉痛になりそうだ。
「理一」
「っ!」
声に振り返れば思った通りの人物だった。
「おはよ」
「……」
「先生が挨拶を無視するの? それって教育上わる」
「おはよう、ヴァン」
この留学生は生意気だった。だが、挨拶を返しただけなのに。
「ちゃんと返してくれた」
ニッコリと。その綺麗な顔で笑う。
俺はついその顔に見とれてしまった。
キーンコーンカーンコーン
「これ、始まりのチャイムじゃない?」
「!! そ、そうだ! 早く教室に行かなくては!」
「先生が遅れるなら、俺が遅れても問題ないよね?」
「そういう問題じゃない!」
「わっ?」
咄嗟にヴァンの手首を掴んで、教室まで全力疾走する。教室に入ったら、中にいた生徒達が一斉にこちらを見てぽかんと静まり返った。
それもその筈。俺が遅刻をするのも、こんな慌てて走ってくることなんか今まで無かったからだ。
「せんせ、皆が見てるから恥ずかしい」
「え? ……ッ!!」
俺はヴァンの手首を離した。いや、こんな慌てて離すこともないのだが、ヴァンがそんなことを言うからつい。
ホームルームを終わらせて、すぐに授業が始まる。その頃にはもういつも通りの冷静さを取り戻していた。現国の授業だ。特に私語をするような授業ではない。
だから今はヴァンに話しかけられることなんて……
「はい、せんせ」
「え? な、何だ?」
ヴァンが手を挙げている。
「質問。その漢字なんて読むの?」
「これは……」
答えてやると素直にお礼を言うのだが。
「せんせ、また質問」
「……質問はまとめて聞きなさい」
「だって授業が進むごとに質問が浮かぶから。もっと時間が欲しいよ」
「なら放課後に聞くから、今は授業に集中しな……さ……」
「はーい」
………………俺は、墓穴を掘ったようだ。
「はぁ~………」
授業が終わって職員室に向かう。自分のデスクに突っ伏して激しく後悔している。
何故、放課後に約束してしまった?授業終わりでも良かっただろうに。ただでさえ、今の彼に近づくのは危険だと感じているのに。
「はぁ……」
いかん。他の先生もいるんだ。あまり溜め息なんか吐くものじゃない。
気晴らしに外を眺めた。外では体育の授業が行われていた。自分のクラスだ。
「体育か……。あんなに動いて……若いな」
三十路を超えた体にあの体育の授業はついていけないだろうな、と薄々感じている。苦笑いを浮かべるしかない。
「あ……ヴァン」
サッカーをしている。ボールがパスされて……走って……おお……速いし上手いな。………シュート……おっ、入った。運動神経いいんだな。
思わずサッカー観戦して感心してしまった。
違う、これはヴァンを見ていたんじゃなくて、クラスを見ていたんだ。チームワークはいいのか、そういう所をだ!
自分に言い訳をして、またデスクの前に座った。
カチカチカチカチ……
時計の針が少しずつ進んでいく。あともう少しで放課後になる。自分のクラスに行って、帰りのホームルームを終わらせた。
「起立、礼」
別れの挨拶を済ませ、みんな一斉に散り散りになる。その中で、ヴァンだけは動かない。俺を見つめて、その場から一歩も。
……俺に来いってことか?
「………ヴァン」
「はい。せんせ」
「……質問、何だ?」
「……うん、俺、留学生でしょ? 日本語の勉強したいんだ。だから、ちょっと長く話したいから飲み物飲みながら聞いていい?」
「……わかった」
ヴァンは飲み物を買いにいった。数分して戻ってくる。
「はい、せんせ」
「? ……俺の分も買ったのか?」
「うん。だって喉渇くでしょ?」
「ま、まあ……な」
こういう気遣いができるのだから案外悪い生徒じゃないかもしれない。
教科書を開いてヴァンはあらゆる箇所を質問してきた。とことん詰めるタイプのようで、言葉の意味や語源など、そんなことまで質問してきた。教師でも考えないような着眼点を持っている。
「……ヴァンは真面目なんだな」
「真面目? どうして?」
「どうしてって……こうして勉強をしているだろう?」
「学校なんだから、勉強するのは当たり前でしょ」
「いや、そうなんだが。他の生徒とは違うなって」
「……そう? 大して変わらないと思うけど」
ヴァンは大人びた顔つきで、笑ったようで笑ってない。そんな表情をしている。
「ああ……でもね、他の生徒と違う所はあるよ」
「え、なんだ?」
ガタン
え?
「っ~~~!!?」
「こういう所」
「なっ、なっ、なに、してっ!」
教室にはもう俺たち二人きりで、だから誰にも見られてはいない。
俺たちは、キスした。
「俺、先生が好きだよ。一目惚れしたんだ」
「な、なに言って……」
「顔真っ赤。可愛い」
「可愛くない!」
「可愛いよ。日本語間違ってる?」
「間違ってる! そもそもそんな単語は、俺には当てはまらないだろう。あ、あんまり、からかうんじゃない!」
席から立って、ゆっくり後ずさる。逃げたくて、もう扉まですぐだ。走ればもう届きそうで、早く逃げたかった。そうしないと、もう、何かが起こってしまう。
ドンッ!!
「うっ……」
壁際で、ヴァンの拳が壁を打つ。俺は壁を背に。前にはヴァンが、その綺麗な瞳に俺を映している。
「逃げないでよ。俺、本気だよ」
「わっ、ちょっ!」
ぐいっと引っ張られて、必然的にヴァンに抱きついてしまった。ヴァンの唇が、俺の耳に押し当てられて。
「……ねぇ、俺に捕まってよ。理一」
「……っ」
腰を撫でられながら、甘ったるい微熱混じりの声に蕩けていく。
でも、駄目だ。
「……っ、お、俺は……教師で、だか、ら……駄目だ」
「どうして?」
「どうしてって……生徒となんて……」
「男女じゃないし、問題ないでしょ」
「だから、そこは問題じゃなくてだな!」
「もう黙っててよ」
「んぐ!?」
顎を掴まれて、乱暴にキスされる。それから頬を包まれると、今度は優しく吸うようにキスされた。離してもぺろりと舐められて、堪能し終わると不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふ……大人しくなったね」
「……男にこんな……何が楽しいんだ……」
「理一の反応を見るのが楽しい。というか、嬉しい? 俺だけに見せてくれるんでしょ? その顔」
「……」
もうどう返せばいいのか正解なんてわからない。教科書にも載ってない難問だ。
「こういうのは理屈じゃないんだよ、せんせ」
「ヴァン……」
「ジョアルって呼んで。じゃないと返事しないから」
「…………ジョアル」
「何?」
「………………俺、で……いいのか? もっと、可愛い女の子とかいるだろう?」
「理一がいい。俺が可愛いって思ったのは理一だから。理一じゃないと駄目」
ぎゅうっと抱きしめてくる。俺よりもまだ少し小さな体なのに、力強くて、心強さがある。
「ねぇ……理一も……ぎゅうってして。ダメ?」
ああ。ダメって言うのがダメだ。その上目遣いは反則。結局、俺はこの生意気な留学生に捕まってしまった。しかし、俺も満更でもないみたいだ。相手の言う通り体が動いて、抱きしめ返してしまうのだから。
END
「ねー、理一」
「……」
「ねーってば」
最近困った事が起きている。最近、留学生が転入してきたのだが、その留学生が俺に懐いてしまったのだ。名前は、ジョアル・ヴァン・フランシェス。シリスという弟がいるのでミドルネームで呼んでいる。
「ヴァン、呼ぶ時は先生と付けた方がいいぞ」
「じゃあ理一せんせ?」
「名前も駄目だ」
「何で?」
「何でって、ここは学校だからだ」
「学校じゃなきゃ呼んでいい?」
「そういうことじゃない……」
キーンコーンカーンコーン
授業の予鈴が鳴り、理一は足早に教室へ向かう。もちろんジョアルも後ろをついていった。
「ねぇ、せんせ」
「何だ?」
「授業の後に、ちょっと時間ちょうだい?」
「え?」
何故、と聞き返そうとして、既に教室の目の前まで来ていたのでやめた。ジョアルもうっすらと笑みを浮かべて。
「楽しみにしてるよ」
それだけ言って教室へ入っていった。
その笑みに一瞬ドキッと胸が高鳴ったのは気のせいではない。軽く溜め息を吐き、気を引きしめて教室へ入った。
授業が始まれば生徒と先生だ。それ以上も以下もない。だが授業中でも目が合えば、微笑んだり手を振ってきたり、とにかく他の生徒とは違った。気が乱れてしまうから、俺は授業に集中しようとヴァンから目を逸らし続けた。
授業が終わると、後ろの席からジョアルがやってくる。
「せんせ、約束」
「約束?」
「もう忘れたの?後で時間ちょうだいって言ったでしょ」
「あ、ああ…そう、だったな」
忘れてたわけじゃない。むしろ忘れられないくらいだった。だから誤魔化したかった。けれど彼からは逃れられない。
「放課後、少しくらいならいいでしょ?」
こてん
小首を傾げる仕草。ソレを見たら、物凄く断りづらくなってしまった。何というか、小動物を見るような気分になる。見た目は小動物よりも大型に近いけれど。
放課後になり、俺とヴァンは教室に二人きりになった。
「それで、俺に何の用だ?」
「放課後に呼び出す目的って、結構限られると思うけど……ね、何だと思う?」
ずいと席から身を乗り出してくるジョアルに後退りながら、でも目は逸らさないで。逸らせないでいた。
「っ、し、質問を質問で返すなっ!」
「ふふっ……そんな顔するから、つい弄りたくなっちゃうんだよね」
そんな顔ってどんな顔だ?
怪訝な顔で見れば、ぷっと吹き出して笑っている。
「せんせってばホント……」
え? な、なんだ…?
顔が近づいてくる。突発的な行動に反応が遅れ、気付いた頃には耳に吐息がかかるくらい近くまできていた。
「可愛い」
「っ!!」
耳から溶けてしまいそうな程、甘い囁き。理一は慌てて離れた。
「お、大人をからかうんじゃない!」
赤面して、その場から逃げるようにして教室を出た。廊下を走り、教室が見えなくなる所で曲がって、息を切らせてその場にへたりこんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
荒い呼吸を繰り返し、息も心も落ち着かそうと項垂れた。
その日はもうヴァンに会わず、逃げるように帰宅した。
俺の身が保てない……!
「何なんだ、あの留学生は……!」
それになんだ……俺の心臓は……バクバクして……うるさくて……痛い……
今までに感じたことのない苦しみを紛らわそうと、布団にくるまり、早急に寝ることにした。それでも寝つくまで、耳に残る熱い吐息と囁きが残っていて、中々寝つくことが出来ないでいた。
起きれば出勤時刻ギリギリだった。いつもは規則正しく起きられるのに。急いで仕度をして、走り込んで出勤した。
「はぁ、はぁっ……はぁ……」
昨日から走りっぱなしで筋肉痛になりそうだ。
「理一」
「っ!」
声に振り返れば思った通りの人物だった。
「おはよ」
「……」
「先生が挨拶を無視するの? それって教育上わる」
「おはよう、ヴァン」
この留学生は生意気だった。だが、挨拶を返しただけなのに。
「ちゃんと返してくれた」
ニッコリと。その綺麗な顔で笑う。
俺はついその顔に見とれてしまった。
キーンコーンカーンコーン
「これ、始まりのチャイムじゃない?」
「!! そ、そうだ! 早く教室に行かなくては!」
「先生が遅れるなら、俺が遅れても問題ないよね?」
「そういう問題じゃない!」
「わっ?」
咄嗟にヴァンの手首を掴んで、教室まで全力疾走する。教室に入ったら、中にいた生徒達が一斉にこちらを見てぽかんと静まり返った。
それもその筈。俺が遅刻をするのも、こんな慌てて走ってくることなんか今まで無かったからだ。
「せんせ、皆が見てるから恥ずかしい」
「え? ……ッ!!」
俺はヴァンの手首を離した。いや、こんな慌てて離すこともないのだが、ヴァンがそんなことを言うからつい。
ホームルームを終わらせて、すぐに授業が始まる。その頃にはもういつも通りの冷静さを取り戻していた。現国の授業だ。特に私語をするような授業ではない。
だから今はヴァンに話しかけられることなんて……
「はい、せんせ」
「え? な、何だ?」
ヴァンが手を挙げている。
「質問。その漢字なんて読むの?」
「これは……」
答えてやると素直にお礼を言うのだが。
「せんせ、また質問」
「……質問はまとめて聞きなさい」
「だって授業が進むごとに質問が浮かぶから。もっと時間が欲しいよ」
「なら放課後に聞くから、今は授業に集中しな……さ……」
「はーい」
………………俺は、墓穴を掘ったようだ。
「はぁ~………」
授業が終わって職員室に向かう。自分のデスクに突っ伏して激しく後悔している。
何故、放課後に約束してしまった?授業終わりでも良かっただろうに。ただでさえ、今の彼に近づくのは危険だと感じているのに。
「はぁ……」
いかん。他の先生もいるんだ。あまり溜め息なんか吐くものじゃない。
気晴らしに外を眺めた。外では体育の授業が行われていた。自分のクラスだ。
「体育か……。あんなに動いて……若いな」
三十路を超えた体にあの体育の授業はついていけないだろうな、と薄々感じている。苦笑いを浮かべるしかない。
「あ……ヴァン」
サッカーをしている。ボールがパスされて……走って……おお……速いし上手いな。………シュート……おっ、入った。運動神経いいんだな。
思わずサッカー観戦して感心してしまった。
違う、これはヴァンを見ていたんじゃなくて、クラスを見ていたんだ。チームワークはいいのか、そういう所をだ!
自分に言い訳をして、またデスクの前に座った。
カチカチカチカチ……
時計の針が少しずつ進んでいく。あともう少しで放課後になる。自分のクラスに行って、帰りのホームルームを終わらせた。
「起立、礼」
別れの挨拶を済ませ、みんな一斉に散り散りになる。その中で、ヴァンだけは動かない。俺を見つめて、その場から一歩も。
……俺に来いってことか?
「………ヴァン」
「はい。せんせ」
「……質問、何だ?」
「……うん、俺、留学生でしょ? 日本語の勉強したいんだ。だから、ちょっと長く話したいから飲み物飲みながら聞いていい?」
「……わかった」
ヴァンは飲み物を買いにいった。数分して戻ってくる。
「はい、せんせ」
「? ……俺の分も買ったのか?」
「うん。だって喉渇くでしょ?」
「ま、まあ……な」
こういう気遣いができるのだから案外悪い生徒じゃないかもしれない。
教科書を開いてヴァンはあらゆる箇所を質問してきた。とことん詰めるタイプのようで、言葉の意味や語源など、そんなことまで質問してきた。教師でも考えないような着眼点を持っている。
「……ヴァンは真面目なんだな」
「真面目? どうして?」
「どうしてって……こうして勉強をしているだろう?」
「学校なんだから、勉強するのは当たり前でしょ」
「いや、そうなんだが。他の生徒とは違うなって」
「……そう? 大して変わらないと思うけど」
ヴァンは大人びた顔つきで、笑ったようで笑ってない。そんな表情をしている。
「ああ……でもね、他の生徒と違う所はあるよ」
「え、なんだ?」
ガタン
え?
「っ~~~!!?」
「こういう所」
「なっ、なっ、なに、してっ!」
教室にはもう俺たち二人きりで、だから誰にも見られてはいない。
俺たちは、キスした。
「俺、先生が好きだよ。一目惚れしたんだ」
「な、なに言って……」
「顔真っ赤。可愛い」
「可愛くない!」
「可愛いよ。日本語間違ってる?」
「間違ってる! そもそもそんな単語は、俺には当てはまらないだろう。あ、あんまり、からかうんじゃない!」
席から立って、ゆっくり後ずさる。逃げたくて、もう扉まですぐだ。走ればもう届きそうで、早く逃げたかった。そうしないと、もう、何かが起こってしまう。
ドンッ!!
「うっ……」
壁際で、ヴァンの拳が壁を打つ。俺は壁を背に。前にはヴァンが、その綺麗な瞳に俺を映している。
「逃げないでよ。俺、本気だよ」
「わっ、ちょっ!」
ぐいっと引っ張られて、必然的にヴァンに抱きついてしまった。ヴァンの唇が、俺の耳に押し当てられて。
「……ねぇ、俺に捕まってよ。理一」
「……っ」
腰を撫でられながら、甘ったるい微熱混じりの声に蕩けていく。
でも、駄目だ。
「……っ、お、俺は……教師で、だか、ら……駄目だ」
「どうして?」
「どうしてって……生徒となんて……」
「男女じゃないし、問題ないでしょ」
「だから、そこは問題じゃなくてだな!」
「もう黙っててよ」
「んぐ!?」
顎を掴まれて、乱暴にキスされる。それから頬を包まれると、今度は優しく吸うようにキスされた。離してもぺろりと舐められて、堪能し終わると不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふ……大人しくなったね」
「……男にこんな……何が楽しいんだ……」
「理一の反応を見るのが楽しい。というか、嬉しい? 俺だけに見せてくれるんでしょ? その顔」
「……」
もうどう返せばいいのか正解なんてわからない。教科書にも載ってない難問だ。
「こういうのは理屈じゃないんだよ、せんせ」
「ヴァン……」
「ジョアルって呼んで。じゃないと返事しないから」
「…………ジョアル」
「何?」
「………………俺、で……いいのか? もっと、可愛い女の子とかいるだろう?」
「理一がいい。俺が可愛いって思ったのは理一だから。理一じゃないと駄目」
ぎゅうっと抱きしめてくる。俺よりもまだ少し小さな体なのに、力強くて、心強さがある。
「ねぇ……理一も……ぎゅうってして。ダメ?」
ああ。ダメって言うのがダメだ。その上目遣いは反則。結局、俺はこの生意気な留学生に捕まってしまった。しかし、俺も満更でもないみたいだ。相手の言う通り体が動いて、抱きしめ返してしまうのだから。
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