囚われた親友に

朝陽ヨル(月嶺)

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過去2

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 仲良く話していてもそれは社交辞令というもので、中学までの付き合いだと思っていた。しかし違った。高校も一緒になった。偏差値は最高レベルの決して簡単ではないのに。彼は、部活の推薦だったようだ。

『キャー! 小田切君がんばれー!』

 サッカー部で黄色い声援が飛び交う。部活での彼は一層輝きを放っていた。中学ではサッカー部のキャプテン。高校ではルーキーとして、周りから騒がれていた。スポーツも出来て学力もあるなんて、完璧でしかない。

 彼は高校でも同じクラスだった。しかも名前順で、また席が前後となる。見慣れたような光景だ。彼の頭が回り俺の正面に向く。

『なっ、柏木。宿題教えてくんね?』
『お前なら分かるだろ』
『分からない所もあるんだよ。だからちょっとだけ! 柏木の邪魔はしないからさ!』

 手を合わせて頼み込む彼。これを断ったら俺は悪者だ。それくらいは分かる。

『はぁ……分かった。だが、これから図書館に行くんだが』
『俺も行くよ。じゃなきゃ教えてもらえないんだろ?』
『部活があるんじゃないのか?』
『テスト期間中は無いって』

 そんなこんなで一緒に図書館に行くことになった。彼は遊びにでも行くような雰囲気で実に楽しそうだ。

『本を探して来るから、分かる所は進めておけよ』
『オッケー!』

 元々図書館に行く予定だったのだ。遠慮せず本を積んで、読むことに没頭するつもりだった。

『……』

 気になった五、六冊を持って席に戻ると、小田切は予想以上に集中して宿題を進めていた。

 ……教える必要はあるのか?

『……。…………あ、戻ってきたな。ここだよここ、どうやんの?』

 少し間を置いて俺に気づいたようだ。俺にテキストを向けて分からないという問題を指している。どうやら数学が苦手らしい。

『これは、この角度とこっちの角度を足して……』

 解説しながら教えてやる。小田切は相槌を打ちながらメモを取り、集中して勉学に励んでいる。きっとサッカーでもこんな風に集中しているんだろう。

『……分かったか?』
『大体分かった。サンキュー!』

 お礼を言って、またテキストに集中する。……かと思ったが、顔を上げて俺の方を見てきた。

『……な、なんだ……?』
『いやさ、せっかく教えてもらってるし、ジュースでも奢ろうかなって。ちょっと買ってくる』
『え、いやいい! ……って……行くの速すぎだろ……。それに館内は飲食禁止……』

 小田切の行動力は凄まじかった。人の話も聞かずにすっ飛んでいく。こういう所は体育会系のようだ。

『買ってきたぜ!』

 息一つ乱れていない。あんなに全力疾走して行ったのに。

『走るな。ここは飲食禁止だ。だから後でな』
『えっ、ここ出た後もいいの!?』
『……せっかく買ってきてくれたし』

 そう言ったら、小田切は何故か嬉しそうだった。不思議なヤツだ。小田切は買ってきた飲み物はテーブルに置いてテキストを再開しているが、俺は小田切のことが気になって読書に集中出来なくなっていた。
 小田切の宿題が終わり、それを機に図書館を出た。そして買ってきてもらった飲み物を飲む。

『テキトーにスポドリにしちゃったけど、他が良かった?』
『いや……強いて言うなら』
『お茶?』
『何でそんな渋いのにいくんだ』
『いや~柏木のイメージ? 渋そうなお茶とか好きそうじゃん。え、お茶は実は苦手系?』
『好きではない』
『あっ、じゃあ意外と甘いの好き?』
『そうだな。疲れている時は特に甘い物が欲しくなる』
『意外だな~。その顔で甘い物好きとか……ぷぷっ』
『笑うな』

 結局、図書館から出て俺たちは数分どころか数時間話してしまっていた。
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