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二話 夢と現
三 挿し絵あり
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「はあ……くだらない」
「くだらなくなんかない!」
布団を畳んでから着替えて階段を降りると、リビングから伯父と伯母の声が聞こえてきた。どちらも怒っている声だった。扉を開けリビングへ入ると、祖父と目が合う。
「おはよう、ココロ」
「……おはよう。どうしたの?」
伯父夫婦と祖父を交互に見てみる。伯父と伯母は腕を組んで睨み合っていて正直怖い。テーブルには二人が見えるように文字がびっしりと羅列して書かれているノートが広げられている。
祖父は素知らぬ顔で椅子に腰掛けていた。
「気にしないでいい。いつものことだから」
「そうなの?」
「ピヨッ?」
ココロの手の中で、クックと呼ばれたピヨもココロと同じように首を傾げている。
「筋肉欲しいんだよ! ムッキムキになりたい!」
「どうせ三日坊主になるんだから買うだけ無駄でしょ」
「無駄じゃない!」
「無駄!」
よくわからない論争で頭に入ってこない。わからないことを考えていても仕方がない。
皿にピヨ用の餌を入れてクックの前へ置くと、クックはくちばしでつつき出した。
それから冷蔵庫から牛乳を取り出しテーブルに置く。大人たちに合わせてあるテーブル。ココロには少し高く、座高に合わせて調節してあるココロ専用の椅子に座った。既に用意してあった器の中に【ブランブラン】と書かれているシリアルを入れて牛乳を並々注ぐ。ココロはこの朝に食べるシリアルが好きだ。
シリアルを一口含みテレビを観ると、テレビショッピングがやっていた。
『さあ、貴方も理想の筋肉を手に入れませんか? 【AZSプロテイン】放送記念で今ならなんと半額の○○円!』
……ぷろていんってなんだろう?
「ほらっこんなに安価だって!」
「買わなきゃお金もかからないわよ」
「買う前提だよ! 他と比べて安いし……あっ、ほらほら送料無料だって!」
「バカね。これ録画でしょ。送料無料期間過ぎてるじゃない」
「え。……あ、ほんと」
どうやら伯父がプロテイン欲しさに朝から騒いでいるようだ。
「だったら【AZSコラーゲン】の方が欲しいわ。ペプチドコラーゲンにヒアルロン酸、お肌ツルツルで張りも出る」
「美容ならプロテインだってイケる! 引き締まる!」
「私は既に引き締まってるからいいのよ!」
「そうだけど! 健康にもいいんだって!」
今度は伯母がコラーゲンの話を切り出して、どちらも意見を曲げなそうだ。
「コケーッ! コココッ」
「「!!」」
鳴き声に驚き伯父とココロが肩を跳ねさせた。
この家には伯父夫婦が元々飼っているピヨもいる。もう雛から大分成長し、成鳥となったオスのピヨ。その姿は鶏と酷似しているが異なる生き物だ。
「うあービックリした……。あっ、ねえココロちゃん」
「……あ……う……、なに?」
びくりと朝から二度も肩を跳ねさせる。ココロにとっては慣れない環境で、驚いたり怯えたり恐怖することが多い。
「ココロちゃんもプロテイン欲しいよね?」
「え?」
「あなた、子供に聞くなんて狡いわよ」
「だって欲しいもん」
「もんとか言わないで気持ち悪い」
「酷いなー。ね? ココロちゃんも欲しくない?」
困る質問である。プロテインが何なのかわからないのに、欲しいかどうか聞かれても答えようがない。知らない物という点で言えば、欲しくない物になる。
「亮一……ココロが困ってるからやめなさい」
「えー」
しかし、どうして欲しいのに買うか買わないか迷うのだろうか。健康になるのならきっと体に良い物に違いない。
「あの……伯父さんがほしいって思うなら、いいと思う」
「ココロちゃん……!」
伯父は存外単純な性格のようだ。昨日の空港では怖い印象だったが、今ではニコニコして上機嫌である。
「ほらー。ココロちゃんもこう言ってるし買おうよ~」
「だったらコラーゲンも買ってよ。私はそっちが欲しいの」
「オッケー。それで手を打とう!」
口喧嘩が治まったようで、これでやっと安心して朝食が食べられる。
「くだらなくなんかない!」
布団を畳んでから着替えて階段を降りると、リビングから伯父と伯母の声が聞こえてきた。どちらも怒っている声だった。扉を開けリビングへ入ると、祖父と目が合う。
「おはよう、ココロ」
「……おはよう。どうしたの?」
伯父夫婦と祖父を交互に見てみる。伯父と伯母は腕を組んで睨み合っていて正直怖い。テーブルには二人が見えるように文字がびっしりと羅列して書かれているノートが広げられている。
祖父は素知らぬ顔で椅子に腰掛けていた。
「気にしないでいい。いつものことだから」
「そうなの?」
「ピヨッ?」
ココロの手の中で、クックと呼ばれたピヨもココロと同じように首を傾げている。
「筋肉欲しいんだよ! ムッキムキになりたい!」
「どうせ三日坊主になるんだから買うだけ無駄でしょ」
「無駄じゃない!」
「無駄!」
よくわからない論争で頭に入ってこない。わからないことを考えていても仕方がない。
皿にピヨ用の餌を入れてクックの前へ置くと、クックはくちばしでつつき出した。
それから冷蔵庫から牛乳を取り出しテーブルに置く。大人たちに合わせてあるテーブル。ココロには少し高く、座高に合わせて調節してあるココロ専用の椅子に座った。既に用意してあった器の中に【ブランブラン】と書かれているシリアルを入れて牛乳を並々注ぐ。ココロはこの朝に食べるシリアルが好きだ。
シリアルを一口含みテレビを観ると、テレビショッピングがやっていた。
『さあ、貴方も理想の筋肉を手に入れませんか? 【AZSプロテイン】放送記念で今ならなんと半額の○○円!』
……ぷろていんってなんだろう?
「ほらっこんなに安価だって!」
「買わなきゃお金もかからないわよ」
「買う前提だよ! 他と比べて安いし……あっ、ほらほら送料無料だって!」
「バカね。これ録画でしょ。送料無料期間過ぎてるじゃない」
「え。……あ、ほんと」
どうやら伯父がプロテイン欲しさに朝から騒いでいるようだ。
「だったら【AZSコラーゲン】の方が欲しいわ。ペプチドコラーゲンにヒアルロン酸、お肌ツルツルで張りも出る」
「美容ならプロテインだってイケる! 引き締まる!」
「私は既に引き締まってるからいいのよ!」
「そうだけど! 健康にもいいんだって!」
今度は伯母がコラーゲンの話を切り出して、どちらも意見を曲げなそうだ。
「コケーッ! コココッ」
「「!!」」
鳴き声に驚き伯父とココロが肩を跳ねさせた。
この家には伯父夫婦が元々飼っているピヨもいる。もう雛から大分成長し、成鳥となったオスのピヨ。その姿は鶏と酷似しているが異なる生き物だ。
「うあービックリした……。あっ、ねえココロちゃん」
「……あ……う……、なに?」
びくりと朝から二度も肩を跳ねさせる。ココロにとっては慣れない環境で、驚いたり怯えたり恐怖することが多い。
「ココロちゃんもプロテイン欲しいよね?」
「え?」
「あなた、子供に聞くなんて狡いわよ」
「だって欲しいもん」
「もんとか言わないで気持ち悪い」
「酷いなー。ね? ココロちゃんも欲しくない?」
困る質問である。プロテインが何なのかわからないのに、欲しいかどうか聞かれても答えようがない。知らない物という点で言えば、欲しくない物になる。
「亮一……ココロが困ってるからやめなさい」
「えー」
しかし、どうして欲しいのに買うか買わないか迷うのだろうか。健康になるのならきっと体に良い物に違いない。
「あの……伯父さんがほしいって思うなら、いいと思う」
「ココロちゃん……!」
伯父は存外単純な性格のようだ。昨日の空港では怖い印象だったが、今ではニコニコして上機嫌である。
「ほらー。ココロちゃんもこう言ってるし買おうよ~」
「だったらコラーゲンも買ってよ。私はそっちが欲しいの」
「オッケー。それで手を打とう!」
口喧嘩が治まったようで、これでやっと安心して朝食が食べられる。
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