超進化ペット!ピヨ 改訂版

朝陽ヨル(月嶺)

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二話 夢と現

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「コココッ」
「ピッピッ」

 伯父夫婦のピヨとクックは一緒に餌を食べている。喧嘩をする様子が見られないからと一先ず安心する。

 名前なんていうんだろう?

「おじいちゃん」
「なんだ?」
「ここのお家のピヨさんは、名前なんていうの?」
「ああ、太郎丸たろうまるだよ」
「太郎丸……さん」

 意外と古風な名前だ。改めて太郎丸とクックを眺めて、ちゃんと認識しようと名前を呟く。
 朝食が食べ終わり、器を流し台へ置く。いつも自分の分しか置かれていない流し台の印象だったが今回は違った。流し台に三人分の食器がある。

「いいわよ置いといて」
「あ……うん」

 伯母がやってきて食器を洗い始める。普段から家族分をまとめて洗うのだろう。
 ココロは自分で洗おうと思っていた為、行き場のない手をさ迷わせてすぐに引っ込める。そしてテレビの前のソファへ小走りに向かって座った。

 ……いつもわたしの分のおさらとスプーンしかないのに……ここはたくさんあった

 いつも一人の食事だった。洗うのは自分が使用した食器のみで、あんなに沢山あったのは初めて見た。

 かぞくがいっぱい。いつもあんなにたくさんあらうの……たいへんだろうな……

 項垂れて気持ちを抑え込むように丸くなり膝を抱える。大変だと思うのにちょっとだけ羨ましいとも思うなんて可笑しいなと、心の中でひっそりと留めておく。

「よーし、ご飯食べて腹も膨れたし、早速買い物行くぞー。準備準備!」

 プロテインを買う許可を得て相当嬉しいのか伯父がすっかり意気込んでいる。

 伯母さんにきいてからじゃないと買っちゃいけないのかな?

 伯父夫婦は妻が強いようだ。ココロには夫婦の関係などまだわからない。男女の関係、恋に関して興味を持つにはまだまだ早い年齢だろう。

「私も化粧しないと」

 食器を洗い終わりタオルで手を拭く伯母。さっさと化粧台へと向かっていった。

「ココロも支度しなさい」
「うん」

 祖父に促されて、食事を終えたクックを抱えて二階の自室へ戻る。

「クックさんはお留守番」
「ピッ」
「すぐ帰ってくるよ。待っててね」

 ケージにクックを入れて、そのケージを陽当たりの良いところへ運んだ。服は着替えてあるため、あとは髪を結ぶだけで出掛ける支度は完了する。リュックから櫛を取り出して長い髪をすく。

 ドタンッ!!!!

「いっーーッ!!」

 下から鈍い大きな物音と祖父らしき声が聞こえた。

「おじいちゃん?」

 ココロは髪を整えるのを途中で止め、慌てて一階へ降りていった。
 リビングには床に手をついている祖父の姿があった。 

「どうしたの?」
「あ痛たたたた……!」
「親父大丈夫か!?」

 伯父に支えられて腰を押さえながら立ち上がり椅子に腰掛ける祖父。苦悶の表情で伯母が濡らして固く絞ったタオルや湿布を腰に当てている。

「ああ……ちょっとヤッてしまったかもしれないな」
「げーっ! マジ!?」
「……やった? なにが?」
「腰を痛めたかもしれないってことよ。お義父さん、整形行きます? 動けますか?」
「はあああ~……ぎっくりかな」

 祖父が汗をかいて苦しそうに顔を歪めている隣で、伯父も伯母も顔を歪めている。辛いのか痛いのか悲しいのか、それとも違う感情なのか。ココロは祖父が苦しそうで、同じ苦しみはわからないが自分も辛く感じた。

「まだ少しは動けーーあッ痛っつつ……っ!」
「無理はしない方がいいですよ」
「親父が動けないんじゃどうしようもないよな~」
「あなた」
「はいはい。とりあえず病院行くか」
「びょういん……」

 あまりいい印象がない場所。薬をもらったり注射をしたり、痛かったり苦しい時に行く場所。そんな印象のある場所に祖父は行かないといけないなんて。

「おじいちゃん……かわいそう」
「……ごめんなココロ」
「え?」
「今日は一緒に買い物に行く約束だったのにな」
「やくそく……うん……」

 残念ではある。しかし祖父の体の方が心配でそれどころではないことは理解している。だがやはり残念だった。

「また今度な」
「……うん」

 頭を撫でて宥められ、悲しい気持ちが少しずつじわじわと染み出してきた。これではまるで、両親との記憶を再び辿るかのように。

『次の休みは遊びにいこうか。どこがいいんだ?』
『今度一緒に買い物行くわよ。ココロは何が欲しい?』
『パパとママがいっしょならどこでもいいよ。いっしょにいれたら、ほかにほしいものなんてないよ』

 心が締め付けられるみたいだ。胸元をぎゅっと強く握り、それから階段を速く駆け昇り自室へ戻った。

「ピィッ」
「クックさん……」

 ケージの中へ手を伸ばして待つと、手のひらにクックが乗る。手を引き、顔の前、額へクックを寄せた。額に薄く柔らかい温かな羽毛の感触。その微かな温もりだけが冷えた心をくすぐる。

「クックさん……っ」
「ピィ……?」

 クックからは俯く主の顔は見れない。ただどこもかしこも震えていて、それが悲しんでいると分かるには十分だった。くちばしの付け根を、鳥の鼻となっている部分を擦り付けて主を慰めようとする。それがクックに出来る最善だった。
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