19 / 85
四話 成長の第一歩
二
しおりを挟む
「伯父さん! 伯母さん! たいへん!」
リビングに駆け込むと、テーブル席で座っている伯父と朝食を作る伯母の視線が一斉にココロへ向いた。
「朝から慌ただしいわね」
「なに、なんかあったの?」
「クックさんが!」
「あー、懐かしい小雛だ」
クックの姿を見た途端に伯父は笑って近づいてきた。
ココロはびくつきながらも手を前に出してクックを見せる。
「成長したねー。進化までもうちょっとだ」
「えっ? まだしんかしてないの?」
「うん。これは進化の前の段階。まああれだよ、ニワトリと一緒。ニワトリになる前もこんな感じだから」
「ニワトリは雛、小雛、次に中雛、大雛、そして成鶏になるのよ」
「ええ? ヒナがいっぱい……」
「ヒヨコから成長していって呼び名が変わるのよ」
「ピヨの場合は小雛からぶっ飛んで成長して成鳥になるんだ。ははっ、せいちょうしてせいちょうだって、ウケる。あ、だから進化って言うんだっけ? 太郎丸もあの姿の前は小雛だったんだよ」
「そ、そうなんだ……」
自分で言ったことに一人で笑いながら、庭で日向ぼっこをしている太郎丸を指差して説明する伯父。
ニワトリの成長はヒヨコから徐々に身体が大人に近づいていき、生まれてから成育日数で呼び名が変わる。
しかしピヨの場合は卵から孵化して雛となり、小雛に成長して、次に成鳥となる。ニワトリのような段階は無い。
又、他の動物のように日ごとに体つきが変化するわけではない。一定の成育日数が経過すると短時間で急速に成長し、体に変化が起こる。ここが【進化】と言われる所以である。成鳥の他に、姿形の種類分岐があることから【進化形態】と呼ぶ人もいる。
飼い主でも成長や進化する瞬間を見逃すことはざらにあり、その瞬間を見逃すまいとあらかじめ撮影しておく飼い主もいるくらいだ。
「小雛になったことが大変ってこと? それなら別に大変なことじゃないわ。寧ろ喜ばしいことよ」
伯母はキッチンからベーコンエッグの乗った皿を持ってテーブルに並べる。それからエプロンを脱いでキッチンに常備してあるハンガーに掛けている。
「でも亜希子ちゃん、さっきから全然動かないんだけど。静かだし」
手のひらの上にいるクックは鳴いてはいるが覇気が無く動こうとしない。
「クックさんあしケガしてるの」
「え!?」
ココロの言葉を聞いて驚声を上げたのは伯母だった。血相を変えてココロからクックを奪うように受け取り脚を確認する。
「ピ……」
左脚は震え目を閉じて耐えているようだ。
顔を上げた伯母は、普段の冷静さとは違い明らかな怒りが見てとれて緊張が走る。
そんな伯母の視線に恐怖し、肩を跳ねらせうるさい心臓の音が鳴り止まない。
「……いつから?」
「い……、いつからかは……わかんない……あさ、おきたら気づいて……。きのう、太郎丸さんとおさんぽいくのにハンドバッグに入れてたら太郎丸さんにもってかれちゃって、その時に中でゴロゴロしちゃってーー」
「ハンドバッグに入れて散歩に連れて行ったの?」
「……うん」
更に表情が険しくなる伯母にさすがの伯父も気まずそうな顔をしてココロと伯母を交互に見ている。何か言いたそうにしているが言葉が出てこないのか黙っていた。
「どれくらいの大きさ?」
「これくらい」
ジェスチャーで大きさを表してみる。
すると伯母は大きな溜め息をついた。
「まったくなんてこと。そんな小さなハンドバッグでよく連れていこうと考えたわね。それに太郎丸に持ってかれたのはあなたの不注意じゃない」
「う……うん」
「可哀想に……すぐ病院に連れて行かないと」
「あ、の…………ごめん、なさい」
怒られた経験がほとんど無いココロだが、自分が悪かったと自覚し俯いてか細い声で謝る。クックのサイズには丁度良いと思って選んだ小さめのハンドバッグ。こんなことになってしまうとは思ってもみなかった。
「ピヨは小雛の時期がとても大事なのよ。これで進化にどんな影響が出るかわからないし、もっと敬って大切に育てなさい。そうじゃないとまたケガさせるわよ」
「ま、まあまあ亜希子ちゃん」
苦笑いする伯父が間に割って入り伯母を制してくれる。
「初めての散歩だしさ、ほら、次から気をつければいい話じゃん? ねっ、ココロちゃんも気を付けようねー」
「うん……」
びくつきながらもぎこちなく返事をして頷いた。
伯母は気が済まないようで細い眉を跳ね上げさせたままの表情は変わらず溜め息を吐いている。
リビングに駆け込むと、テーブル席で座っている伯父と朝食を作る伯母の視線が一斉にココロへ向いた。
「朝から慌ただしいわね」
「なに、なんかあったの?」
「クックさんが!」
「あー、懐かしい小雛だ」
クックの姿を見た途端に伯父は笑って近づいてきた。
ココロはびくつきながらも手を前に出してクックを見せる。
「成長したねー。進化までもうちょっとだ」
「えっ? まだしんかしてないの?」
「うん。これは進化の前の段階。まああれだよ、ニワトリと一緒。ニワトリになる前もこんな感じだから」
「ニワトリは雛、小雛、次に中雛、大雛、そして成鶏になるのよ」
「ええ? ヒナがいっぱい……」
「ヒヨコから成長していって呼び名が変わるのよ」
「ピヨの場合は小雛からぶっ飛んで成長して成鳥になるんだ。ははっ、せいちょうしてせいちょうだって、ウケる。あ、だから進化って言うんだっけ? 太郎丸もあの姿の前は小雛だったんだよ」
「そ、そうなんだ……」
自分で言ったことに一人で笑いながら、庭で日向ぼっこをしている太郎丸を指差して説明する伯父。
ニワトリの成長はヒヨコから徐々に身体が大人に近づいていき、生まれてから成育日数で呼び名が変わる。
しかしピヨの場合は卵から孵化して雛となり、小雛に成長して、次に成鳥となる。ニワトリのような段階は無い。
又、他の動物のように日ごとに体つきが変化するわけではない。一定の成育日数が経過すると短時間で急速に成長し、体に変化が起こる。ここが【進化】と言われる所以である。成鳥の他に、姿形の種類分岐があることから【進化形態】と呼ぶ人もいる。
飼い主でも成長や進化する瞬間を見逃すことはざらにあり、その瞬間を見逃すまいとあらかじめ撮影しておく飼い主もいるくらいだ。
「小雛になったことが大変ってこと? それなら別に大変なことじゃないわ。寧ろ喜ばしいことよ」
伯母はキッチンからベーコンエッグの乗った皿を持ってテーブルに並べる。それからエプロンを脱いでキッチンに常備してあるハンガーに掛けている。
「でも亜希子ちゃん、さっきから全然動かないんだけど。静かだし」
手のひらの上にいるクックは鳴いてはいるが覇気が無く動こうとしない。
「クックさんあしケガしてるの」
「え!?」
ココロの言葉を聞いて驚声を上げたのは伯母だった。血相を変えてココロからクックを奪うように受け取り脚を確認する。
「ピ……」
左脚は震え目を閉じて耐えているようだ。
顔を上げた伯母は、普段の冷静さとは違い明らかな怒りが見てとれて緊張が走る。
そんな伯母の視線に恐怖し、肩を跳ねらせうるさい心臓の音が鳴り止まない。
「……いつから?」
「い……、いつからかは……わかんない……あさ、おきたら気づいて……。きのう、太郎丸さんとおさんぽいくのにハンドバッグに入れてたら太郎丸さんにもってかれちゃって、その時に中でゴロゴロしちゃってーー」
「ハンドバッグに入れて散歩に連れて行ったの?」
「……うん」
更に表情が険しくなる伯母にさすがの伯父も気まずそうな顔をしてココロと伯母を交互に見ている。何か言いたそうにしているが言葉が出てこないのか黙っていた。
「どれくらいの大きさ?」
「これくらい」
ジェスチャーで大きさを表してみる。
すると伯母は大きな溜め息をついた。
「まったくなんてこと。そんな小さなハンドバッグでよく連れていこうと考えたわね。それに太郎丸に持ってかれたのはあなたの不注意じゃない」
「う……うん」
「可哀想に……すぐ病院に連れて行かないと」
「あ、の…………ごめん、なさい」
怒られた経験がほとんど無いココロだが、自分が悪かったと自覚し俯いてか細い声で謝る。クックのサイズには丁度良いと思って選んだ小さめのハンドバッグ。こんなことになってしまうとは思ってもみなかった。
「ピヨは小雛の時期がとても大事なのよ。これで進化にどんな影響が出るかわからないし、もっと敬って大切に育てなさい。そうじゃないとまたケガさせるわよ」
「ま、まあまあ亜希子ちゃん」
苦笑いする伯父が間に割って入り伯母を制してくれる。
「初めての散歩だしさ、ほら、次から気をつければいい話じゃん? ねっ、ココロちゃんも気を付けようねー」
「うん……」
びくつきながらもぎこちなく返事をして頷いた。
伯母は気が済まないようで細い眉を跳ね上げさせたままの表情は変わらず溜め息を吐いている。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命
しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」
ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。
唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。
命を救い、
盗賊を退け、
馬車組合と交渉し、
サスペンションとコンテナ規格で街を変える。
レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。
これはチート無双ではない。
仕組みで勝つ物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる