超進化ペット!ピヨ 改訂版

朝陽ヨル(月嶺)

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四話 成長の第一歩

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「亜希子さん」

 和室から祖父の声が聞こえる。和室の扉を開くと、祖父が苦痛で顔を歪めつつもゆっくりと起き上がろうとしていた。

「お義父さん、もう起きて大丈夫ですか?」
「痛ったたた……ああ……まだ痛みはあるが、少しずつ動かしていかないとな。それよりココロをあまり責めないでやってくれ。何かに入れて連れて行きなさいと言ったのは私だから。ハンドバッグでもいいと答えたし、ちゃんと確認しなかった私が悪い」
「おじいちゃん……」
「はあ、そうですか。じゃあこれから気を付けるのね」

 祖父からココロに視線を向くと幾らか表情は落ち着いている。苛立ってはいるが冷静さを取り戻しているようだ。

「はいはい、じゃあ病院行く準備しよう! っとその前に朝飯にしようぜ~。俺お腹すいた」

 そうだった。起きたばかりでまだ何も食べていない。気づいたらグゥーと腹の虫が鳴き出した。

「朝飯なーに?」
「ベーコンエッグ食べたいって言ってたのあなたでしょ」
「あっそうだったねーテヘペロッ」

 朝から陽気な伯父にその場の空気が幾らか和む。
 テーブルには人数分のベーコンエッグの他にトースト、スープが置かれていた。

「ほら、ぼさっとしてないで顔を洗ってきなさい。朝食済ませたら病院にいくんだからその準備もするのよ」
「あ……うん」

 伯母の手のひらにいるクックを見つめ悪い気になっていて呆然と立っていたが、言われてリビングを出ていき洗面台ヘ向かって顔を洗う。そしてリビングに戻り自分の指定席に座った。先に食べている伯父や伯母に続き、スプーンを持ってスープをすくう。

「ちょっと待って。いただきますは?」

 スープを飲もうとした一歩手前で動きを止めた。

「……いただきます」
「食事のマナーを全て覚えなさいとは言わないけど、せめて《いただきます》と《ごちそうさま》くらいは言いなさい」
「……うん」

 学校の給食ではちゃんと言っているのに、家で言うことが少なかったことや、緊張や焦りでつい頭から抜け落ちていた。

「いただきます」

 もう一度食事の挨拶をしてから改めてスープをすくって口内に運ぶ。いい塩加減で美味しい。潤ったところでトースト、ベーコンエッグを食べて、渇いた喉にまたスープを流し込む。食べる動作が止まらず完食した。最後にコップ一杯の牛乳を飲んで満足する。

 おいしい……ほかほかしたあさごはん。おなかがぽかぽかしてくる。みんなと食べてるからなのかな? きゅうしょくもみんなでいっしょに食べてるからおいしいのかな?

「ごちそうさまー!」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさま」

 伯父も祖父も伯母も食べ終わって両手を合わせて『ごちそうさま』と言っていた。
 ココロも真似するように両手を合わせて「ごちそうさま」と言って、空になった食器を流し台へ持っていく。
 朝食の後は言われた通り準備をしようとするが、何を準備すればいいのかわからない。
 
 おせわファイルには大人にきいてみるってかいてあったし、きいてみようかな

「なにじゅんびすればいい?」

 着替えている伯父に話を振ってみた。

「うーんええと……クックさん、だっけ? 様子見てればいいんじゃない」
「それだけでいいの?」
「それくらいだよ。あっ、そうそう、朝飯の前だけど、亜希子ちゃん……伯母さんはピヨが大好きだから怒ったんだよ。怖かっただろ~」
「こわかったけど、ピヨさんがだいすきなんだね」
「そっ。だからあんまり怖がらないでやってよ」
「わかった」
「よしよし」

 笑いながらぽんぽんとココロの頭を撫で、それから自分の髪を整え始めた。
 邪魔になるだろうと考えて、クックの様子を見る為に捜すことにする。

 伯母さんがつれていってどこに行ったんだろう?

「ピィーピィー」
「あっ。クックさんの鳴き声」

 玄関に行くとフタ付きのカゴが置いてあり、フタを開くとクックが入っていた。カゴの中はケージ内のように新聞紙や床材が敷かれている。

「ピヨを連れて歩くならそれくらい丈夫なカゴにしなさい」

 後ろから化粧を済ませた伯母が現れた。

「そのカゴあげるから、今度からは気を付けなさいね。あなたのパパやママから聞いたけど、あなたが主なんでしょう? だったらもっと大切に面倒見てあげなさい」
「うん」
「あと、返事はうんじゃなくて、はいって言った方が利口ね。ずっとそうやって頷いているだけならいつか笑われるわよ」
「うん……あっ、はい」
「そう。わからないことはすぐに聞いてちょうだい。間違ってからじゃ遅いんだから」
「わかった」

 雰囲気や語調が強くて怖い。けれどピヨが大好きだからあんなに怒ったのだと伯父から教えてもらったら不思議と少しだけ怖さが軽減する。今もピヨのこととは関係ないが、怒鳴らずちゃんと教えてくれる大人の一人なのだと、信用出来る人なのだと感じていた。

「準備完了~」

 準備が整った伯父がやってくる。
 伯母が靴を履いて先に扉を開けてくれた。

「ココロちゃん、カゴ持って。揺らさないようにそっと」
「こう?」

 持ち手を両手で垂直に持ち上げる。揺らさないように慎重に玄関を出ていく。

「親父ー太郎丸ー、留守番頼んだー」
「おおー」

 祖父の返事を聞いてから車に乗り込む。後部座席に座り、膝にカゴを乗せてしっかりカゴごとシートベルトで固定した。
 
「よーし、そんじゃあ行くとしますか」

 慣れた手つきでギアを操作し発進する。
 車体が揺れるとカゴの中でクックがひっきりなしに鳴いている。

「だいじょうぶだよ、ちょっとゆれるかもしれないけど、ちゃんとささえてるからね」

 カゴを覗き、安心させる為に病院に着くまで鳴いているクックの額や顔周りを撫で続けた。
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