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九話 進化
四
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「ただいま」
「ああ、お帰り。お疲れ様」
「お義父さんもいつも掃除や太郎丸の散歩ありがとうございます」
時刻は18時半を過ぎた頃に亜希子は帰宅した。
今日のメイクもばっちり仕上がっており、仕事が終わった時間でも全く崩れていない。
外出着から室内着へ着替えその上からエプロンを身に着ける。仕事を終えた後は夕飯の支度に取り掛かる。
「ココロの手伝いも上達してきたかな」
「ええまあ。簡単なことから教えてますし、それなりに出来るようになりましたね」
「そうか。今日も教えるなら声をかけて来ようか。二階から足音も聞こえないし、さっきここから呼んでも返事が無かったから、もしかしたら寝てるかもしれない」
「じゃあ私が様子見て来ます」
義父が立とうとするのを手で制し、それからリビングを出て階段を上がっていく。
コンコンコン
「ココロちゃん、入ってもいいかしら」
ココロの部屋の扉をノックし部屋にいても聞こえるくらいの大きさで声を掛ける。しかし返答は無い。
「入るわよ」
ガチャ
室内にココロの姿は見当たらない。トイレに行ってるのかもしれないと考えてトイレもノックして声を掛けたがやはり返事は無かった。またココロの部屋に入り中をぐるりと見渡す。
「……クックもいない。亮一と出掛けてるのかしら」
夫はその時の思いつきでふらっと出掛ける事がザラにある。もしかしたらとスマートフォンを取り出してメールが届いてないかチェックをしてみるが、メールボックスの中はダイレクトメールのみだった。
そもそも今日夫は仕事で、自分よりも遅く帰ってくるはずなのだから夫が連れ出す可能性は低い。
ーーランドセルは置いてあるから帰ってはいる。でもクックがケージごといない……鞄は……リュックサックはあるけど、ショルダーバッグが無いわ
クローゼットの中を調べて無くなっている物を導き出すと胸騒ぎがする。亜希子は血相を変えて足早に一階に降りてリビングに戻る。
「お義父さん、ココロちゃんとクックがいません」
「いない? でも今はもう……」
壁掛けの時計に目をやると門限はとっくに過ぎている時間である。
「ココロちゃんがどこに出掛けたのかご存知ですか」
「いいや、ココロが学校から帰って来る前に太郎丸と散歩に出てしまって朝きり会ってないんだよ。メモを残しておいたから返事が書かれてないかな」
テーブルの上に置かれているメモをすかさず摑み見てみるが、義父が書いたであろう文字しか書かれていない。どこかに別のメモがないかテーブルの上や床中を探してみるがそれらしいものは見つからなかった。
「またあの公園で遊んでるのかしら……少し学校の方を捜して来ます」
「じゃあ私は学校の反対方向を捜してみよう」
手分けして捜索することになり家を出て左右に分かれていく。走って公園や小学校付近を捜し回るが見当たらず、ココロが行きそうな場所も他に見当がつかなかった。雨が降っていて視界が悪く、傘を差す人が疎らにいて捜しづらい。
闇雲に捜しても仕方がない。携帯しているスマートフォンを操作して電話帳を開き、ココロの親友である咲掛宅へ電話を掛けた。通話相手は凛々華の母親だが、近くにいるのか凛々華の声も聞こえる。
「夜分遅くにすみません。ココロはそちらに伺ってないですか」
『いいえ、今日はこちらには来てませんが……どうされました?』
「門限はとっくに過ぎているのに帰ってきてないんです」
『まあ! それは心配ですね……。凛々華も今日はココロちゃんと遊んでないよね?』
『うん。帰りあんまり元気なくてわたしもしんぱいしてたの。マミちゃんのいつものじまんを聞いておちこんでたから』
「自慢?」
『ああ、同じクラスの愛美ちゃんって子が、いつも自慢話をするんですって』
『いろんなもの買ってもらえてしあわせーとか、ココロちゃんにママに会えないのかわいそうって言ってた』
何でも買って貰えることは自慢かもしれないが、後半は慰めの言葉だろう。しかし普段から自慢を言っているのなら嫌味とも取れる。そしてココロにとって両親の話題は繊細な事で、もしかしたらそれで傷ついたのかもしれない。
『あの、もしもココロちゃんがウチに来たり何か分かったらご連絡します』
「よろしくお願いします」
通話を切りスマートフォンの画面を苦虫を噛み潰したような顔で睨みつけて、そして深く呼吸をしてから帰路へ。
自宅へ戻りつつ義父に連絡をしてみると近所の人に聞き込みをしてくれているようだ。亜希子も自宅近所の人に聞き込みをしてみる。ほとんどの人は知らないとの事だったが、近所でも仲の良い伊藤から目撃情報があった。
「家から出てくる時に挨拶しましたよ。確か……十五時半くらいかな?」
「クックも一緒でしたか?」
「ケージを持ってたから一緒だったと思いますよ」
「どこに出掛けるか聞いてないですか?」
「そこまでは聞いてないな~。でもなんだか急いでるみたいな、素っ気ない感じだったような気はしますね」
「そうですか……ありがとうございます」
「早く見つかるといいですね」
伊藤に会釈し、亜希子は帰宅する。
その数分後に帰ってきた義父と情報を整理することにした。
「ああ、お帰り。お疲れ様」
「お義父さんもいつも掃除や太郎丸の散歩ありがとうございます」
時刻は18時半を過ぎた頃に亜希子は帰宅した。
今日のメイクもばっちり仕上がっており、仕事が終わった時間でも全く崩れていない。
外出着から室内着へ着替えその上からエプロンを身に着ける。仕事を終えた後は夕飯の支度に取り掛かる。
「ココロの手伝いも上達してきたかな」
「ええまあ。簡単なことから教えてますし、それなりに出来るようになりましたね」
「そうか。今日も教えるなら声をかけて来ようか。二階から足音も聞こえないし、さっきここから呼んでも返事が無かったから、もしかしたら寝てるかもしれない」
「じゃあ私が様子見て来ます」
義父が立とうとするのを手で制し、それからリビングを出て階段を上がっていく。
コンコンコン
「ココロちゃん、入ってもいいかしら」
ココロの部屋の扉をノックし部屋にいても聞こえるくらいの大きさで声を掛ける。しかし返答は無い。
「入るわよ」
ガチャ
室内にココロの姿は見当たらない。トイレに行ってるのかもしれないと考えてトイレもノックして声を掛けたがやはり返事は無かった。またココロの部屋に入り中をぐるりと見渡す。
「……クックもいない。亮一と出掛けてるのかしら」
夫はその時の思いつきでふらっと出掛ける事がザラにある。もしかしたらとスマートフォンを取り出してメールが届いてないかチェックをしてみるが、メールボックスの中はダイレクトメールのみだった。
そもそも今日夫は仕事で、自分よりも遅く帰ってくるはずなのだから夫が連れ出す可能性は低い。
ーーランドセルは置いてあるから帰ってはいる。でもクックがケージごといない……鞄は……リュックサックはあるけど、ショルダーバッグが無いわ
クローゼットの中を調べて無くなっている物を導き出すと胸騒ぎがする。亜希子は血相を変えて足早に一階に降りてリビングに戻る。
「お義父さん、ココロちゃんとクックがいません」
「いない? でも今はもう……」
壁掛けの時計に目をやると門限はとっくに過ぎている時間である。
「ココロちゃんがどこに出掛けたのかご存知ですか」
「いいや、ココロが学校から帰って来る前に太郎丸と散歩に出てしまって朝きり会ってないんだよ。メモを残しておいたから返事が書かれてないかな」
テーブルの上に置かれているメモをすかさず摑み見てみるが、義父が書いたであろう文字しか書かれていない。どこかに別のメモがないかテーブルの上や床中を探してみるがそれらしいものは見つからなかった。
「またあの公園で遊んでるのかしら……少し学校の方を捜して来ます」
「じゃあ私は学校の反対方向を捜してみよう」
手分けして捜索することになり家を出て左右に分かれていく。走って公園や小学校付近を捜し回るが見当たらず、ココロが行きそうな場所も他に見当がつかなかった。雨が降っていて視界が悪く、傘を差す人が疎らにいて捜しづらい。
闇雲に捜しても仕方がない。携帯しているスマートフォンを操作して電話帳を開き、ココロの親友である咲掛宅へ電話を掛けた。通話相手は凛々華の母親だが、近くにいるのか凛々華の声も聞こえる。
「夜分遅くにすみません。ココロはそちらに伺ってないですか」
『いいえ、今日はこちらには来てませんが……どうされました?』
「門限はとっくに過ぎているのに帰ってきてないんです」
『まあ! それは心配ですね……。凛々華も今日はココロちゃんと遊んでないよね?』
『うん。帰りあんまり元気なくてわたしもしんぱいしてたの。マミちゃんのいつものじまんを聞いておちこんでたから』
「自慢?」
『ああ、同じクラスの愛美ちゃんって子が、いつも自慢話をするんですって』
『いろんなもの買ってもらえてしあわせーとか、ココロちゃんにママに会えないのかわいそうって言ってた』
何でも買って貰えることは自慢かもしれないが、後半は慰めの言葉だろう。しかし普段から自慢を言っているのなら嫌味とも取れる。そしてココロにとって両親の話題は繊細な事で、もしかしたらそれで傷ついたのかもしれない。
『あの、もしもココロちゃんがウチに来たり何か分かったらご連絡します』
「よろしくお願いします」
通話を切りスマートフォンの画面を苦虫を噛み潰したような顔で睨みつけて、そして深く呼吸をしてから帰路へ。
自宅へ戻りつつ義父に連絡をしてみると近所の人に聞き込みをしてくれているようだ。亜希子も自宅近所の人に聞き込みをしてみる。ほとんどの人は知らないとの事だったが、近所でも仲の良い伊藤から目撃情報があった。
「家から出てくる時に挨拶しましたよ。確か……十五時半くらいかな?」
「クックも一緒でしたか?」
「ケージを持ってたから一緒だったと思いますよ」
「どこに出掛けるか聞いてないですか?」
「そこまでは聞いてないな~。でもなんだか急いでるみたいな、素っ気ない感じだったような気はしますね」
「そうですか……ありがとうございます」
「早く見つかるといいですね」
伊藤に会釈し、亜希子は帰宅する。
その数分後に帰ってきた義父と情報を整理することにした。
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