超進化ペット!ピヨ 改訂版

朝陽ヨル(月嶺)

文字の大きさ
55 / 85
九話 進化

しおりを挟む
 ガコン 

「あれ? ちっ、なんだよ」 

 仕事が終わり帰宅した亮一。傘を持って行き忘れ服は色が変わる程濡れてしまっている。
 家の門扉は普段この時間なら施錠されており、解錠した気でいたが逆に施錠してしまったようだ。苛立ちを隠さず反射的に舌打ちをしてから改めて鍵を回し解錠して家の中へと入る。 

「ただいまー」 

 玄関で言った所で返事が返って来ないのはいつものことだ。しかし今日は少し様子がおかしい。静かな家庭である筈がそうではない。やたらと足音や話し声が騒がしい。 

「ただいまーってどうしたの? なんかうるさいけど」 

 リビングに入り妻と父親の顔を見て顔をにやにやと綻ばせる。周りがどうだろうと自分のペースを乱されたくない亮一はこれっぽっちも慌てることはない。というよりも何故二人が慌てた様子なのかまだ理解出来ていない。そこらじゅうを歩いている太郎丸の方がよっぽどおとなしい。 

「うるさいわねっ!」
「いやいや、今は亜希子ちゃんの方が絶対うるさいって。そもそもびしょ濡れになった旦那が帰ってきてなんか他に言うこととかやることない?」
「そんなことどうだっていいのよ!」
「どうだってって……」
「亮一、帰って来る途中でココロを見かけなかったか」
「はあ? 見てないけど。何、上にいないの?」 

 ココロに設けられている門限は十八時だが、時刻はもうすぐニ十時になろうとしている。 
 ニヤニヤとした顔がやや引きつる。

「ランドセルは置いてあったんだが……」
「仕事終わって帰って来たらいなくて、学校の方とか捜してもいないし、よく遊んでる咲掛さんのお宅に電話してみたけど、そこにもいないって言うのよ」 

 面倒なことは嫌い。面倒臭いから。ろくでもないことになるだろうと想像出来たから。
 亮次から子供を預かってほしいという話を受けた時、本当は断る気だった。でもあの時の亮次の凄まじい剣幕と、それに混じった哀切な表情を見たら断っちゃいけない気がして了承したんだった。
 自分だって鬼じゃない。でもやっぱり面倒臭い気持ちが強かった。大金も一緒に預かったがそれは生活費や養育費で、この面倒事に支払われる対価なんてほとんど無かった。
 いつかこういうことになるかもしれない。そう考えなかったわけじゃない。しっかりしてるとはいえ相手はまだ七歳の女の子で、不便な範囲でも自由に動き回れる。子供にだってもの凄く嫌なことがあったり、逃げ出したくなったり、どこか遠くに行きたくなったりすることだってある。放っておいてほしい時もあった。自分がそうだったからよく分かる。
 子供の一時的な我儘に振り回されるのはうんざりなどと投げ出したい気持ちがあるのに、父親と妻の態度に段々感化されてしまう。 

「ヤバイじゃん!!」 

 子供の時は分からなかったのに、今は大人になって、親になって、胸がざわつく気持ちが分かってきた。
 妻と父親からこれまでの情報を聞き、亮一もタオルで頭を乱雑に拭きながらうんうんと唸りながら考える。 

「ココロちゃんってケータイ持ってない?」
「持ってないわよ」
「じゃあその愛美って子の家に殴り込み行ったとか?」
「お前じゃあるまいし真面目に考えなさい」
「俺にしては結構真面目に考えてんだけど。つかもう警察に言った方がいいんじゃねーの?」
「でも警察って最低一日経たないと事件性がないとかで動いてくれないんじゃなかった?」
「はあ……マジかよ」 

 仕事から帰ってきたばかりで疲れや空腹状態だからか苛立ちつつ、内心ちょっと面倒くさいだとか放っとけば自ずと帰って来るんじゃないかと淡い期待をしている。しかしそれでも心配する気持ちがないわけではない。そんな複雑な気持ちを抱えている時。 

 ドスンッ!! 

「うおっ!?」
「なに地震!?」 

 何かが落ちてきたのかぶつかったのか大きな音が天井から聞こえ、家がほんの数秒揺れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

処理中です...