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十話 大切なモノ
七
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「今日はありがとうねぇ。いきなりお邪魔して手土産もなんも用意せんで」
「いいえ、またお時間がありましたらお茶でも飲みにいらしてください」
「ココロちゃん、クックさんまたね!」
「うん、またね」
「ハーイ、マタ会イマショウ」
「ならね~」
目的であったクックのお披露目が済み、凛々華と常磐の老婆はココロが病み上がりということで家にいたのは数時間程だった。
二人が帰っていく姿を見送り、見えなくなると家の中へ戻る。
「まさかココロがミドリさんと知り合ってるとは思わなかったな。ところで、どうして常磐のおばあちゃんと呼んでるんだ?」
「ときわに住んでるからそう呼んでって言ってた」
「ああ成程。てっきり名前から連想してるのかと。常磐色は緑色と似ているからな」
「ときわ色なんてあるんだ。じゃあ今度会ったらミドリおばあちゃんって呼ぼうかな。ねえおじいちゃん、クックさんのくびわ、やっぱり返した方がよかったかな? クロ吉さんのだったんだよね?」
「形見は大切な物だが……ミドリさんが使った方がクロ吉も喜ぶと言ってくれたしな。大切に使わせてもらいなさい」
「ワタシ、大切シマス!」
「クックさん……うん、大切にしようね」
クロ吉の思い出が詰まった首輪。今は脚輪となり、これからもっと沢山の思い出を詰め込めるようにしようとココロは決意する。
「そうだ、お前たちに言っておきたいことがあるんだが……」
「んぅ?」
「ナンデショウカ?」
言い淀む祖父にどうしたのかとココロは顔を上げてキョトンとして瞬きを繰り返す。
クックもそわそわと落ち着かない様子で祖父を見つめている。
二つの視線に苦笑しながら祖父は話を切り出す。
「……いや、二度手間になるか。今夜な、伯父さんか伯母さんから大事な話があると思う。少し難しい話かもしれない。だからちゃんと聞いて欲しい」
「わかった」
「ワカリマシタ」
その夜。祖父が言った通り夕食後にいつもより少しだけ引き締めた顔をしている伯父から、大事な話があると言われた。
「ええーっとね、ココロちゃん、今日はどうだった?」
「今日? ふつうだよ」
「あ~その、お友だちがクックさんを見に来たっしょ? どんな反応だった?」
聞かれてその時のことを思い浮かべる。
「びっくりしてた。お話できるのすごいって」
「そう! それ!」
「っ!?」
伯父が人差し指を顔に向けてきた。
驚いて肩を跳ねさせ、向けられた人差し指と伯父の顔を困った顔で見つめ返した。
「あなた、それじゃわからないでしょ。もっと真面目に言って」
「え~~俺こういうの苦手ぇ~~亜希子ちゃんが言ってよ~~」
「甘えた声出さないで気持ち悪い」
「あーっ! またそういうこと言う! 子供の前でそんな言葉言うの教育に悪いんだよ!?」
「あなたの普段のダラダラした態度だって教育に悪いわよ」
「こらこら、話が脱線している」
「すみません……じゃあ私から言うわ」
こほんと咳払いをしてから伯母が話し出す。
「お友だちは驚いてたでしょう? 私たちも初めてクックを見た時は驚いたし、今だって驚くわ。見た目だけじゃなくて、話したり、他にも色んなことが出来るでしょう? もしかしたらね、そんなクックのことを悪く言ってくる人がいるかもしれないのよ」
「どうして?」
「自分が知らないものは間違いだって言う人が世の中に沢山いるから」
「……どういうことか……よくわかんない」
「クックは他のピヨと違うでしょう? 今まで見たことの無い進化形態だから……」
「ワタシは、間違イ、デスカ?」
「そんなことないもんッ!!」
クックの腕に強くしがみつく。頭を横に振り額を押し付けた。頭に血が上り目頭が熱くなってくる。
「クックさんはクックさんだもん!」
「そうよ。私たちも同意見」
「……え?」
顔を上げれば、伯母も伯父も祖父も皆真剣な顔をしている。
「今までにクックみたいなピヨがいないなら、クックが新しい進化形態ってだけの話よ」
「そうそう。オシャレで言う時代の先取りっての? 時代が追いついてないって言うか、他とは違うってカッコイイよ」
「クックは家族だ。何かあったら家族が守ってやらないとな」
「皆サン……! クァァァ……」
「わっ、クックさん!?」
マスクの目の部分から滂沱として涙が流れている。
「ワタシ、感動デス……!」
クックのそんな姿を見たら涙が引っ込んだ。代わりにまた腕を強く抱きしめてやる。
「クックさんはわたしが守るよ。わたしはクックさんの主だもん」
「そうだな。そこで提案なんだが、家族の考えを一つにまとめておこうと思う。もしも近所の人にクックのことを聞かれたら、新しい進化形態であると説明し理解してもらう。それでいいかな?」
「まあ今ん所、目撃したーっての聞かないから、でっかい人が極度の恥ずかしがり屋でニワトリのコスプレしてますって言ってもいいけど」
「無理じゃないかしら……」
「そう? 片言の外国人なんです~って言ったら案外そうなんだ~って受け入れられそうじゃない?」
「新しい進化形態っていうのを否定したくないし、嘘も吐きたくないわ」
「ココロはどうしたい?」
「わたしは…………クックさんがちゃんとしんかしたんだよって言いたい」
「そうか。じゃあ決まりだな」
祖父の微笑と、優しく頭を撫でられてほっとする。
臨時家族会議では《クックのことを聞かれたら新しい進化形態であることを説明する、天海家のことでありプライバシーもあるからとクックのことは他言無用と注意を呼びかけること》が決定した。
その日の日記には、会議で決まったことや今後の想いが綴られる。
「いいえ、またお時間がありましたらお茶でも飲みにいらしてください」
「ココロちゃん、クックさんまたね!」
「うん、またね」
「ハーイ、マタ会イマショウ」
「ならね~」
目的であったクックのお披露目が済み、凛々華と常磐の老婆はココロが病み上がりということで家にいたのは数時間程だった。
二人が帰っていく姿を見送り、見えなくなると家の中へ戻る。
「まさかココロがミドリさんと知り合ってるとは思わなかったな。ところで、どうして常磐のおばあちゃんと呼んでるんだ?」
「ときわに住んでるからそう呼んでって言ってた」
「ああ成程。てっきり名前から連想してるのかと。常磐色は緑色と似ているからな」
「ときわ色なんてあるんだ。じゃあ今度会ったらミドリおばあちゃんって呼ぼうかな。ねえおじいちゃん、クックさんのくびわ、やっぱり返した方がよかったかな? クロ吉さんのだったんだよね?」
「形見は大切な物だが……ミドリさんが使った方がクロ吉も喜ぶと言ってくれたしな。大切に使わせてもらいなさい」
「ワタシ、大切シマス!」
「クックさん……うん、大切にしようね」
クロ吉の思い出が詰まった首輪。今は脚輪となり、これからもっと沢山の思い出を詰め込めるようにしようとココロは決意する。
「そうだ、お前たちに言っておきたいことがあるんだが……」
「んぅ?」
「ナンデショウカ?」
言い淀む祖父にどうしたのかとココロは顔を上げてキョトンとして瞬きを繰り返す。
クックもそわそわと落ち着かない様子で祖父を見つめている。
二つの視線に苦笑しながら祖父は話を切り出す。
「……いや、二度手間になるか。今夜な、伯父さんか伯母さんから大事な話があると思う。少し難しい話かもしれない。だからちゃんと聞いて欲しい」
「わかった」
「ワカリマシタ」
その夜。祖父が言った通り夕食後にいつもより少しだけ引き締めた顔をしている伯父から、大事な話があると言われた。
「ええーっとね、ココロちゃん、今日はどうだった?」
「今日? ふつうだよ」
「あ~その、お友だちがクックさんを見に来たっしょ? どんな反応だった?」
聞かれてその時のことを思い浮かべる。
「びっくりしてた。お話できるのすごいって」
「そう! それ!」
「っ!?」
伯父が人差し指を顔に向けてきた。
驚いて肩を跳ねさせ、向けられた人差し指と伯父の顔を困った顔で見つめ返した。
「あなた、それじゃわからないでしょ。もっと真面目に言って」
「え~~俺こういうの苦手ぇ~~亜希子ちゃんが言ってよ~~」
「甘えた声出さないで気持ち悪い」
「あーっ! またそういうこと言う! 子供の前でそんな言葉言うの教育に悪いんだよ!?」
「あなたの普段のダラダラした態度だって教育に悪いわよ」
「こらこら、話が脱線している」
「すみません……じゃあ私から言うわ」
こほんと咳払いをしてから伯母が話し出す。
「お友だちは驚いてたでしょう? 私たちも初めてクックを見た時は驚いたし、今だって驚くわ。見た目だけじゃなくて、話したり、他にも色んなことが出来るでしょう? もしかしたらね、そんなクックのことを悪く言ってくる人がいるかもしれないのよ」
「どうして?」
「自分が知らないものは間違いだって言う人が世の中に沢山いるから」
「……どういうことか……よくわかんない」
「クックは他のピヨと違うでしょう? 今まで見たことの無い進化形態だから……」
「ワタシは、間違イ、デスカ?」
「そんなことないもんッ!!」
クックの腕に強くしがみつく。頭を横に振り額を押し付けた。頭に血が上り目頭が熱くなってくる。
「クックさんはクックさんだもん!」
「そうよ。私たちも同意見」
「……え?」
顔を上げれば、伯母も伯父も祖父も皆真剣な顔をしている。
「今までにクックみたいなピヨがいないなら、クックが新しい進化形態ってだけの話よ」
「そうそう。オシャレで言う時代の先取りっての? 時代が追いついてないって言うか、他とは違うってカッコイイよ」
「クックは家族だ。何かあったら家族が守ってやらないとな」
「皆サン……! クァァァ……」
「わっ、クックさん!?」
マスクの目の部分から滂沱として涙が流れている。
「ワタシ、感動デス……!」
クックのそんな姿を見たら涙が引っ込んだ。代わりにまた腕を強く抱きしめてやる。
「クックさんはわたしが守るよ。わたしはクックさんの主だもん」
「そうだな。そこで提案なんだが、家族の考えを一つにまとめておこうと思う。もしも近所の人にクックのことを聞かれたら、新しい進化形態であると説明し理解してもらう。それでいいかな?」
「まあ今ん所、目撃したーっての聞かないから、でっかい人が極度の恥ずかしがり屋でニワトリのコスプレしてますって言ってもいいけど」
「無理じゃないかしら……」
「そう? 片言の外国人なんです~って言ったら案外そうなんだ~って受け入れられそうじゃない?」
「新しい進化形態っていうのを否定したくないし、嘘も吐きたくないわ」
「ココロはどうしたい?」
「わたしは…………クックさんがちゃんとしんかしたんだよって言いたい」
「そうか。じゃあ決まりだな」
祖父の微笑と、優しく頭を撫でられてほっとする。
臨時家族会議では《クックのことを聞かれたら新しい進化形態であることを説明する、天海家のことでありプライバシーもあるからとクックのことは他言無用と注意を呼びかけること》が決定した。
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