66 / 85
十一話 夏と水
一
しおりを挟む
天海宅の玄関前に一人の少女が立っている。年齢は二十歳前後、日焼けした小麦色の肌にショートカットの茶髪。荷物でパンパンになっているボストンバッグを肩に掛けていてみるからに重そうだ。
「ただいまー」
扉を開けて元気良くあいさつをし、靴を脱いで玄関から上がる。するとカッカッと何かが擦れるような音が階段の上の方から聞こえ、階段の下へ移動し降りてくる人物を見上げる。否、いたのは人ではなかった。
「ううわああっええええっ!?」
「クアックアアアッ!?」
クックと鉢合わせ互いに驚き大声で叫ぶ。
その声を聞きつけてリビングから一番始めにやってきたのはココロだ。
「クックさん!?」
「クァ~ッ主~」
「ととっトリが喋った!? ……って、は、え? うそ、ココロちゃん!?」
少女はココロを見るなり二度目の驚きを体感している。
遅れて伯母と伯父もリビングからやって来る。
「お帰りなさい」
「お帰りー」
「ただいま……ねえ何でココロちゃんいるの? というかこのでっかいトリなに!? サプライズならココロちゃんだけで十分なんだけど!」
「あれ? メールして………………あ、なかったわ! てへぺろっ」
ぺろっと舌を出す伯父の動作を横で白い目で見る伯母。伯父のことは放っておき少女へ向き直る。
「ココロちゃんは春からうちで預かってるのよ」
「へえー。ビックリしたけど嬉しい!」
「お姉ちゃん、わたしをしってるの?」
「知ってるよ。ココロちゃんは覚えてないかな? よくナッちゃんって呼ばれてたんだけど」
そう言われると頭の中で『ナッちゃん』と反復しじわじわと記憶が整理されてきて、思い出し「あっ!」と声を上げた。
「わかった! 遊んでくれてたお姉ちゃんだ!」
「そうそう。や~久しぶりだよ~」
ドサッと重そうなボストンバッグを床に置きココロを抱きしめる。
ココロも安心した表情をしながら腰に手を回して抱きしめ返した。
少女の名前は夏菜。伯父と伯母の娘である。
「それでさ、あのでっかいトリは!?」
「クックさんだよ」
「クックさん……って名前?」
「ココロちゃんが飼ってるピヨなのよ」
「うそピヨなの!? 可愛くないね!」
「ぷっ……はははっ! 夏菜、直球すぎ!」
「えっ」
顔を上げて伯父に顔を向けた後、再びココロに視線を戻す。
ココロは何とも思ってないような不思議そうな顔をしている。
変わったといえばクックの反応だ。先程までは驚いていたが、今は体を縮こませて体育座りをしながらしょんぼりしている。
「ワタシ可愛クナイデスカ……?」
「可愛くはないわね」
「……ッ!?」
伯母の言葉に一層落ち込みを見せている。
そこで伯父がフォローを入れる。
「筋肉ゴツいしかっこいいからイイじゃん。俺は可愛いのよりクックさんを推すね」
「別に全てが可愛くないわけじゃないのよ? 性格は懐っこいし」
「クックさんのかぶってるのかわいいよ。おしゃべりもよくしてくれるしおもしろい」
三者三様の意見を聞いた夏菜はうんうんと頷いてあたかも納得といった表情を浮かべている。
「なんかよく分かんないけど面白いピヨだね! さっきはいきなり出てきてびっくりしたけど、ピヨって言われるとそうかもって感じするよ」
「おっ、意外とすんなり受け入れてんじゃん」
「ちゃんとトリって言ってるし」
「だって脚なんかめっちゃくちゃトリじゃん。太くてキョーリューみたいだけど。そりゃあ服着てムキムキなトリとか初めて見たけどさ、ピヨってまだよく分かってないトリなんでしょ?」
「まあそうね」
「さすがは俺たちの子供! 当たり前にとらわれないっていうか、臨機応変っていうか、目の付け所が違うよねー」
「あっははは。お父さんなに言ってんのかよく分かんない」
「この人がよく分からないのは前からでしょ」
笑いながら荷物を持ってリビングへ向かっていった夏菜。
夏菜の言葉に返して伯母も一緒にリビングへ戻っていく。
「ウチの女性陣マジヒデー……」
ココロは項垂れる伯父の裾をつかんでくいくいと引っ張り見上げながら一言。
「伯父さんもおもしろいよ」
「……ココロちゃんのそういうとこ、結構好き」
姪のさり気ないその一言が伯父の心にぐっと響いて久しぶりに感動していた。
「ただいまー」
扉を開けて元気良くあいさつをし、靴を脱いで玄関から上がる。するとカッカッと何かが擦れるような音が階段の上の方から聞こえ、階段の下へ移動し降りてくる人物を見上げる。否、いたのは人ではなかった。
「ううわああっええええっ!?」
「クアックアアアッ!?」
クックと鉢合わせ互いに驚き大声で叫ぶ。
その声を聞きつけてリビングから一番始めにやってきたのはココロだ。
「クックさん!?」
「クァ~ッ主~」
「ととっトリが喋った!? ……って、は、え? うそ、ココロちゃん!?」
少女はココロを見るなり二度目の驚きを体感している。
遅れて伯母と伯父もリビングからやって来る。
「お帰りなさい」
「お帰りー」
「ただいま……ねえ何でココロちゃんいるの? というかこのでっかいトリなに!? サプライズならココロちゃんだけで十分なんだけど!」
「あれ? メールして………………あ、なかったわ! てへぺろっ」
ぺろっと舌を出す伯父の動作を横で白い目で見る伯母。伯父のことは放っておき少女へ向き直る。
「ココロちゃんは春からうちで預かってるのよ」
「へえー。ビックリしたけど嬉しい!」
「お姉ちゃん、わたしをしってるの?」
「知ってるよ。ココロちゃんは覚えてないかな? よくナッちゃんって呼ばれてたんだけど」
そう言われると頭の中で『ナッちゃん』と反復しじわじわと記憶が整理されてきて、思い出し「あっ!」と声を上げた。
「わかった! 遊んでくれてたお姉ちゃんだ!」
「そうそう。や~久しぶりだよ~」
ドサッと重そうなボストンバッグを床に置きココロを抱きしめる。
ココロも安心した表情をしながら腰に手を回して抱きしめ返した。
少女の名前は夏菜。伯父と伯母の娘である。
「それでさ、あのでっかいトリは!?」
「クックさんだよ」
「クックさん……って名前?」
「ココロちゃんが飼ってるピヨなのよ」
「うそピヨなの!? 可愛くないね!」
「ぷっ……はははっ! 夏菜、直球すぎ!」
「えっ」
顔を上げて伯父に顔を向けた後、再びココロに視線を戻す。
ココロは何とも思ってないような不思議そうな顔をしている。
変わったといえばクックの反応だ。先程までは驚いていたが、今は体を縮こませて体育座りをしながらしょんぼりしている。
「ワタシ可愛クナイデスカ……?」
「可愛くはないわね」
「……ッ!?」
伯母の言葉に一層落ち込みを見せている。
そこで伯父がフォローを入れる。
「筋肉ゴツいしかっこいいからイイじゃん。俺は可愛いのよりクックさんを推すね」
「別に全てが可愛くないわけじゃないのよ? 性格は懐っこいし」
「クックさんのかぶってるのかわいいよ。おしゃべりもよくしてくれるしおもしろい」
三者三様の意見を聞いた夏菜はうんうんと頷いてあたかも納得といった表情を浮かべている。
「なんかよく分かんないけど面白いピヨだね! さっきはいきなり出てきてびっくりしたけど、ピヨって言われるとそうかもって感じするよ」
「おっ、意外とすんなり受け入れてんじゃん」
「ちゃんとトリって言ってるし」
「だって脚なんかめっちゃくちゃトリじゃん。太くてキョーリューみたいだけど。そりゃあ服着てムキムキなトリとか初めて見たけどさ、ピヨってまだよく分かってないトリなんでしょ?」
「まあそうね」
「さすがは俺たちの子供! 当たり前にとらわれないっていうか、臨機応変っていうか、目の付け所が違うよねー」
「あっははは。お父さんなに言ってんのかよく分かんない」
「この人がよく分からないのは前からでしょ」
笑いながら荷物を持ってリビングへ向かっていった夏菜。
夏菜の言葉に返して伯母も一緒にリビングへ戻っていく。
「ウチの女性陣マジヒデー……」
ココロは項垂れる伯父の裾をつかんでくいくいと引っ張り見上げながら一言。
「伯父さんもおもしろいよ」
「……ココロちゃんのそういうとこ、結構好き」
姪のさり気ないその一言が伯父の心にぐっと響いて久しぶりに感動していた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命
しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」
ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。
唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。
命を救い、
盗賊を退け、
馬車組合と交渉し、
サスペンションとコンテナ規格で街を変える。
レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。
これはチート無双ではない。
仕組みで勝つ物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる