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十一話 夏と水
六
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ステージ下には親子が何組か既に並んでおり、その列の後ろに並ぶ。
「皆さん、ステージの上は滑りやすいので気をつけてくださいね」
前の組についていき階段を昇りステージへ上がる。会場全体が見渡せるステージは熱気に包まれていた。
わあ……水の近くなのにぶわあってあつい……それに……おきゃくさんもたくさんいて、こんなに見られるのはずかしいな……
会場を見回してみるとちらほらと会場を出ていく客はいるがまだ大半は残っている。ココロはがちがちに緊張しながら気にしないように水槽へ目を向けて、滑らないように足へ力を込めている。
「はーい。ではピヨたちを呼びますね」
ピピーッ
飼育員が笛を吹くと水槽内で自由に泳いでいた水型ピヨ三羽が水槽に入ったままステージ脇へ集まった。
「はい、ではハイタッチ~」
前の組から順番にハイタッチをしていく。
ハイタッチをする度に水型ピヨは一度潜り、再び水面へ顔を出している。
水がたのピヨさんってふしぎなお顔……トリさんだけど、ちょっとおサカナさんっぽい。ヒレあるし、大きいし、さわったらかたいのかな? やわらかいのかな?
「次の方どうぞ。お二人ですか?」
「そうでーす。ココロちゃん、滑らないように気をつけるんだよ。フリじゃないからね」
「うん? わかった」
夏菜のフリという言葉の意味はわからなかったが、とにかく滑らないようにゆっくりと慎重に足を前へ出していく。
夏菜も一緒についていき隣で待機する。
「キュウッキュウッ」
「水がたピヨさんたち、こんにちは」
「こんにちはお嬢ちゃん、手を前に出しておいてね」
「はい」
飼育員の言われた通り手を水型ピヨに向けて突き出しておく。
すると横並びしているニ羽が同時に水面近くを尾ビレで水をかき、まるで立ち上がっているように見える。そして胸ビレでそれぞれの水型ピヨがココロと夏菜の手の平に触れた。
「わあっ……! かたかった!」
「意外とがっしりしてたね」
「ありがとうございました~それでは前に進んで、もう一羽にも良かったら触っていってね~」
別の飼育員に誘導されて、待機していたもう一羽の水型ピヨの頭を撫でさせてもらえた。
「キュイキュイ~」
「わっ。なつっこいピヨさんだ」
鳴きながら頭を擦りつけるようにして動く水型ピヨ。
次の人が来るまで存分に触らせてもらい、ステージから降りた後も二人のテンションは高まったままだ。
「濡れてるのにさらさらしてて気持ち良かったね!」
「うん。ネコさんみたいにさらさらしてた」
「そうそう! ネコっぽい!」
「お嬢ちゃんたち楽しんだね~」
「え? って、お父さん何撮ってるのさ!?」
伯父がビデオカメラを向けながら向かって来る。
夏菜は嫌そうな反応をしているが、ココロにとっては嬉しい気持ちになった。
伯父に続いて伯母と祖父もやって来る。どうやらショーをやっている間は座れず立ったまま鑑賞し、ショーが終わった後は会場の出入口付近の席で座りながらビデオカメラを回していたらしい。
「もう勝手に撮らないでよ! 出演料いただきますからね!?」
「はあー? いっちょ前に女優気取りですか。へーへー、なんかうまいもんでも買ってあげますよ」
「よし、交渉成立です」
「なにやってんのよ、おかしな親子ね」
夏菜と伯父で小芝居をしてそれに伯母が笑ってツッコミを入れている。それはとても自然な流れで行われていた。
ーー伯父さんと伯母さん、なっちゃんといるとパパとママって感じ。とっても楽しそう。わたしのパパとママとはぜんぜんちがうけど、家族って感じ……
「パパ……ママ……」
口をついて出てきた言葉は両親のことだった。今は何をしているだろうか、きっと忙しく仕事をしているんだろうと自問自答する。
「ココロ、水型のピヨを触ってどうだった」
祖父から話しかけられたら、考えていたことをやめてさっきまでのことを振り返る。
「あのね、大っきくてかたかったよ。その後に頭さわってみたらやわらかくてサラサラだった。ネコさんみたいだったの」
「ほお、そうか。ネコみたいな触り心地なのか。触れて良かったな」
「うん。ナッちゃんのおかげでさわれた」
「えっ。なんのこと?」
「ナッちゃんがいっしょにいてくれたからさわれたんだよ。だからありがとう」
そう言って軽くお辞儀をするココロを見て、夏菜は目を丸くしながら口元が緩み、やや頬を紅潮させつつココロに抱きついた。
「あ~~もおっ! ココロちゃんかわいすぎー!! やっぱ妹に欲しいっ!! っていうかもう一緒に住んでるし実質妹じゃない!?」
「ナッちゃん、くるしい……」
「あっ、ごめんごめん。嬉しくてつい。嬉しいこと言ってくれたからソフトクリーム食べにいこ! もちろんお父さんのおごりで!」
「へいへい」
イベント会場を出ていき、約束通りソフトクリームを食べ、動線上にある店で土産を物色することとする。入場ゲートで夏菜が話していた通り、友人や自分への土産を大量にカゴへ入れていた。その中にはカゴからはみ出る程の大きさの水型ピヨのぬいぐるみも入っている。
「皆さん、ステージの上は滑りやすいので気をつけてくださいね」
前の組についていき階段を昇りステージへ上がる。会場全体が見渡せるステージは熱気に包まれていた。
わあ……水の近くなのにぶわあってあつい……それに……おきゃくさんもたくさんいて、こんなに見られるのはずかしいな……
会場を見回してみるとちらほらと会場を出ていく客はいるがまだ大半は残っている。ココロはがちがちに緊張しながら気にしないように水槽へ目を向けて、滑らないように足へ力を込めている。
「はーい。ではピヨたちを呼びますね」
ピピーッ
飼育員が笛を吹くと水槽内で自由に泳いでいた水型ピヨ三羽が水槽に入ったままステージ脇へ集まった。
「はい、ではハイタッチ~」
前の組から順番にハイタッチをしていく。
ハイタッチをする度に水型ピヨは一度潜り、再び水面へ顔を出している。
水がたのピヨさんってふしぎなお顔……トリさんだけど、ちょっとおサカナさんっぽい。ヒレあるし、大きいし、さわったらかたいのかな? やわらかいのかな?
「次の方どうぞ。お二人ですか?」
「そうでーす。ココロちゃん、滑らないように気をつけるんだよ。フリじゃないからね」
「うん? わかった」
夏菜のフリという言葉の意味はわからなかったが、とにかく滑らないようにゆっくりと慎重に足を前へ出していく。
夏菜も一緒についていき隣で待機する。
「キュウッキュウッ」
「水がたピヨさんたち、こんにちは」
「こんにちはお嬢ちゃん、手を前に出しておいてね」
「はい」
飼育員の言われた通り手を水型ピヨに向けて突き出しておく。
すると横並びしているニ羽が同時に水面近くを尾ビレで水をかき、まるで立ち上がっているように見える。そして胸ビレでそれぞれの水型ピヨがココロと夏菜の手の平に触れた。
「わあっ……! かたかった!」
「意外とがっしりしてたね」
「ありがとうございました~それでは前に進んで、もう一羽にも良かったら触っていってね~」
別の飼育員に誘導されて、待機していたもう一羽の水型ピヨの頭を撫でさせてもらえた。
「キュイキュイ~」
「わっ。なつっこいピヨさんだ」
鳴きながら頭を擦りつけるようにして動く水型ピヨ。
次の人が来るまで存分に触らせてもらい、ステージから降りた後も二人のテンションは高まったままだ。
「濡れてるのにさらさらしてて気持ち良かったね!」
「うん。ネコさんみたいにさらさらしてた」
「そうそう! ネコっぽい!」
「お嬢ちゃんたち楽しんだね~」
「え? って、お父さん何撮ってるのさ!?」
伯父がビデオカメラを向けながら向かって来る。
夏菜は嫌そうな反応をしているが、ココロにとっては嬉しい気持ちになった。
伯父に続いて伯母と祖父もやって来る。どうやらショーをやっている間は座れず立ったまま鑑賞し、ショーが終わった後は会場の出入口付近の席で座りながらビデオカメラを回していたらしい。
「もう勝手に撮らないでよ! 出演料いただきますからね!?」
「はあー? いっちょ前に女優気取りですか。へーへー、なんかうまいもんでも買ってあげますよ」
「よし、交渉成立です」
「なにやってんのよ、おかしな親子ね」
夏菜と伯父で小芝居をしてそれに伯母が笑ってツッコミを入れている。それはとても自然な流れで行われていた。
ーー伯父さんと伯母さん、なっちゃんといるとパパとママって感じ。とっても楽しそう。わたしのパパとママとはぜんぜんちがうけど、家族って感じ……
「パパ……ママ……」
口をついて出てきた言葉は両親のことだった。今は何をしているだろうか、きっと忙しく仕事をしているんだろうと自問自答する。
「ココロ、水型のピヨを触ってどうだった」
祖父から話しかけられたら、考えていたことをやめてさっきまでのことを振り返る。
「あのね、大っきくてかたかったよ。その後に頭さわってみたらやわらかくてサラサラだった。ネコさんみたいだったの」
「ほお、そうか。ネコみたいな触り心地なのか。触れて良かったな」
「うん。ナッちゃんのおかげでさわれた」
「えっ。なんのこと?」
「ナッちゃんがいっしょにいてくれたからさわれたんだよ。だからありがとう」
そう言って軽くお辞儀をするココロを見て、夏菜は目を丸くしながら口元が緩み、やや頬を紅潮させつつココロに抱きついた。
「あ~~もおっ! ココロちゃんかわいすぎー!! やっぱ妹に欲しいっ!! っていうかもう一緒に住んでるし実質妹じゃない!?」
「ナッちゃん、くるしい……」
「あっ、ごめんごめん。嬉しくてつい。嬉しいこと言ってくれたからソフトクリーム食べにいこ! もちろんお父さんのおごりで!」
「へいへい」
イベント会場を出ていき、約束通りソフトクリームを食べ、動線上にある店で土産を物色することとする。入場ゲートで夏菜が話していた通り、友人や自分への土産を大量にカゴへ入れていた。その中にはカゴからはみ出る程の大きさの水型ピヨのぬいぐるみも入っている。
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