77 / 85
十三話 幼馴染
一
しおりを挟む
夏休みが終わり登校すると、クラス内はガヤガヤと生徒たちが夏休み中の出来事や宿題などの話題で賑わっていた。
ココロは自席へやって来てランドセルを机に置きながら着席する。
隣の席には先に登校してランドセルの中身を出し整え終えた凛々華が座っていた。
「リリカちゃん、おはよう」
「ココロちゃん、おはよう。夏休みあっという間だったね」
「うん。楽しくてあっという間だった」
「もっと夏休みあったらいいのにね」
「そうだね。でもあんまり長いと、毎日ドリルたくさんやらないといけなくなっちゃうよ」
「それはやだなあ~。そうだ、ココロちゃんは自由かだいなにやった?」
自由課題。それは夏休みの宿題であり、その名の通り自由に自分の課題を見つけて学習するというものだ。
ランドセルから教科書や筆箱を机の引き出しにしまい、その中から一冊ノートを取り出して凛々華に見せる。
「絵日記やったよ」
毎日クックの成長記録を書くついでに絵日記も書いていた。内容はクックの記録と重なる部分もあるが、日常と加えて絵を描いている。絵のほとんどは生き物よりも、食材や調理器具、完成した料理である。
「伯母さんにりょうり教えてもらったのわすれないようにしようと思って、絵もかいたらわかりやすいかなって」
「わあっ、それいいねー!」
「リリカちゃんはなにやったの?」
「わたしは本がすきだから、読書感そう文を書いたよ」
凛々華も机の引き出しからホチキス留めした原稿用紙の束を取り出して見せてくれる。
「ネズミのコックさんって絵本楽しかったよ。ほかのどうぶつよりも小さくて、ほうちょうとかやさいとかもてないのにね、キッチンに色んなしかけを作って、トントントーンってしかけがうごいてりょうりが出来ちゃうんだよ」
「へえ~おもしろそうだね」
「あとね、絵がない本も読んでみたの。文のイミがわからない時もあるんだけど、何回もよんでみたらわかるようになったんだよ。一回目で気づかなかったことが、二回目、三回目で気づいたりしてね、だから本ってすんごく楽しいの!」
本の話をしている時の凛々華は本当に楽しそうだ。物語に引き込まれて自分が主人公になったみたいに、嬉しいことや悲しいことも感じられると話している感受性の豊かさ。
ーーわたしもリリカちゃんみたいに、すんごく大すきってもの見つけられるかな……いつか見つけたいな
凛々華と話し続けていると一人の女子生徒がやってきて話しかけられる。
「ねーねー、ココロちゃんたちは夏休みにお出かけした?」
「わたしはプールに行ったよ」
「あっ、わたしは海に行った!」
「わたしはどうぶつ園に行ったよ。ピヨさんのショー見てきた」
「えっ! それってテレビでやってたところ?」
「いいなぁ」
夏菜が帰ってきて誕生日会をしたこと、のっぺらぼうを見たこと、ピヨショーを見て水型ピヨに触ったことなど、夏休みの思い出はココロにとってかけがえのないもので、楽しいと思えることがたくさんあった。今まで友だちが少なかった反動なのか、それらを友だちにたくさん話したくて仕方がない。
しかし教室の扉が開かれて担任の島が入ってくると話は中断され、他の生徒も一斉に着席しにいく。
もっと話したかったなぁ。……あれ……?
島の後ろを一人の男子生徒がついてきている。
ココロは目を見開いた。その男子生徒の顔がとても見覚えがあったからだ。
クラスの生徒たちはヒソヒソと『だれ?』『てん校生?』というような話し声が広がっている。不穏な様子ではなく、声色からしてむしろ歓迎ムードである。
島はパンパンと二回手のひらを叩き生徒たちの注意を引く。
「はーい、静かにしてくださいね。転校生を紹介します」
島は黒板の中央に白いチョークで転校生のであろう名前を書いていく。黒板の上下いっぱいに縦に大きく書かれた漢字は小学二年生には難しく、すぐ横にふりがなを振ってくれる。
「はい、安藤 弐士騎くんです。弐士騎くんは夏休み中にこちらに引っ越してきました。弐士騎くん、一言あいさつお願いします」
皆の視線が一斉に紹介された男子生徒へ向いた。
緊張しているのか不機嫌なのか仏頂面で「アンドウ ニシキ、よろしく」と本当に一言だけのあいさつをした。
大きく無造作に跳ねた黒髪、キリッと吊り上がった三白眼、頬や膝小僧に絆創膏を貼っているところを見るとやんちゃな性格なのかもしれない。
「よろしくお願いします。席は……この真ん中の列の一番後ろに行きましょうか」
島が示した席へ移動していく弐士騎。するとしっかりココロと目が合った。弐士騎の顔はまたたく間に喜色が表れる。
「ココロ! おまえここにてん校してたのかよ!?」
「ニシキも……」
「弐士騎くん、ココロちゃんとお友だち?」
「前、家がきんじょだった」
「そうなの。嬉しいのは分かるけど、とりあえず席に座りましょうね」
島に諭されて言われた席に着く。
ココロはなんとなく気恥ずかしくて、姿勢を屈ませて凛々華の影に隠れていた。
ココロは自席へやって来てランドセルを机に置きながら着席する。
隣の席には先に登校してランドセルの中身を出し整え終えた凛々華が座っていた。
「リリカちゃん、おはよう」
「ココロちゃん、おはよう。夏休みあっという間だったね」
「うん。楽しくてあっという間だった」
「もっと夏休みあったらいいのにね」
「そうだね。でもあんまり長いと、毎日ドリルたくさんやらないといけなくなっちゃうよ」
「それはやだなあ~。そうだ、ココロちゃんは自由かだいなにやった?」
自由課題。それは夏休みの宿題であり、その名の通り自由に自分の課題を見つけて学習するというものだ。
ランドセルから教科書や筆箱を机の引き出しにしまい、その中から一冊ノートを取り出して凛々華に見せる。
「絵日記やったよ」
毎日クックの成長記録を書くついでに絵日記も書いていた。内容はクックの記録と重なる部分もあるが、日常と加えて絵を描いている。絵のほとんどは生き物よりも、食材や調理器具、完成した料理である。
「伯母さんにりょうり教えてもらったのわすれないようにしようと思って、絵もかいたらわかりやすいかなって」
「わあっ、それいいねー!」
「リリカちゃんはなにやったの?」
「わたしは本がすきだから、読書感そう文を書いたよ」
凛々華も机の引き出しからホチキス留めした原稿用紙の束を取り出して見せてくれる。
「ネズミのコックさんって絵本楽しかったよ。ほかのどうぶつよりも小さくて、ほうちょうとかやさいとかもてないのにね、キッチンに色んなしかけを作って、トントントーンってしかけがうごいてりょうりが出来ちゃうんだよ」
「へえ~おもしろそうだね」
「あとね、絵がない本も読んでみたの。文のイミがわからない時もあるんだけど、何回もよんでみたらわかるようになったんだよ。一回目で気づかなかったことが、二回目、三回目で気づいたりしてね、だから本ってすんごく楽しいの!」
本の話をしている時の凛々華は本当に楽しそうだ。物語に引き込まれて自分が主人公になったみたいに、嬉しいことや悲しいことも感じられると話している感受性の豊かさ。
ーーわたしもリリカちゃんみたいに、すんごく大すきってもの見つけられるかな……いつか見つけたいな
凛々華と話し続けていると一人の女子生徒がやってきて話しかけられる。
「ねーねー、ココロちゃんたちは夏休みにお出かけした?」
「わたしはプールに行ったよ」
「あっ、わたしは海に行った!」
「わたしはどうぶつ園に行ったよ。ピヨさんのショー見てきた」
「えっ! それってテレビでやってたところ?」
「いいなぁ」
夏菜が帰ってきて誕生日会をしたこと、のっぺらぼうを見たこと、ピヨショーを見て水型ピヨに触ったことなど、夏休みの思い出はココロにとってかけがえのないもので、楽しいと思えることがたくさんあった。今まで友だちが少なかった反動なのか、それらを友だちにたくさん話したくて仕方がない。
しかし教室の扉が開かれて担任の島が入ってくると話は中断され、他の生徒も一斉に着席しにいく。
もっと話したかったなぁ。……あれ……?
島の後ろを一人の男子生徒がついてきている。
ココロは目を見開いた。その男子生徒の顔がとても見覚えがあったからだ。
クラスの生徒たちはヒソヒソと『だれ?』『てん校生?』というような話し声が広がっている。不穏な様子ではなく、声色からしてむしろ歓迎ムードである。
島はパンパンと二回手のひらを叩き生徒たちの注意を引く。
「はーい、静かにしてくださいね。転校生を紹介します」
島は黒板の中央に白いチョークで転校生のであろう名前を書いていく。黒板の上下いっぱいに縦に大きく書かれた漢字は小学二年生には難しく、すぐ横にふりがなを振ってくれる。
「はい、安藤 弐士騎くんです。弐士騎くんは夏休み中にこちらに引っ越してきました。弐士騎くん、一言あいさつお願いします」
皆の視線が一斉に紹介された男子生徒へ向いた。
緊張しているのか不機嫌なのか仏頂面で「アンドウ ニシキ、よろしく」と本当に一言だけのあいさつをした。
大きく無造作に跳ねた黒髪、キリッと吊り上がった三白眼、頬や膝小僧に絆創膏を貼っているところを見るとやんちゃな性格なのかもしれない。
「よろしくお願いします。席は……この真ん中の列の一番後ろに行きましょうか」
島が示した席へ移動していく弐士騎。するとしっかりココロと目が合った。弐士騎の顔はまたたく間に喜色が表れる。
「ココロ! おまえここにてん校してたのかよ!?」
「ニシキも……」
「弐士騎くん、ココロちゃんとお友だち?」
「前、家がきんじょだった」
「そうなの。嬉しいのは分かるけど、とりあえず席に座りましょうね」
島に諭されて言われた席に着く。
ココロはなんとなく気恥ずかしくて、姿勢を屈ませて凛々華の影に隠れていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる