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付き合ってから
初めてのデート
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「ローラン、明日辺りアルとデート行ってこいよ」
「うぇっ!?」
Chirpでいつものようにサンドイッチとカフェオレを注文して食べていたら、バックヤードから出てきたグルにそんなことを言われ、ローランは驚いて素っ頓狂な声を上げた。
他に客はおらず、仁がいないタイミングを見計らってのことだろう。明日は店の定休日でローランも休みだ。
「……あ、そっか。グルさんは知ってるんスよね。付き合ってるの」
「もどかしいったらねぇよ。やっとくっついたかって一安心したぜ。オレがキューピットになってやったお蔭だな」
「こんな髭面なキューピット嫌っス」
「髭面言うな!」
「あイテッ」
茶化して言ってみたら軽く頭を叩かれた。
ローランは叩かれた箇所を手で抑えて茶目っ気たっぷりに笑っている。
「……で、だ。アイツと服でも買ってこい」
「ショッピングデートか~、いいスね。でもなんで服?」
「アイツの私服見たこと無いのか?」
「それが無いんスよ! ここでしか会ったことないから見てみたいけど、なんか問題あるんスか?」
「問題ありまくりだよダセェんだよ」
「ふぅん? まあ見て判断するけど。そう言ってるグルさんはどうなんスか? なんかスゲーキメてそう」
「アルよかマシだろうよ。アイツの服何着かはオレが選んでやったしな」
「親友の特権ズルい」
「ズルくねぇよ。服選びの特権くらいやるっての」
長い間親友なのだから服の買い物くらい一緒にするだろうが、それをわかっていてもついむくれてしまう。
「なんの話?」
丁度時間は十五時で休憩時間となり、出入口付近を掃き掃除して扉に『CLOSE』の札を掛けて仁が戻ってきた。
「仁さん、明日って空いてますか!?」
「え、うん、予定は入れてないけど……どうしたの?」
勢い良く迫ってくるローランに気圧されながら仁は頷き、そして問いかけるとローランは元気よく答えた。
「買い物行きたいです! 二人きりで!」
恋愛に臆病になっていたローランだが、付き合うことになった嬉しさと、帰国の焦りが混ざり合って積極性が増している。
「いいね、買い物。もしかしてどこに行きたいか決まってる?」
「いくつか候補はあるので明日一緒に決めましょ」
「うん、了解」
「へへっ、やった。じゃあ俺、今日はもう帰ります。精算いいスか」
「もう帰るの? もっとゆっくりしていってもいいのに」
「明日の準備したいんで。だからゆっくり休憩してください」
「わかった。あとでメールするよ」
「はい! 楽しみにしてます!」
「僕も楽しみにしてる」
会計を済ませたローランは、手をぶんぶんと大きく振って機嫌良く店を出ていった。
「おーおーはしゃいでやんの」
「ああいうところ可愛いよね」
「それは本人に言ってやれ。茹でダコみてえになって喜ぶだろうよ」
閉店の時間から数分後、仁からのメールが届く。
『十一時に待ち合わせをして、どこかでランチをして、その後に買い物行くのはどうかな』
ローランはそのメールを見て湧き上がってくる嬉しさを噛み締め、顔全体が緩みまくっている。
「えへへっ、仁さんからメール……へへ。こんな嬉しいならもっと早くにアドレス交換しとけば良かったな。えーっと行きたい場所は……と」
帰ってリサーチした買い物したい店の名前やURLを貼り付け、待ち合わせ場所をどこにするかなどのやり取りをする。そして待ち合わせ場所は互いに共通してわかるChirpに決まった。
「仁さんと初デート……か。楽しみだな~! 服はどれ着ようかな? あんまりキメ過ぎても変だし、ここは無難な感じに……」
初デートで浮かれるローラン。クローゼットの服やアクセサリーを取り出して見ているだけでワクワクとしてくる。
ーー付き合うまでに一回もデートしたこと無いなんて変だよな。店では何回も会ってたのに。でもこれからどんどん誘っていくんだ! それで頑張って距離を縮めていく!
「よし、これに決めた!」
明日の服装が決まりハンガーにひとまとめにしておく。
コンコンコン
「あ、はい」
「ローラン、今いいか?」
「はい! 今開けます!」
声の主がアルスだとわかり急いで扉を開ける。アルスの手には何枚かの書類があり差し出された。
「この書類にサインを頼む。あとアルカイドと合わせて少し意見を聞きたい。共有スペースに来てもらえるか?」
「了解ス」
書類を受け取り部屋から出ていく。
ペンション内は拠点であり職場でもある。個人の部屋はあるが常に守るべき要人がひとつ屋根の下で暮らしている。打ち解けている仲とはいえ緊張しないわけではない。居心地が悪いわけではないが、ほんの少しだけ窮屈にも感じていた。だからローランには心が休まる場所が、癒やされる場所が必要だった。
ーー明日はめいっぱい仁さんと楽しむんだ……!
翌日。待ち合わせ時間十分前にChirpに到着し、仁にそのことをメールする。
すると直ぐに店の裏口から仁が出てきた。
「ローラン君、おはよう」
「おはようございます」
「今日も暑いね」
「暑いスねー。ちゃちゃっと涼しい所行ってランチにしましょっか」
季節は夏真っ只中。
ローランは開襟シャツにロング丈タンクトップ、ロールアップパンツにスエードローファー、アンクレットにトートバッグといった爽やかなコーディネートだ。
一方、仁はと言うと。
「にしても……仁さんの格好ちょっと暑そうっスね」
「実はちょっと」
夏だというのに青系デニムジャケットを羽織り、中のTシャツは鮮やかな赤。黒ジーンズに白のスニーカー。
ーー一つ一つのアイテムはいいのに色が散らかってる……夏だしサマージャケットとかならいいけどデニムはなあ……。せっかく背高くてスタイルいいのに
「ジャケット脱いできます? インナーだけでもいいけど、薄手のシャツを羽織るとか」
「そうだね……じゃあ着替えてくるよ。待たせてごめんね」
「これくらいいいスよ」
Chirpの前で待ち三分程で仁は戻ってきた。そんなに早いのも、仁が暮らしているのは店の二階だからだ。
「どうかな?」
「あー……え~と……うーん」
ローランは正直に微妙な反応を示して苦笑いをしている。
着てきたのは赤と黒のチェックシャツ。赤Tシャツに被って違和感がある。
ーー赤好きなのかな?
「そうだ、ちょっと上のチェックだけ脱いでもらっていいスか?」
「あ、うん」
そう言われて脱ぐと、ローランはそのチェックシャツを仁の腰に巻いて結んでやる。
「ええっ! 腰に巻くの!?」
「腰に境界線作ると上下のコントラストが弱くなって少し色合いが優しい感じになるんスよ。上が白Tで、黒の靴とかならさっきのデニムジャケットも合うと思いますよ」
「へえ~カラーバランスって難しいね」
「ははは。じゃあ行きましょっか」
服装が決まり改めて目的地へ向かうことにした。
「仁さんは赤が好きなんスか?」
「特別赤が好きってわけじゃないよ。どっちかと言ったらグリーンとかブルー系が好きかな」
「えっ。そうなんスか?」
「これはグルが『男なら赤で攻めろ』とか言うから買ったんだよ」
「じゃあこのシャツはグルさんの趣味ってことなんスね……」
ーーグルさんならなんとなく赤似合いそうだけど、仁さんには赤じゃないよなあ
「昨日グルに何か言われた?」
「え~っと…………はい」
「やっぱり。キミが帰ってからやたらとオシャレしていけとか、デートなんだからちゃんとしろとか口うるさく言ってきたから」
「あはは……」
その光景が目に浮かびまた苦笑いしてしまう。
仁も迷惑と言わんばかりに眉根を寄せている。
「まあでも、今日服を見に行こうって思えたのはグルさんが提案してくれたお蔭なんで、せっかくだから良さげな服買いましょう!」
「そうだね」
目的の洋服店付近まで来ると先にランチを済ませる為、近場のカフェに入った。
――デートといったらオシャレなカフェってイメージで入ってきちゃったけど、仁さんもカフェの……しかも店長だし! うわ、選択ミスったかな……
「仁さん」
「ん?」
「カフェでよかったスか? その、なんていうか、仁さんもカフェを経営してる人だし、ライバルみたいなもんじゃないスか。だからよくなかったかなって」
「カフェはよく来るよ。カフェの雰囲気が好きだし、勉強にもなるからね。気を遣ってくれてありがとう」
「やっ、あの、大丈夫ならよかったです!」
ーーそういえばこういう普通のデートって久し振りだ。まだ女の子とデートしてた時とかこんな風にカフェ行ったりショッピングしたりしてたっけ。恋人が男相手になってからは……
「なに頼む?」
「えっ? ああっ、え~っと……どうしようかな……」
ぼんやりとしていて我に返りメニューを開く。待たせたら悪いと思い、すぐに目についたものを指さしながらメニューを見せた。
「ホットドッグとコーラにしようかな」
「じゃあ僕もコーラにしようかな。あとハンバーガー」
ローランはぽかんとしている。仁が注文している姿を眺めながら。
注文して店員がはけていくと、仁はローランと目を合わせてにっこりと微笑んだ。
「意外だなって思った?」
「そう……かも。いつもカフェモカ飲んでて、オシャレな感じの食べてそうっていうか、こういうジャンクフード食べなそうだなって思ってたからなんか不思議で」
「父親の故郷がジャンクフード大国でよく行ってたからたまに食べたくなるんだよ」
「へえ~。仁さんハーフですもんね」
「クォーターだよ」
「クォーター!? でもグルさんが」
「ははは、グルは適当なところがあるからね」
ーーはあ……グルさん頼みで仁さんのこと色々聞いてたから情報がこんがらがりそう。よし、これからは直接本人に聞く!
「どこの国のクォーターなんスか?」
「父親がアメリカで、母親がドイツと日本のハーフだから、僕はドイツと日本のクォーターでアメリカのハーフってことになるかな」
「ややこしいスね……」
「僕も説明しててよくわからなくなるよ」
それからローランと仁はお互いのことを質問し合った。客と店員の関係では今まで聞きたいことがあったのに遠慮して聞けなかった。しかし今は恋人同士。もっと互いの深い部分も知りたいと思うのは当然のことだろう。母国のことや仕事の話、家ではどんな過ごし方をしてるか、どんなものが好きかなど。届いたジャンクフードを食べながら話に花を咲かせた。
「うぇっ!?」
Chirpでいつものようにサンドイッチとカフェオレを注文して食べていたら、バックヤードから出てきたグルにそんなことを言われ、ローランは驚いて素っ頓狂な声を上げた。
他に客はおらず、仁がいないタイミングを見計らってのことだろう。明日は店の定休日でローランも休みだ。
「……あ、そっか。グルさんは知ってるんスよね。付き合ってるの」
「もどかしいったらねぇよ。やっとくっついたかって一安心したぜ。オレがキューピットになってやったお蔭だな」
「こんな髭面なキューピット嫌っス」
「髭面言うな!」
「あイテッ」
茶化して言ってみたら軽く頭を叩かれた。
ローランは叩かれた箇所を手で抑えて茶目っ気たっぷりに笑っている。
「……で、だ。アイツと服でも買ってこい」
「ショッピングデートか~、いいスね。でもなんで服?」
「アイツの私服見たこと無いのか?」
「それが無いんスよ! ここでしか会ったことないから見てみたいけど、なんか問題あるんスか?」
「問題ありまくりだよダセェんだよ」
「ふぅん? まあ見て判断するけど。そう言ってるグルさんはどうなんスか? なんかスゲーキメてそう」
「アルよかマシだろうよ。アイツの服何着かはオレが選んでやったしな」
「親友の特権ズルい」
「ズルくねぇよ。服選びの特権くらいやるっての」
長い間親友なのだから服の買い物くらい一緒にするだろうが、それをわかっていてもついむくれてしまう。
「なんの話?」
丁度時間は十五時で休憩時間となり、出入口付近を掃き掃除して扉に『CLOSE』の札を掛けて仁が戻ってきた。
「仁さん、明日って空いてますか!?」
「え、うん、予定は入れてないけど……どうしたの?」
勢い良く迫ってくるローランに気圧されながら仁は頷き、そして問いかけるとローランは元気よく答えた。
「買い物行きたいです! 二人きりで!」
恋愛に臆病になっていたローランだが、付き合うことになった嬉しさと、帰国の焦りが混ざり合って積極性が増している。
「いいね、買い物。もしかしてどこに行きたいか決まってる?」
「いくつか候補はあるので明日一緒に決めましょ」
「うん、了解」
「へへっ、やった。じゃあ俺、今日はもう帰ります。精算いいスか」
「もう帰るの? もっとゆっくりしていってもいいのに」
「明日の準備したいんで。だからゆっくり休憩してください」
「わかった。あとでメールするよ」
「はい! 楽しみにしてます!」
「僕も楽しみにしてる」
会計を済ませたローランは、手をぶんぶんと大きく振って機嫌良く店を出ていった。
「おーおーはしゃいでやんの」
「ああいうところ可愛いよね」
「それは本人に言ってやれ。茹でダコみてえになって喜ぶだろうよ」
閉店の時間から数分後、仁からのメールが届く。
『十一時に待ち合わせをして、どこかでランチをして、その後に買い物行くのはどうかな』
ローランはそのメールを見て湧き上がってくる嬉しさを噛み締め、顔全体が緩みまくっている。
「えへへっ、仁さんからメール……へへ。こんな嬉しいならもっと早くにアドレス交換しとけば良かったな。えーっと行きたい場所は……と」
帰ってリサーチした買い物したい店の名前やURLを貼り付け、待ち合わせ場所をどこにするかなどのやり取りをする。そして待ち合わせ場所は互いに共通してわかるChirpに決まった。
「仁さんと初デート……か。楽しみだな~! 服はどれ着ようかな? あんまりキメ過ぎても変だし、ここは無難な感じに……」
初デートで浮かれるローラン。クローゼットの服やアクセサリーを取り出して見ているだけでワクワクとしてくる。
ーー付き合うまでに一回もデートしたこと無いなんて変だよな。店では何回も会ってたのに。でもこれからどんどん誘っていくんだ! それで頑張って距離を縮めていく!
「よし、これに決めた!」
明日の服装が決まりハンガーにひとまとめにしておく。
コンコンコン
「あ、はい」
「ローラン、今いいか?」
「はい! 今開けます!」
声の主がアルスだとわかり急いで扉を開ける。アルスの手には何枚かの書類があり差し出された。
「この書類にサインを頼む。あとアルカイドと合わせて少し意見を聞きたい。共有スペースに来てもらえるか?」
「了解ス」
書類を受け取り部屋から出ていく。
ペンション内は拠点であり職場でもある。個人の部屋はあるが常に守るべき要人がひとつ屋根の下で暮らしている。打ち解けている仲とはいえ緊張しないわけではない。居心地が悪いわけではないが、ほんの少しだけ窮屈にも感じていた。だからローランには心が休まる場所が、癒やされる場所が必要だった。
ーー明日はめいっぱい仁さんと楽しむんだ……!
翌日。待ち合わせ時間十分前にChirpに到着し、仁にそのことをメールする。
すると直ぐに店の裏口から仁が出てきた。
「ローラン君、おはよう」
「おはようございます」
「今日も暑いね」
「暑いスねー。ちゃちゃっと涼しい所行ってランチにしましょっか」
季節は夏真っ只中。
ローランは開襟シャツにロング丈タンクトップ、ロールアップパンツにスエードローファー、アンクレットにトートバッグといった爽やかなコーディネートだ。
一方、仁はと言うと。
「にしても……仁さんの格好ちょっと暑そうっスね」
「実はちょっと」
夏だというのに青系デニムジャケットを羽織り、中のTシャツは鮮やかな赤。黒ジーンズに白のスニーカー。
ーー一つ一つのアイテムはいいのに色が散らかってる……夏だしサマージャケットとかならいいけどデニムはなあ……。せっかく背高くてスタイルいいのに
「ジャケット脱いできます? インナーだけでもいいけど、薄手のシャツを羽織るとか」
「そうだね……じゃあ着替えてくるよ。待たせてごめんね」
「これくらいいいスよ」
Chirpの前で待ち三分程で仁は戻ってきた。そんなに早いのも、仁が暮らしているのは店の二階だからだ。
「どうかな?」
「あー……え~と……うーん」
ローランは正直に微妙な反応を示して苦笑いをしている。
着てきたのは赤と黒のチェックシャツ。赤Tシャツに被って違和感がある。
ーー赤好きなのかな?
「そうだ、ちょっと上のチェックだけ脱いでもらっていいスか?」
「あ、うん」
そう言われて脱ぐと、ローランはそのチェックシャツを仁の腰に巻いて結んでやる。
「ええっ! 腰に巻くの!?」
「腰に境界線作ると上下のコントラストが弱くなって少し色合いが優しい感じになるんスよ。上が白Tで、黒の靴とかならさっきのデニムジャケットも合うと思いますよ」
「へえ~カラーバランスって難しいね」
「ははは。じゃあ行きましょっか」
服装が決まり改めて目的地へ向かうことにした。
「仁さんは赤が好きなんスか?」
「特別赤が好きってわけじゃないよ。どっちかと言ったらグリーンとかブルー系が好きかな」
「えっ。そうなんスか?」
「これはグルが『男なら赤で攻めろ』とか言うから買ったんだよ」
「じゃあこのシャツはグルさんの趣味ってことなんスね……」
ーーグルさんならなんとなく赤似合いそうだけど、仁さんには赤じゃないよなあ
「昨日グルに何か言われた?」
「え~っと…………はい」
「やっぱり。キミが帰ってからやたらとオシャレしていけとか、デートなんだからちゃんとしろとか口うるさく言ってきたから」
「あはは……」
その光景が目に浮かびまた苦笑いしてしまう。
仁も迷惑と言わんばかりに眉根を寄せている。
「まあでも、今日服を見に行こうって思えたのはグルさんが提案してくれたお蔭なんで、せっかくだから良さげな服買いましょう!」
「そうだね」
目的の洋服店付近まで来ると先にランチを済ませる為、近場のカフェに入った。
――デートといったらオシャレなカフェってイメージで入ってきちゃったけど、仁さんもカフェの……しかも店長だし! うわ、選択ミスったかな……
「仁さん」
「ん?」
「カフェでよかったスか? その、なんていうか、仁さんもカフェを経営してる人だし、ライバルみたいなもんじゃないスか。だからよくなかったかなって」
「カフェはよく来るよ。カフェの雰囲気が好きだし、勉強にもなるからね。気を遣ってくれてありがとう」
「やっ、あの、大丈夫ならよかったです!」
ーーそういえばこういう普通のデートって久し振りだ。まだ女の子とデートしてた時とかこんな風にカフェ行ったりショッピングしたりしてたっけ。恋人が男相手になってからは……
「なに頼む?」
「えっ? ああっ、え~っと……どうしようかな……」
ぼんやりとしていて我に返りメニューを開く。待たせたら悪いと思い、すぐに目についたものを指さしながらメニューを見せた。
「ホットドッグとコーラにしようかな」
「じゃあ僕もコーラにしようかな。あとハンバーガー」
ローランはぽかんとしている。仁が注文している姿を眺めながら。
注文して店員がはけていくと、仁はローランと目を合わせてにっこりと微笑んだ。
「意外だなって思った?」
「そう……かも。いつもカフェモカ飲んでて、オシャレな感じの食べてそうっていうか、こういうジャンクフード食べなそうだなって思ってたからなんか不思議で」
「父親の故郷がジャンクフード大国でよく行ってたからたまに食べたくなるんだよ」
「へえ~。仁さんハーフですもんね」
「クォーターだよ」
「クォーター!? でもグルさんが」
「ははは、グルは適当なところがあるからね」
ーーはあ……グルさん頼みで仁さんのこと色々聞いてたから情報がこんがらがりそう。よし、これからは直接本人に聞く!
「どこの国のクォーターなんスか?」
「父親がアメリカで、母親がドイツと日本のハーフだから、僕はドイツと日本のクォーターでアメリカのハーフってことになるかな」
「ややこしいスね……」
「僕も説明しててよくわからなくなるよ」
それからローランと仁はお互いのことを質問し合った。客と店員の関係では今まで聞きたいことがあったのに遠慮して聞けなかった。しかし今は恋人同士。もっと互いの深い部分も知りたいと思うのは当然のことだろう。母国のことや仕事の話、家ではどんな過ごし方をしてるか、どんなものが好きかなど。届いたジャンクフードを食べながら話に花を咲かせた。
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