お姉様に夢中なはずなのにその他の誘惑が多すぎます

那須野 紺

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二宮冴子と松浦美咲(真帆SIDE)

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二宮冴子という受付の美人女子が秘書課へ異動してくるという話があった時、前評判は「見掛け倒しだろう」というものだった。
何故微妙に悪意の入った前評判が立ったのか、根拠はわからない。

そして彼女の指導役を私が担当する事となり、本人は知らないだろうが他部署あたりでは私たちは「秘書課の姉妹コンビ」などとも言われているそうである。
私と彼女の共通項なんて、見た目的にちょっと落ち着いていそうに見えるぐらいしか思い浮かばないけれど、ともすると私同様に彼女にもちょっかいを出そうとする人の多い事には、奇しくも親近感を覚えてしまった。

もう一つ、私は長く松浦美咲という女性企画部長の担当をしている。
彼女には不思議な魅力があって、しかも安易に私との距離を詰めてこようとはしない。
悟られないようにごく自然に接してくるが、そこだけは強い意識のようなものを感じさせるふしがあった。

そんな彼女に対して私は、そこはかとなく好意を抱いていたから、一定以上に距離を詰めようとしない彼女に対してもどかしく、そして憧れのような感情を持って接してきた。

静かに、だができる限り深い所まで彼女を観察していく中で、ある時以降彼女の鎧のようなものが微妙にはがれかけているような、そんな気がする瞬間がある事を私は察知していた。
彼女をこんな風にさせた張本人は誰なんだろうかと考えてみるが、思い当たる人物はいない。

そんな疑念があの二宮冴子の異動直前、偶然参加した壮行会で確証へと変わる事になる。
私は、多分彼女らはどこかで深く繋がっているのだろうと直感した。

松浦部長のその感じはよくわかる。
だが冴子ちゃんはどうだろう。

皆が憧れる女性を落としたにも関わらず、そんな素振りはみじんも感じさせない。
それを隠すのが上手いのか、彼女なりにものすごく努力しているのかはわからないが、構造的にはむしろ松浦部長が彼女にはまっているのか、と思えるぐらいの雰囲気さえ感じてしまうのだ。

知らない誰かが言っているらしい、私と冴子ちゃんが姉妹のようであるという話。
誰かと深く繋がっていても、それをおくびにも出さずにいられる所なんかは、もしかすると私とそっくりかもしれないと思った。

付き合っている側からしたらさぞかし不安だろう。
何しろ強烈に深く繋がっていても、アブノーマルな行為に興じても、しれっとした顔で日常を過ごし、何なら「なくてもいい」ような態度すら取れてしまう相手なのだから、自分以外とも同様か、あるいはそれ以上の行為を重ねていたとしても気付く事はないというのが理論上はっきりしているからだ。

亜里沙がちょっとアブノーマルな行為を好むのも、きっと私を相手に選んだからだろうと思っている。
私に人並み以上の恥ずかしい思いをさせて、独占欲を満たそうとしているのかもしれない。
だから私も、アブノーマルな行為を許しているのは亜里沙だけ、と伝えて亜里沙に安心してもらおうと努めている。

…それでもきっと、心から安心はできていないんだろうけど、せめてその時だけは、と思うのだ。

冴子ちゃんもおそらく、ストライクゾーン自体は非常に広いだろう。
けれども自分の指向性というものもあるはずで、行為を受け入れられるという事と、その行為が好きであるというのは別の話なのだが、そこを誤解されやすいタイプなのだろうなと私は読んでいた。

ましてやあの松浦部長に身体を差し出して、結果おいしく食べられてしまったわけだから、本人的にも混乱はしているだろうが、本質を理解できているだろうか…怪しい気がする。

松浦部長という人は、据え膳ならば何にでも手を出すようなタイプの女性ではない。
いらなければいらないとはっきり拒否できるはずだし、何にでも飛びつくのは品がないと思うタイプだろう。
むしろ何を食べたいと思うのか教えてくれとねだっても、興味のない相手にはヒントすら与えないのではないか。

冴子ちゃんは松浦部長に「選ばれた」人間なのだが、果たしてその自覚はあるのだろうか。

冴子ちゃん自身は据え膳なら何でもというタイプなのだろうから、そうでない人の事は理解できないかもしれない。
「貴女とは違う」と突き放されて当然の人間が急に拾われて良い思いをさせてもらているのだから、そんな付き合いは夢か幻か、ぐらいに思っていたりして。

そういう現実感のなさが、彼女のああいう飄々とした態度の背景にあるかもしれないのだ。
いよいよ松浦部長本人が直々に冴子ちゃんをランチに連れ出すといった実力行使に出るあたりは、もはや冴子ちゃんとの関係を他人に隠す気などないというのを物語っている。

…そうなんだよな。
松浦部長は最初から、あえて言わないまでも隠す事はしていないのだ。
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