お姉様に夢中なはずなのにその他の誘惑が多すぎます

那須野 紺

文字の大きさ
51 / 71

浮気相手志願(美咲SIDE)

しおりを挟む
旅行から帰って企画部の皆にお土産を配っていると、「あ~沖縄ですか?いいなあ」とか「ゆっくりできましたか?」とか色々と声をかけられた。
好みが分かれるだろうけど、数の都合でお土産はチンスコーにした。

それから休みの間に貯まっていたメールを一通りチェックしたが、思いのほか数が多くてげんなりする。
大半は一度目を通せばいいような内容のものだったけど、一つ不可解なメールが届いており、私は慎重にそれを開いた。

差出人は「真下みすず」、この社の営業部課長とあるが、正直顔は思い出せない。
社内なのに何故メールなんだろうと思って中身を読んでみると、要は呼び出しのメールのようだった。

「お休み中の所申し訳ございません」と始まっており、真下みすずは今日の業務時間後に社の近隣にあるカフェに来て欲しいと書いているのだ。

業務上の用件ではないはずで、そうなるとプライベートな用件になるのだろうが、あまりにも内容が不可解なので私は「では打合せスペースを取りますので」と返す。
正直、いきなり業務時間外に二人きり…かどうかはわからないが、会う用事はこちらにはない。
だからパブリックな打合せとしてなら話は聞いてやるという意味合いでメールを返した。

「承知しました」という返信があり、私は業務時間内の30分だけをそれに当てる事にする。
わざと、グループウェアのスケジュール機能を使ってこの打合せは誰からでも確認できる予定として登録した。

しばらくして秘書課の夏川さんが私の所へやって来る。
冴子は違うお土産を配っているはずなので、彼女にチンスコーを「どうぞ」と渡すと、「ありがとうございます」と笑顔が返って来た。

「松浦部長…ちょっと宜しいでしょうか」
「…何?」

人に聞かれたくない話のようで、私たちはフリーの打合せスペースへと移動する。
オープンスペースではあるものの、隣のブースに人がいなければ比較的秘密の用件も話せない事はない場所だ。

「急きょ、入れていらっしゃる営業部の真下課長とのお打合せですが…」
「あー、それ見たのね」
「…その、どういう案件でのお打合せなんでしょうか」
「…業務の打合せ、って訳じゃないの、なんかプライベートで二人で会いたいみたいなメールが来てたから、とりあえずそういう形にして本人とも合意してる」
「…なるほど」

夏川さんの表情は暗い。

「何か問題だった?」
「いえ、ご判断は適切だと思います」
「でもそれだけじゃなさそうな雰囲気だけど」
「…あの、近頃急に噂が立っている、松浦部長の役員就任話なんですけど、どうもその噂を流しているのが真下課長のようだという、これまた噂なのですが…そういう話がありまして」
「…なんで真下さんがそんな噂を流すのよ」
「わかりません、でも…個人的なメールが届いたという事でしたら、繋がる部分はあるのかなと思います」

そこまで話して彼女はじっと私の瞳を見つめてくる。

「悪意、ではないんだろうけど…多分」
「でも、何が目的なのかは判然としませんし」
「とりあえず話だけ聞いてみるのは、問題ないでしょ」
「はい、それで良いと思います」
「…その微妙な情報も、参考にする。ありがとう」
「いえ、失礼しました」

そこにいた事がまるで幻であったかのように彼女はすっと立ち去った。
彼女なりに最大限配慮したのだろう。真下みすずとの打ち合わせ前に私が夏川さんと会議室へ消えたという情報自体を、できる限り人の印象に残したくないという意向が伺えたし、それ自体はありがたい。

真下みすずとの打ち合わせは16時に設定している。
とにかく私には何の心当たりもないし、何より真下みすずという課長の事はよく知らない。
顔と名前が一致しない、それぐらいの知らなさ加減である。

「あ、そうだ」

デスクに居るだろうか、と思いながらもアポなしで開発部へお邪魔した。
部員諸氏が「えっ」という顔でこちらを見ているけれど、気にせず目的の人物のデスクへ歩を進める。

「袴田部長、ちょっと宜しいですか」
「……今ですか?」
「そう、今」

最後の所は元上司と部下の間柄から、その頃みたいな言い方になってしまった。
袴田は相変わらず開発部に来てからも、私への好意を皆に言いふらしている。
だから私が急に直接彼を呼び出した事で、本人どころか部下の方が騒ぎ出す勢いだった。

「部長!健闘を祈ります」「頑張ってください」という訳のわからない声援と、それから「あ、○○とのアポは俺たちで対応しときますんで!ごゆっくり」などと言う異常な後押しに対して袴田は「いいから、仕事して」と慌てている。

私は先ほど夏川さんと使ったのと同じスペースへ彼を誘導した。
部かが騒いで迷惑をかけたと思っているのか、袴田は「すみませんでした」と顔を赤くして謝罪してくる。

「まあ、それは良いから」

私が椅子にかけると、彼も緊急事態である事はおおよそ察しがついているらしく「どうかしましたか」と神妙な面持ちで尋ねてきた。

「確か企画部へ来る前、貴方営業部だったわよね」
「はい、そうでしたが」
「…真下課長と、親しくしてる?」
「いえ、知っている程度です…彼女がどうかしましたか、あまりにも意外な名前で驚いてますけど」
「どういう人なのか、わかる範囲でいいから教えて欲しいんだけど」
「……場所、変えませんか」
「わかった」

私たちは社外へ出て、人の多くないカフェに入る。
周囲に社の人間がいない事を確かめつつ、仮に現れた場合もすぐに確認できるような位置の席を選んだ。

「彼女から、急に呼び出しがあったのよ」
「…業務外でですか?」
「そう」
「……」

袴田はいきなり黙り込んでしまった。それから「うーん」とうなってばかりいる。

「…と言うかその呼び出しって、断ってないんですか」
「断らなかった、業務時間内の打合せとして今日16時にセッティングしてる」
「マジですか…」
「何、用件に心当たりがあるの?夏川さんからは私の役員就任の噂を撒いているのが彼女じゃないかって聞いてるけど」
「……まあとりあえず、俺が知ってる範囲でどういう人物かはお教えしますか」
「お願い」

オーダーを取られる前にもうそこまで話をしている。
ようやく店員が来たので、それぞれホットコーヒーを頼んだ。

「真下課長は、俺が営業部を抜けた後でそのまま俺のいた課長の席に収まった人です」
「うん」
「確か30代前半で俺より社歴は長いし、バリバリの営業って感じの女性です、とにかく仕事はできる、純粋に営業に関して言えば俺なんかよりはるかに優れてます」
「貴方に対してはどういう感じだった?」
「別に、普通だと思いますが…俺が今みたいにその、貴女の事を言い出す前の事だし、現状どうかとなると正直わかりませんが」
「…野心はある人?」
「…ない訳じゃないでしょうけど、それだけという感じはしないです。まあ営業部だから全員それっぽい空気で、多少強くても紛れてしまう感はありますけど」
「プライベートは?」

つい矢継ぎ早に尋ねてしまう。だが袴田は一切嫌がる事もなく答えてくれた。

「そこまでは…ただ、男っ気は皆無でした、少なくとも営業部で彼女の恋人について知る人間はいなかったように思います」
「…なるほど」

こういう場合、相手の目的は概ね2つに絞られるだろう。
異動や昇進を目論んでその為に私に接触したいのか、そうでなければ個人的な恋愛感情があるとかないとか、そういう事のように思われる。
後者だった場合、私に対しての好意があるのか、それとも冴子や袴田に対しての好意があって、敵として私を見ているのか、それは可能性が分かれてくるけれど。

「仮に彼女が噂のソースだったとして、目的は何だと思う?」
「うーん…何でしょうかね」

それは袴田に聞いてもわかる事ではないだろう。わかっていても念の為聞いた。
それからもう一つ重要な事柄について尋ねてみる。

「…推測で構わないけど、彼女女性愛者だと思う?」
「あー……可能性はあると思います」

そうなると微妙だ。二人で話をするのは危険な気がする。
袴田も同じように思ったのか、目を見開いて私の顔を見ていた。

「知ってるかもしれないわね、それなら」
「おそらく間違いないでしょう、はっきり言って目立ってますから」
「あ…そうなんだ」
「当たり前でしょ、その指輪ですよ?わからない方が間抜けです」
「……」

あれ以来私は冴子とのお揃いデザインの指輪を毎日着けている。今日もそうだ。
…そこまで目立っていたとは思わず、私はにわかに心がざわついた。

「お待たせしました」と、本当はそうではないのだろうけど急にコーヒーが出された気がして、私は焦ってカップを大きく鳴らしてしまうし、袴田はそんな必要がないのにコーヒーを急いで一口すすっている。

仮に真下みすずが女性愛者だった場合、そして私か冴子に何らかの好意を抱いていた場合は、ほぼ間違いなく私と冴子の関係性をわかっているだろう。
そこからの役員就任内定の噂…となると、何なんだろうか。

「まあ、ここまでかな」
「それより、大丈夫なんですか?」
「何が」
「二人で話なんかするの…何言われるかわかんないですよ」
「でも聞くしかないでしょ」
「だから聞かない選択肢をなんで選ばないんですか」

若干声が大きくなった事に気付いた袴田ははっとして声をひそめる。
しかしその表情は真剣そのもので、例え私が「彼氏面しないでよ」と怒り出そうとも引かない勢いだ。

「…そっちの方が、不意を突かれる可能性があるから?かな」
「……」
「別に殺されやしないでしょ」
「…もう、なんでそんなにあっけらかんとしていられるんですか、俺無理です」

何だ、「無理」とは。理解できないという事だろうか。

「それに彼女にだって立場があるわけだから、とんでもない事を言い出したりはしないでしょ」
「どうですかね、俺は断言できません」
「わかった…とにかくありがとう」

せっかく出されたのだからと思って私はコーヒーに口を付ける。
袴田は、一度躊躇してからぼそりと呟いた。

「だから俺にしとけば良かったんですよ」
「うるさいなぁ、もう」

どうせそう言われるだろうと思っていたのか、彼のリアクションは薄い。
それから彼は一瞬すごく心配そうな顔をしたけれど、気を取り直して明るく付け加える。

「あの、まだ有効ですからね?…困った時には彼氏でも婚約者でも、どうとでもお使いください」
「そういう事言ってると罰が当たるわよ」

これは袴田なりの気遣いだろう。軽口で会話を終わらせようとしてくれているのだ。
会計は袴田が持ってくれると言うので甘える事にする。

「あ、そうだ…まだお土産のチンスコーあるけど、いる?」
「いらないっすよ、なんで思い人とライバルの旅行の土産もらわなくちゃいけないんですか、そんなの喜んで受け取るほど俺はお人好しじゃないですって」
「あ、そっか、ごめん」
「…大丈夫です、それより俺は戻った後部下に何と話せば場を落ち着ける事ができるかを考えないといけないので」
「それは自分がまいた種でしょ」
「まあ、そうです」
「…じゃ私は先に戻るから、お疲れ」
「お疲れ様です」

二人で一緒にではなく別々に戻るのは暗黙の了解として、確認せずともそうなった。

企画部に戻り改めて休暇中に貯まった書類の方にも目を通したり捺印したりしながら、色々な可能性を考える。

真下みすずはどこまでの情報を持っているのだろうか。
自宅の場所は既に知られているだろうか、そこに冴子と暮らしている事も、知っているのだろうか。
同伴出勤や退勤をしているので、その気になれば…いやならなくとも、同棲に気付く可能性が高い。
それはそれで良い。どうせ皆知っている事だ。それにそうする事で余計な期待を持たせないように周囲を牽制する意味合いもあった。

…それでも何か言ってくるという事は、この相手は一筋縄ではいかない気がする。

*-*-*-*-*-

16時前になり私は会議室へと歩を進める。
携帯のボイスレコーダーを回すか一瞬悩んだが、やめた。
廊下を歩いていると、何故か会議室までの途中に冴子が立っている。

「何してるの?」

何でもないように声をかけたけど、多分真下みすずとの打ち合わせの件に気付いたか、もしくは夏川さんから事情を聞いたのかもしれない。

「……」

この場を真下本人に目撃されたくないし、冴子一人の所に行き合わせたくもない。だから冴子には来て欲しくなかったのだが。

「大丈夫だから、戻りなさい」
「…はい」

冴子自身も、ここにいて何があるわけでもないというのは理解しているはずだけど、気持ち的にじっとしていられなかったのだろう。
私の言葉に頷き、冴子は静かに下がっていった。

会議室には先に真下みすずが待ち構えていた。
扉をノックして中に入ると、小柄な前下がりのボブヘアが目に入る。色はブルーアッシュだろうか、営業の女性にしては重い色だなと思った。

面識はないはずなので、とりあえず名乗る事にする。

「企画部の松浦です」

相手は社内だ、椅子を勧められるより前に私は腰を下ろす。
さすがに営業部の課長だけあって席は上座を空けており、私が入室した瞬間は勢いよく立ち上がって、そのままじっと立ち尽くしている。
自分から名乗るべき所を私に先を越されたので動揺しているようだが、どうも様子がおかしい。

椅子に座ってからようやく、私は真下みすずの顔をまともに見た。
彼女の顔は硬直しており、しばらく黙っていたかと思うと突然「営業部一課、課長の真下みすずと申します、この度は突然にぶしつけなメールを送ってしまい、申し訳ございませんでした」とすごい勢いで頭を下げてきた。
その勢いに思わず私も固まってしまう。

「あの…」

すっきりと「頭を上げて」とも言えずに私がそれだけ言うと、真下みすずは探るようにじりじりと頭を上げていった。

「失礼、します」

そう言いながら自分で椅子を引き、おずおずと腰掛ける。
顔は真っ赤だが、小さい顔にバランス良くパーツが並んでいて、正直ルックスは悪くはない。そこもさすがに営業女子らしいと思った。

小柄な所為かおそらく、30代前半の実年齢よりはだいぶ若く見えるし、言われなければ管理職にも見えない。それをカバーする為だと思われるが、服装はかなりラフな感じに見えるような演出を施していた。
鎖骨が見えるぐらいに開きの広い黒のインナーに明るい色のジャケット、下はあえて上と色を揃えずにインナーと同じ黒の膝下丈スカートを合わせていて、わざと崩した感じで着こなしている。
だがそんな風に見せていても清潔感は失われていない。

「…それで、私にどういったご用件なんでしょうか」

あまり真面目になり過ぎないような口調で言った。
…見るからに真下みすずは緊張しているからだ。

「その…」

私が営業部の部長なら「しっかり相手の目を見て話しをしろ」とどやしつけたくなるぐらい、真下みすずは目線を下げたままこちらを見ようともしない。
私は嘆息して彼女が何を言い出すのか待った。

「お時間、ご存知でしょうけど30分です」
「…はい」

真下みすずは意を決したようにやっと語り出す。
そもそも自分から私を呼びだしておいて、なかなか話は始まらないし、まるで私が彼女に頼んで話をしてもらっているみたいではないかと苛立ちを覚え始めた所での事だ。

「申し上げたい事としては、二つです」
「はい」
「一つ目は、おそらくお耳に入っているでしょうが、松浦部長が次期役員に選出されるのではないかという噂、あれを流したのは私です…でも」
「…はい?」
「良かれと思ってしたつもりでしたが、大いにご迷惑だったと後で知りまして、お詫び申し上げます」
「…あー、大迷惑よ、それは」

厳しい言葉は覚悟していたのだろうが、それでも真下みすずは首をすくめた。
…これで本当に営業部、しかも一課の課長なのだろうかと思うほど、真下みすずはおどおどして見える。

「申し訳ございませんっ」

机に顔面が張り付く勢いで頭を下げている。

「…で、もう一つとは?」
「はい…その、非常に申し上げにくいのですが」
「……?」
「秘書課の二宮さんとお付き合いされているのは知っています、知った上でお願いしたいのですが」

嫌な予感がする。いや、嫌な予感しかしないと言うべきか。

「……お願い、ですか?」
「はい、その、私ともお付き合いしていただけないかと…」

…これか。頭がぐらっとする。
何故、業務時間中に会議室でマジ告白されなければならないのか。

「…申し訳ないけど、それはここで話す事ではないように思います」
「…はい」
「それに、やっぱり…わかってると思うけど、こんな非常識なやり方で言われても、お付き合いはできません」
「…浮気相手でも、ですか」
「…え?」
「遊びでも構いません、二宮さんに飽きた時だけでも構わないです」

二股上等と言うわけか。仮に認めたとして、それでもこんな場所で話すような内容ではない事には変わりない。

「……なんで、そうまでして私なの」

突き放すべきと思ったが、それだけは聞いておきたかった。
袴田同様、彼女も簡単には諦めてくれそうにない気がしたから。

私の質問に、むしろ真下みすず本人が不思議そうな顔をしている。

「変な事聞いてる?私」
「いえ…いや、答えとしては、変だと私は思っていますが」
「何故?」
「どれだけたくさんの人が貴女に憧れているか、近づきたいと思っているか、ご存知ないようなので」
「……」
「私の他にも度々このような呼び出しやいきなり告白されるなどは茶飯事なのではないかと、思っているのですが」

…どれだけ思い込みが激しいのだ、この娘は。
そんなの過去に一度もない。ましてや女性からのガチ告白などこれが初めてだと言うのに。

「…一応お答えしておきますけど、そういう事はないです」
「…ないんですか?!一度も?…ええっ」

今度は極端に引いてるし。全く色々忙しい。

「何、大勢のうちの一人だとでも思ってたワケ?」
つい口調がくだけてしまうがもう良いだろう。

「…そうです」
「全然、超悪目立ち中よ、貴女」
「…す、すみませんでした」
「営業一課の課長ともあろう貴女がねえ…困ったものだわ」
「…それは、あの…二宮さんとお付き合いされている事が最近わかって、それで松浦部長は女性とでもお付き合いする人なんだとわかってしまったら、その」
「……」
「出直してきます」
「そうして」

そうやって会議室を出ようとしたらちょうど30分が経過した所だった。
意識していたのかどうかは知らないが、そこもさすがと言うべきか、営業部の管理職らしいと思う。ただ大前提として打合せの趣旨が私用なのでかなり間違っているのだけれど。

びっくりするほどの素早さで真下みすずは姿を消した。
それをどこかからチェックしていたのか、真下みすずとは鉢合わせしないように入れ違いで夏川さんと袴田が現れる。

「大丈夫でしたか?」と夏川さんに尋ねられてつい「大丈夫じゃないかもしれない」と答えてしまった。
「ほらやっぱり」と袴田は半分怒ったように言う。

「ちょっと、廊下で騒がないでよ」
焦って私が袴田に言うと、「すみません」と袴田は声をひそめた。

「昔の同僚だからか知らないけど、ほとんど貴方と同じような感じで諦めてくれそうにない、それだけ」
「……」

袴田は露骨にショックそうな顔をしているが、実際似たようなものなのだから仕方ない。
ただ一つ違うのは、袴田はあくまでも本命としての付き合いを望んでいるのに対して、真下みすずは浮気相手志願なのである。

…冴子にやられた事が今度は自分の方に回ってきたのだろうか、という因果を感じるけれど、今後真下みすずがどう出てくるのかは全くわからない。

だいたいどこでどう私を知ってそこまで思い込み激しく好意を抱くようになったのかも謎だ。
覚えていないだけで彼女と何かあっただろうかと、打合せの時から考えていても思い当たる所はなかった。

…真下みすずが陰湿だったりして、冴子に対して何もしなければ良いんだけど。
もしそこを引き合いに出されるような事があれば、私は不本意ながら真下みすずの要求を呑まなければならなくなるかもしれないと思った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

世界に、私たちだけ

結城らい
恋愛
バニーガールのレイカとミヤコ。いつものナイトクラブの夜――のはずが、ふたり以外の“全員”が消えてしまった。誰もいない店内、誰も走っていない街。怖いのに、どこか解放されてしまう。見られない自由の中で、ふたりは静かに、確かめ合うように抱きしめ合う。けれど未来は空白のまま。それでも今夜だけは、ネオンの下で、この愛の時間を味わっていたい。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...