お姉様に夢中なはずなのにその他の誘惑が多すぎます

那須野 紺

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エーデルワイスの雌蕊(友紀SIDE)

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エーデルワイスという花がある。
小学校の音楽の授業ではみんなが教わって歌ったり演奏したりする、曲の題名としても有名だ。
ドイツ語では「気高い」「白」という言葉をくっつけてエーデルワイスと言うらしい。

私にとって真下課長のイメージは正にその、エーデルワイスに通じるものがあると感じる。
気高い白、そして花言葉の一つは「純潔」なのだそうで、それもそのまま真下課長のイメージにぴったりだ。
柔らかい土や湿った場所ではなく、乾燥した石灰岩の上に生えるという所も、過酷な環境で可憐に咲いた花のような真下課長のイメージにふさわしい。

冴子とデパートで買い物した時真っ白なスーツに目がいったのも、そんな「白」をイメージさせる真下課長の真似がしたくて、自分も白が似合うような女でありたいという願望からついつい買ってしまったのだけれど。

だがそのスーツがツキを呼んでくれるのか、あれを着て商談に臨むと面白いように契約が決まり、あれよあれよと今月の売上トップは信じられない事だけど私が取ってしまったのだ。

一部の女性陣からは妬みも買ったけれど、幸い課も違うし助かっている。
真下課長はこの日が来るのを当然の事のように受け止めていて、笑顔で「おめでとう」と声をかけてくれた上、それが当たり前の事であると言わんばかりにお祝いの食事をご馳走させて、と申し出てきた。

それは私がトップだったからという訳ではなくて、月の成績トップを取った人にはいつも、真下課長がランチなり夕食なりをご馳走してくれる、そういう事になっているのだけれど、その時は当然例の真っ白な勝負スーツで行く気満々だった私に、真下課長は前日「明日は白は止めておいた方がいい」などと忠告してきた。

「どうしてですか?」と問い返すと、真下課長はその食事の行き先が高級ステーキ店だから、と言う。
なるほどそういう事情で気遣った上での言葉なのかと私は納得しつつも、真下課長と二人きりで食事なのにあれを着られないのかと少しがっかりしてしまった。

真下課長は女性の中でもだいぶ小柄な方に入る。
身体は小さいし細い。顔も小さいし、耳も鼻も口も小さいけど、目だけは大きくてぱっちりとしている。
化粧をしていなければかなり幼く見えてしまうような、そんな無垢な見た目を持つ人だ。

営業部男子の面々も真下課長の事は役職こそ意識しているものの、きっと「可愛い人」という風に見るのが多数派であろう。
初めて一緒に外回りへ行った時に、その身体で持ち上げられるのかというぐらいに重たそうなバッグを、いとも簡単に肩に掛けてすたすたと歩いていたのが今でも忘れられない。

デスクトップパソコンの画面を割と高い位置にするのが好みらしく、デスクに座った状態だと、ディスプレイに隠れてしまって真下課長が座っているのかいないのか、わからないのもご愛敬である。

そのうちに、外回りでは私が部下だからというのもあり、商談用の資料は勿論私が持つにしても、できる限り真下課長の荷物も私が持ち運ぶようになった。
特に仕事用のノートパソコンを預かって運ぶようになった時、何だかすごく真下課長の信頼を勝ち取る事ができたような気がして誇らしく思えた。

私が何度も目をぱちぱちと瞬いて月計の売上ランクを見ていた時、真下課長からは「売る人は最初から売るものだ」というような事を言われた。
真下課長もそうだったんですか、と聞いてみると何でもない事のようにそうだと頷く。

「だから自信を持ってこれからも頑張ってね」と励まされ、私は嬉しさのあまり涙が出そうになった。

…ところが、である。
私の中にはもう一つ、別の感情が渦巻いているわけで。

冴子が言った、あの言葉。

『真下課長は超がつくほどエッチだよ』

その言葉は私の頭にずっとこびりついている。
…真相はどうなのかわからないし、確かめる術もない。

だけど真下課長だっていい年の女性なのだ。人並みの性経験はあってしかるべきだし、バイタリティに溢れる人なのだからそこそこ、旺盛でも別に不思議はない。

…でも。
私自身に問題がある。性経験は人よりはちょっと少ないだろうけど、なにしろセックスで気持ちいいと思う事などこれまで一度もなかった。
あればあったで、なければないで別にどちらでも良い程度なのである。
それに女性との経験は皆無だ。だからますます何もわからない。

その昔、まだ袴田部長が営業部にいた頃には、当時一課課長の袴田さんと、課長補佐だった真下さんはお似合いだという噂も立ったそうである。
だが二人は互いにそれをきっぱり否定し、実際何ともならなかった。
それが後になって二人して松浦部長狙いに変わってしまったのだから面白い。

更に言えばその二人を蹴落として松浦部長の恋人のポジションを射止めたのは、なんと私の親友の冴子なのだから、これまた痛快と言えばそうなるのだけど。
結果袴田部長は諦めないという選択を、真下課長は微妙に諦める方向への選択をしようとしている。

松浦部長と付き合って、最初の頃こそ迷いもあったろうけど、冴子はいい意味で変わったと思う。
以前に比べればとっつきにくさは多少和らいだ気もするけれど、その所為なのか以前より更にフェロモン度がアップしているので、本人としては色々妙な声かけに合っているかもしれない。

もう一つ、直に二人のプライベートを垣間見て思ったのは、そんな冴子を思う松浦部長の方が、冴子に惚れているという事だ。
だから女の魅力がアップしていく冴子を嬉しく思いつつも、内心気が気ではない感じがけっこうわかりやすく、そして冴子がそれに気づいていない感じがものすごく可笑しかった。

冴子本人がどう思っているかは知らないけれど、あの二人の関係性において主導権を握っているのは間違いなく冴子の方だと思う。少なくとも今に関してはそうだと断言できる。

とは言え冴子本人が豪語する通り、冴子の性的なセンサーは割と適格だし、相手が冴子だと皆そこをあけすけにしてしまうのか、冴子にのみわかる何かがあるらしい。

…そう言えば、とにかく真下課長を10階のトイレに連れて行けと、冴子が言ってたっけ。
長引いている残業の手を止めて、ふとそんな事を思い出した。

私は、営業の仕事にあたり売れる、売れないを問わず一つでも多くの取引先と繋がり密に連絡を取る事を信条としている。
はじめのうちは手間ばかりかかったけれど、一度情報をさらってしまえば後は差分の補完程度の情報交換で良く、先方が欲しい時にちょうど良い提案ができるようになった。

ただその分私が抱える取引先の件数は、他の課員よりだいぶ多い。
時々は商談の準備にかなり時間や手間がかかってしまい、こうして残業になる事もあるのだ。

…明日は真下課長とステーキディナーだ。深井話はその時にすればいい。
だけど営業部のメンバーが一人、また一人と退勤し結局今このフロアには私と真下課長の二人しかいなくなっている。

10階のトイレ、その事が気になり思うように準備がはかどらない。
エーデルワイスも生きている植物であって、雌蕊があるのだろう、きっと。

瞬間、あの時は冴子にはぐらかされたけれどもそのトイレで何があったのか、ビジョンのようにわかった気がした。
根拠はないが何故か確証がある。

私の脳裏に浮かんだビジョンは、そのトイレの個室にこもってはしたなく両脚を開き、自身の雌蕊を指で撫でさする真下課長の絵だった。
冴子もそれをもろに見てはいないまでも、それに類する事があったと踏んでいるからこそ、あれだけ過激な言葉で真下課長を評したのではないか。

単に自分自身のいやらしい行為を目撃されただけなら、真下課長本人の特性について言及できないからだ。

「……」

額に手を置きそのまま肘をデスクにつく。
いつもの通り真下課長の姿はディスプレイの向こう側にあるから、私のこの仕草には気付かれないと思ったのだけれど、どうやら小さく溜め息が漏れたらしく真下課長がこちらに向かってきた。

「佐藤さん今日も遅いみたいだけど、大丈夫?」
「…は、はい」

真下課長の白いスカートとブラウスが目に入る。ジャケットだけが黒だ。
背が低い事を気にしているからか、真下課長は丈の長いスカートを好んで履くのだけれど、その白い末広がりの生地の向こう側にある雌蕊の存在が変に意識されて、目が泳いでしまう。

「大丈夫?ちょっと疲れてるんじゃない?」
「…そうかもしれません」

実際誰がどう見ても私は挙動不審だろうから、むやみに否定するのは辞めた。

「明日も食事で遅くなるし、早めに帰った方がいいわよ」

自分だってとんでもなく働きまくってるくせに何を言うのかと心の中だけで毒づいてしまうが、それを顔には出せない。
松浦部長に振られてからというもの、真下課長は明らかに仕事に撃ち込んでいる感じが顕著になっていた。

「……」

返す言葉もなく口をもごもごとさせていると、真下課長は「佐藤さん、実家だったよね?」と尋ねてくる。
「はい」とだけ答えると、真下課長もまた口をもごもごさせて何か言おうとして黙るような素振りを見せた。

妹の晴香は、モデルやデザインの仕事で稼ぎがあるからなどと言いさっさと一人暮らしを始めてしまっているが、そうなると私はどうしようか、少し悩んでいる所だった。

「あ、あの…ご遠慮なく何か聞きたい事があるようでしたら、どうぞ」

私が促すと、真下課長は「うん…セクハラになっちゃうかもしれないけど」と切り出したのでこちらはどきりとする。

何を言われるのかと思ったら、「その、身体を酷使したり帰りが遅いとご家族や…その、彼氏も心配するんじゃないかって、余計なお世話だけど、思っちゃって」という言葉が降ってきた。

私は目をぱちくりさせて不思議な顔をしていたと思う。

「私にはそういう人いないけど…佐藤さんには、ね」
「はぁ…」

いつもの事だが、皆勝手に私にはいい人がいるものだと決めてかかるのだ。
そうみんなが思うから逆に誰からもアプローチされないという罠にはまっていると言うのに。

「…彼氏は、いないです」
「あ、そうなの?……ゴメン」
「…どうしたら恋人ができるんでしょうか」

試すような気持でついそんな余計な事を聞いてしまう。彼氏と言わずあえて恋人という言葉を選んだのはせめてもの抵抗だ。

「……うーん」

真面目な真下課長は、こんなどうでもいいような、仕事には何の関係もない質問にでも、部下の問いかけには誠実に答えようとする。
どんな答えが返って来るのか、私はじっと待った。

「…やっぱり、好きな人ができた時にちゃんと気持ちを伝える事が大事なんじゃないかな」
「真下課長は、そうしてるんですか」
「うん…まあ、そうかな」

真下課長の声がだんだん小さくなって、最後の方はほとんど聞こえない。

「素直に気持ちを伝えるのが、大事なんですね」
「…と私は思うけど」

仕事の癖で教わった事を復唱しメモに取ろうとしてしまったけれど、これはそういう事柄ではないのでメモはしなかった。

「……」

私が押し黙っているので真下課長は「そんなに、悩んでいるの?」とおずおずとした口調で尋ねてくる。
私は「はい」と勢いよく答えた。

「うまくいくといいわね」
「頑張ります」
「でも佐藤さんからのアプローチなら、きっと誰も断らないでしょう」

思わず「真下課長もですか」と聞き返したくなったがぐっとこらえる。

「課長…10階のトイレに、行きませんか」
「え、なんで?」

エーデルワイスの雌蕊、その言葉ばかりが私の頭に浮かんでは消えていく。
何?直訳するならそれは真下課長のクリトリス、なんだろうか。わからないけど。

「いえ…何でもありません、帰ります」
「?」

ぴんと来てはいない真下課長に、それならそれでいいやという気になって私はパソコンを閉じた。

「お疲れ様でした」

感嘆に荷物をまとめて営業部の執務室を後にする。
エレベーターホールに進み私の指は上ボタンを押していた。

*-*-*-*-*-

10階には役員室と秘書課がある。だから普段からこのフロアは落ち着いた雰囲気なのだろうと想像できるが、この時間になるとさすがに人の気配はない。

私は役員室近くの女子トイレへと歩を進めた。
個室が4つ、勿論誰も使っていないし洗面所も無人で静まり返っている。
私は乾いた洗面台に寄りかかって、その4つの個室をぼんやりと眺めていた。

このどこかで、真下課長が自慰にふけっていたのかもしれない。
いくら現場に来た所で何が見える訳でもないが。

「…あ」

背後に人の気配を感じて顔をそちらに向けると、そこには真下課長がいた。

「真下課長?」
「あの…さっき佐藤さんがここの事言ってたから、何か落とし物でもしたのかなとか思って、心配になって」
「…それは、大丈夫です」

エーデルワイスの雌蕊。現場に当事者が来てしまった。
けれども私は案外と冷静な気持ちのままでいる。

「じゃどうして…ここにいるの?」
「…いえ」

理由など言えるものか。貴女がここでオナニーしていたと聞いたから雰囲気だけでも確かめに来たなど言えるはずもない。

「課長はここをよくお使いになるんですか」
「あ、まあ時々ね…どうしても急いでる時だけだけど」
「…そうですか」
「早く帰った方がいいわよ」

真下課長はそう言い残して「じゃ」とその場を立ち去ろうとする。
私はとっさに言葉を投げかけてしまっていた。

「秘書課の二宮さんとは、ここへ来ましたか」
「え…?」

立ち止まった真下課長の表情が一瞬にして仮面のように、それこそ客先へ入る前の、個人の人格を真っ白に消したようなものに変わった。
さながら、自分自身の顔の前に、そっくりな作り物のお面を被ったような感じとでも言えば良いだろうか。

それだけで、私の質問を明らかに警戒し、私がどこまでの情報を持っているのか探る態勢に入ったのがよくわかる。
冴子からは実際その時の事など何一つ聞いてはいない。あるいは自分もやましい事があるから中身に触れなかったのかもしれないけど。

「すみません何でもないです、今度こそ帰ります」
「はい、お疲れ様」

立ち尽くす真下課長を置き去りにして私はトイレから出た。
出口でちょうど真下課長の前を通り過ぎた時に、言いようのない緊張が走った気がしたけれど、気付かないふりでスルーする。

明日の事がある。今これ以上ギクシャクするのはまずいと思いつつ私は無心でエレベーターに乗りエントランスを出た。
…何か考えてしまったら、必ずやいやらしい妄想になってしまいそうだったから。

例えば今正に、私が立ち去った後のトイレで真下課長が自身の雌蕊を弄り回して、人がいないのをいいことに声をあげて自慰にふけっているのではないかとか、そんな感じの事を。

彼女を純潔無垢だと思っていた自分が一瞬ばからしく思えてくる。
純潔どころか不潔そのものではないか、と。
冴子のようにわかりやすくどちらかと言えばオープンな娘の方がまだ性根が良いだろう。そうではないふりをして実は卑猥な女というのが何故こうも嫌悪感を誘うのか。

誰にも見つかる事なく、自身の手だけでひたすら雌蕊を弄び嬌声をあげる真下課長を、汚らわしいもののように思いつつ、それなら他人の手でいくら汚しても構わないではないかという妄想にも囚われた。

「……」

電車のつり革を掴む自分の手を眺める。
この指が真下課長の雌蕊に触れたなら、どのようにそこを弄るのだろうか。

…そうか。
私は真下課長を汚したいと思っているのだ、と思い至り愕然とする。
だって秘められた雌蕊を暴かれ弄ばれ、そしてその場所をぐちゃぐちゃに濡らして悦ぶ真下課長を見てみたくて仕方ないのだから。

汚される雌蕊、そして昂る肌に喘ぐ声。
そんな事を考えていると、おそらく初めての事だと思うが自分の下着の内側に、何かぬるついた物が漏れ出てきている感覚があった。

…こんな、ただの想像だけでここまでになってしまうなんて。
私は本当は真下課長を好きなのではなくて、単に性的興味の対象としてしか見ていないのではないかと思い悩む。

思わず手を眺めていた目を伏せて、考えを打ち消した。
こういう時どうすれば良いのだろうか。
まさしく自慰をして、ごまかす必要があるのかもしれない。

自宅に帰りメイクを落としてシャワーを浴びてから、冷蔵庫に残されている自分の食事を温め箸をつけた。

そう言えば、晴香がまだこの家に暮らしていた時に、声を潜めつつ自慰にふけっていると思しき様子を扉の向こうで見つけた事もあったっけ。
あの娘はそういう知識に妙に明るそうだし、ネットなどで硬軟取り混ぜて様々な所に出入りしたり情報収集しているかもしれなかった。

食器を洗って家族を起こさないようそっと階段を上り、晴香が使っていた部屋の扉をそっと開く。
ほとんどの者は運び出されているけれど、クローゼットを開けると晴香本人的にはどうでも良い物らしきガラクタ類が出てきた。

「…あ」

一体どこで手に入れたのか、新品のピンクローターとローションが無造作にクローゼット内に転がされている。
それを横目に眺めつつ適当に衣装ケースの引き出しを開けてみると、ほとんど空っぽではあるが唯一ビニール袋に入った「防水使い捨てシーツ」なる物が現れた。

小さな文字の説明を読んでみると、「ローションプレイ等で気軽にお使いいただけます」という文言があり、これもアダルトグッズの類なのかと嘆息する。

晴香がしている仕事について、とりあえず親には話して了承を得ているようだが、詳しい事を私は知らない。
こんな、アダルトグッズを無造作に扱うような職場って何なのよと考え込みながらも、手ではそれらのグッズを掴んでしまっていた。

頭に浮かんで離れないのは、やっぱりエーデルワイスの雌蕊。
自分にもあるはずのそれは、あまり触った事がない。
女同士同じ物が付いているはずで、私は私の身体で、その存在を確かめたくなっていた。

*-*-*-*-*-

ローションとピンクローター、それらを防水使い捨てシーツで包むようにしながら晴香の部屋を後にし、自室へと戻る。
鍵をしっかりとかけて、ビニール袋からシーツを取り出し自分のベッドに敷いた。

何か、マットな質感のビニールシートのような感じだけど、一応表面は普通のシーツのような生地が張り合わされている感じだった。

次にピンクローターだが、これは以前の彼氏と遊び半分でラブホテルへ行った時に使った記憶がある。
電池ボックスに電池を入れてコードを束ねている留め具を外してコードを伸ばした。

最後にローションだが、ボトルの説明によると「多少口に入ったり、飲んでも問題ありません」という記載があった。
つまりこれを塗った上から相手の身体を舐めたりするプレイを想定しているという事なのだろうか。
私自身はローションの使用経験はなく、どんな感じなのかほんの少し興味もあるが怖くもあった。

「……」

布団は床に蹴落とし裸になった自身の身体を防水シーツの上に横たえる。
まずはピンクローターのスイッチを弱くオンにして、振動部を手の中に握り込んだ。

握った手の端からほんの少しだけローターの先端を露出させ、それで秘部をくすぐった。狙いは勿論雌蕊である。

ちらりと露出させたピンク色の先端でその付近をつついてみると、なんとなくその場所が存在を主張するかのように尖り膨らんでくる感覚があった。
おおよその位置をとらえてそこにめがけてピンク色の先端を接近させてみるけど、ちょっと痛い感じがする。

私は無我夢中でその場所への快感を求めてしまっていて、知らずローションのボトルを手に取り直接自分の股間へそれをこぼしていった。
いきなりそんな液体がかけられて冷たかったけど、変に火照った身体にはこれぐらいでちょうど良い。

「ん……」

極力声を殺して内腿を擦り合わせると、それだけでなんとも卑猥にクチュクチュという粘着質な音が響いてびっくりした。
はっとして先ほどの場所に軽く指で触れてみると、ヌルヌルした中にさっきよりも更に硬いものの存在を、自身の内側に感じる。

「ここ…かな」

思い切って使っていない方の手の、人差し指と中指を使い花弁をぐっと開いて中を露出させた。
その状態のまま片手でローターを握ってまずは花弁の内側を軽く撫でていく。
「ひっ」という変な声が出てしまいそうになるが必死でこらえた。

…でも。

「あ……あ、んっ…」

知らず甘い声が口からどんどんこぼれてしまう。
声の大きさだけには注意しつつ、私はローターで花弁の内側からどんどん上の方へと先端を進めていった。
するとぬるりと滑ったローターが私の雌蕊に軽く、でも確実に触れてしまい私は思わず身体を痙攣させる。

ローターを取り落としそうになるが慌てて構え直しもう一度、花弁の内側から上に進むようにしてローターを動かしていくと、一度目とは違った、突き抜けるような快感が襲ってきた。

「あ、あん…っ、あひぃぁ…」

ローションのヌルヌルで、機械的な振動は和らぎ艶めかしい快感だけが身体に与えられる。

「あ…気持ち、いいっ、あん…あぁ…っ」

長くはもたないだろうと、身体ではわかっていた。
今、真下課長もこうして自身の雌蕊を弄っているのだろうか。
そんなに弄っているのがいいのなら、私にもさせて欲しい。
私ならこんな風に弄ってあげるのに。

いつの間にか剥き出しになった雌蕊にローターを滑らせ、もう片方の指も突っ込むようにしてそこをさすっていく。
上下に、左右に、上側を、下側を、とローターと指でくるくると撫で回すように徹底的に雌蕊を弄った。

「あ、い……くっ」

ほとんど無言のまま、快感だけが全身に広がり破裂した。

真下課長の自慰を想像してこんな事をしてしまった。
…明日、二人で食事するのに。こんなで大丈夫なんだろうか。

もっと、吐き出してすっきりしてしまわなければ、真下課長をいやらしい目で見てしまうかもしれない。
まだボトルに残っているローションを、首から下の全身に、ぶちまけるようにかけていく。実際には粘度があるからぶちまけた感じにはならないのだけど。

のろのろと垂れ落ちるローションが、胸の谷間やおへその周り、脇の下や膝の裏までもべったりと濡らしていき、わずかな光でもてらてらと光って見えた。
身じろぎしただけで、不思議な気持ちよさに支配され私は身体をくねらせる。

そうしながらローターで雌蕊ばかりでなく胸の先の尖りにも、艶めかしい刺激を施していった。
ローターを当てていない時は指で雌蕊をまさぐる。

「あ…んっ…また…っ」

身体がビクビクと跳ねてしばらく止まらない。
口が開いて自分でもわかるぐらいうるさくはぁはぁと息をしてしまう。

…どうして、ただヌルヌルのものを塗っただけで別人の身体みたいに見えるんだろう。
首から下が自分の身体ではなく真下課長のそれだとイメージしながら、再び胸と秘部を弄り回す。

「あんっ、あ…いいっ」

真下課長の身体だと思うと、思い切った大胆な、いやらしい愛撫も躊躇なく行う事ができた。故にまた、それまで以上に速く絶頂へと駆け上ってしまうのだけど、それで構わない。

「あんっ、イくのっ、イくっ…」

ローションをとっくに使い果たして、更に身体の上に塗ったそれが乾いてしまうぐらい、私はしつこく何度も果てを見たし、そうなるぐらいに自分の身体を弄り撫で回した。

「みすず…さん…、みすず…」

何故か半泣き状態で彼女の名前を呼び、達する自分の姿を見て欲しいと希っていた。
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