九死に一生!ポンコツ転生者見参!

忍絵 奉公

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①エルフ村に拾われる

第5話 穴から脱出!のはずが、森を燃やしかける


 目を覚ました時、最初に感じたのは、腹の上の重みだった。
「……ん?」
 薄く目を開ける。
 石室の天井。
 青白く光る鉱石。
 そして。
 腹の上に、ぺたんと何かが乗っていた。
「うわっ!?」
 飛び起きる。
 そこにいたのは、手のひらサイズの白いカエルだった。
「なんだこれ!?」
 カエルは、つぶらな黒い目で栄一を見上げている。
 ぴく、と喉が鳴る。
 その奥。
 宝箱の上に座ったリィナが、眠そうに言った。
「朝ごはん」
「……は?」
「それ、食べな」
「カエルを!?」
「文句ある?」
「あるよ! めっちゃあるよ!」
 異世界の洗礼が雑すぎる。
 だが、腹は減っている。
 しかも限界だ。
 昨日からほぼ何も食べていない。
 赤い木の実の地獄もあった。
 ここで食わなければ、本当に死ぬ。
 栄一は、ごくりと喉を鳴らした。
「……」
 カエルと見つめ合う。
 カエルも見つめ返す。
「……すまん」
 数分後。
 石室の外。
 穴の底の少し開けた場所で、栄一は木の枝を集めていた。
「よし……」
 枝を積む。
 枯れ葉を入れる。
 石を並べる。
 小学校の林間学校で見た、うろ覚えの知識総動員。
 リィナは近くの岩の上に座り、足をぶらぶらさせている。
「おまえ、火とか出せないの?」
「出せる」
「出せるの!?」
「でも、あんたがやるって言った」
「……」
 言った。
 確かに、寝起きで見栄を張った。
『フッ……サバイバルなど、俺にとっては児戯だ』
 と。
 最悪だった。
「……まあ、見てろよ」
 栄一は、石を打ち合わせる。
 カチン。
 カチン。
 カチン。
「……」
 つかない。
 五分経過。
 十分経過。
 汗だく。
「くそっ……!」
 カチン。
 指を打つ。
「いっだぁぁぁ!!」
 悶絶。
 リィナが、じとっと見る。
「児戯」
「うるさい!」
 だが。
 その時。
 パチ。
「……!」
 小さな火花が、枯れ葉に落ちた。
 ふわっ、と煙が上がる。
「おおっ!」
 栄一の顔が輝く。
「見たか!」
「うるさい。まだ火じゃない」
「今つける!」
 必死でふーふー吹く。
 煙が増える。
 目にしみる。
「げほっ! ごほっ!」
「下手」
「うるさい!」
 だが。
 ぼっ。
 小さな火がついた。
「よっしゃああああ!!」
 栄一、ガッツポーズ。
 感動のあまり立ち上がる。
「見ろリィナ! これが俺の生存力――」
 その時。
 パサッ。
「……え?」
 さっき積みすぎた枯れ葉の山に、火の粉が飛んだ。
 一瞬だった。
 ぼわっ!!
「うわああああああ!?」
 一気に火柱。
 乾いた枝に燃え移る。
 近くの草へ。
 さらに木の根へ。
「ちょ、ちょ、ちょ、待てぇぇぇ!!」
 穴の底とはいえ、周囲は乾燥した蔦や枯れ枝だらけだった。
 あっという間に炎が広がる。
 ボッ、ボボボボッ!!
「水ぃぃぃぃ!!」
 栄一、バケツもないのに走る。
 手で水をすくってかける。
 全然足りない。
 むしろ熱い。
「熱っ! 熱っ!」
 コートの裾に火がつく。
「ぎゃああああ!?」
 走る。
 転ぶ。
 地面を転がる。
 火は消えたが、泥まみれ。
 涙目。
「終わった……」
 見上げれば、穴の底に煙が充満している。
 最悪だった。
 異世界二日目。
 ついに森を燃やして死ぬのか。
「……」
 岩の上のリィナは、腕を組んでため息をついた。
「ほんと、才能ある」
「何の!?」
「ダメ人間の」
「褒めてない!」
 栄一が叫んだ、その時。
 リィナが、ふわりと立ち上がった。
「しょうがない」
 白い髪が揺れる。
 指先を、すっと前に出す。
「風よ」
 たった一言。
 次の瞬間。
 ぶわっ!!
 強烈な突風が、穴の底を駆け抜けた。
 炎が、一気に吸い上げられる。
 煙が渦を巻く。
 そして。
 燃えかけた火は、すべて吹き飛んだ。
「……」
 静寂。
 栄一は、口を開けたまま固まっていた。
「……すげぇ」
 リィナは、ふん、と鼻を鳴らす。
「当然」
「最初からやれよ!」
「見てて面白かった」
「性格悪っ!」
 しかし。
 その時だった。
 リィナが、空を見上げて眉をひそめた。
「……あ」
「え?」
「煙」
 栄一も見上げる。
 穴の上。
 青空へ向かって、白い煙が細く立ちのぼっている。
「やばい?」
「かなり」
「なんで?」
「この辺、縄張り意識強いの多いから」
「……」
「魔物とか、山賊とか、エルフとか」
「最後の希望っぽいの混ざってたよな!?」
 リィナは、にやりと笑った。
「さて」
「さて、じゃねぇ!」
「穴から出る方法、考えよっか」
 その時。
 上の方から、かすかに声がした。
「……煙だ」
「誰かいる?」
「……!」
 栄一とリィナは、同時に顔を見合わせた。
 ついに。
 穴の底のポンコツに、
 異世界の住人が、近づいていた。

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