7 / 15
束の間の平穏の終わり
しおりを挟む
※※※
生まれ変わった今世でアルバは今日も祈っている。
(どうか今日も平穏でありますように・・・)
裏を返せば前世は平穏とは程遠い・・・およそ程遠すぎる人生だったのだと言える。
気が付けば、確かに死んだはずの自分が赤子に生まれ変わったらしい。だが、自分を呼ぶのは今も昔も変わらず同じ名前・・・そう、何故か「アルバ」だった。
※※※
まだ思い通りに動かない手足をもどかしく思いながら、生まれて間もないアルバは今日も母親だというマリアの顔を観察する。
(やっぱり、マリウスに似ている気がする・・・。)
それが一番初めに抱いた感想だった。
アルバと同じ紅い髪は明け方の色。光の加減で微妙に色を変える右の金瞳と髪色と同じ左の紅瞳。(オッドアイは自分と弟子たちの共通点だ。)女の子とよく間違えられる可愛いよりは綺麗という言葉の似合う整った顔立ち。
七人いた弟子の中で最も幼く、そして一番感情を表に出すことが苦手だった最後の弟子。あの子は今どうしているのか・・・。赤子の自分にできることなどないが、ただただ他の弟子たちとともに幸福で暮らしていることを願うのみ。大きく成長した姿を一目でも見たかったが叶わなかった唯一の心残り。
果たして偶然なのかマリアはマリウスによく似ている。オッドアイではないが金色の瞳に割と珍しい紅い髪を腰まで伸ばし、お人形のような美しい顔立ちをしている。
(魔力はさほど強くはなさそうね・・・。ただの気のせいかしら?)
しかし、マリアというらしい今世の母親はよく笑う。何がそんなに楽しいのか?まるで常に傍にいた<小さな妖精たち>のようだとアルバは思う。
「私の可愛いアルバ。今日も良いお天気よ。外で日光浴しましょうねぇ♪」
春先らしいが、まだまだ肌寒い庭先に連れ出してマリアが笑う。その隣では金髪碧眼の長身の父親アレックスが「マリア、寒くないか?こんなに風が強くてはアルバが風邪をひく!日光浴は館の中のテラスでもできるだろう。」とハラハラした様子で声をかけている。
この世に生まれて約ひと月経とうとしているが、最近毎日のように繰り返される光景だ。
どうやら自分は裕福なご貴族様とやらに生まれ変わったらしい。赤子の自分を包む肌着やおくるみが肌触りからしてやたら高級そうだということに気づく。
マリアが鼻歌交じりの子守唄を口ずさむたびに、赤子のアルバはうとうとと眠りに誘われる。何だかくすぐったくて、ふわふわした感じの優しく暖かい魔力のこもった子守唄だ。無意識に魔法を使っているらしい。
「可愛いわぁ!どうしてこんなに可愛いのかしら?」
「きっとマリアに似て、三国一の美女になるな。」
どう考えても、親バカとしか思えない会話である。だが悪くない。不思議と嫌な気持ちは湧いてこないのだ。アルバのぷにぷにのほっぺをいじりながら会話をする両親に(人の顔で遊ぶなぁ!)と怒りつつ、つい笑みがこぼれる。
(このまま平穏に暮らせたらよいのに・・・。)
神など信じないアルバだが、あまりにも平穏な日常に夢見たくなる。
(普通の子供に生まれて、平凡に育ち、平穏な人生を送れないかしら?)
それは切なる願いとなって、いつしか祈りはアルバの日課となっていた。
※※※
アルバは知らない。
自らの死後、【夜明けの大魔女アルバ】と人々が呼び伝説になったことを。
知らぬがゆえに、【大魔女】などという称号も語り継がれる伝説の内容も知るはずもなく・・・。
アルバはただ必死に守りたいものを守り続けて生きて死んだだけだから、何の因果か最後の弟子であるマリウスの孫に生まれ変わっていることにすら、今は知らない。
※※※
そして束の間の平穏な日々に終焉は訪れる。
【夜明けの大魔女アルバ】が目覚めたと世界に広まるのは、もう少しだけ後のこと・・・。
「お行儀のよいドラゴンとその仲間たち」は、無邪気にそして無慈悲にアルバの平穏な日常を、切なる祈りを打ち砕いた。
けれど、のちに弟子たちは語る。
「幾つもの偶然が重なり合って必然が生まれるというなら、アルバの転生は必然」だったのだと・・・。
※※※
その日、七人の弟子たちは確かに異変に気がついた。
暁の国の辺境の地ノルドを目指して、七賢人が集結するのはまた後日のお話。
生まれ変わった今世でアルバは今日も祈っている。
(どうか今日も平穏でありますように・・・)
裏を返せば前世は平穏とは程遠い・・・およそ程遠すぎる人生だったのだと言える。
気が付けば、確かに死んだはずの自分が赤子に生まれ変わったらしい。だが、自分を呼ぶのは今も昔も変わらず同じ名前・・・そう、何故か「アルバ」だった。
※※※
まだ思い通りに動かない手足をもどかしく思いながら、生まれて間もないアルバは今日も母親だというマリアの顔を観察する。
(やっぱり、マリウスに似ている気がする・・・。)
それが一番初めに抱いた感想だった。
アルバと同じ紅い髪は明け方の色。光の加減で微妙に色を変える右の金瞳と髪色と同じ左の紅瞳。(オッドアイは自分と弟子たちの共通点だ。)女の子とよく間違えられる可愛いよりは綺麗という言葉の似合う整った顔立ち。
七人いた弟子の中で最も幼く、そして一番感情を表に出すことが苦手だった最後の弟子。あの子は今どうしているのか・・・。赤子の自分にできることなどないが、ただただ他の弟子たちとともに幸福で暮らしていることを願うのみ。大きく成長した姿を一目でも見たかったが叶わなかった唯一の心残り。
果たして偶然なのかマリアはマリウスによく似ている。オッドアイではないが金色の瞳に割と珍しい紅い髪を腰まで伸ばし、お人形のような美しい顔立ちをしている。
(魔力はさほど強くはなさそうね・・・。ただの気のせいかしら?)
しかし、マリアというらしい今世の母親はよく笑う。何がそんなに楽しいのか?まるで常に傍にいた<小さな妖精たち>のようだとアルバは思う。
「私の可愛いアルバ。今日も良いお天気よ。外で日光浴しましょうねぇ♪」
春先らしいが、まだまだ肌寒い庭先に連れ出してマリアが笑う。その隣では金髪碧眼の長身の父親アレックスが「マリア、寒くないか?こんなに風が強くてはアルバが風邪をひく!日光浴は館の中のテラスでもできるだろう。」とハラハラした様子で声をかけている。
この世に生まれて約ひと月経とうとしているが、最近毎日のように繰り返される光景だ。
どうやら自分は裕福なご貴族様とやらに生まれ変わったらしい。赤子の自分を包む肌着やおくるみが肌触りからしてやたら高級そうだということに気づく。
マリアが鼻歌交じりの子守唄を口ずさむたびに、赤子のアルバはうとうとと眠りに誘われる。何だかくすぐったくて、ふわふわした感じの優しく暖かい魔力のこもった子守唄だ。無意識に魔法を使っているらしい。
「可愛いわぁ!どうしてこんなに可愛いのかしら?」
「きっとマリアに似て、三国一の美女になるな。」
どう考えても、親バカとしか思えない会話である。だが悪くない。不思議と嫌な気持ちは湧いてこないのだ。アルバのぷにぷにのほっぺをいじりながら会話をする両親に(人の顔で遊ぶなぁ!)と怒りつつ、つい笑みがこぼれる。
(このまま平穏に暮らせたらよいのに・・・。)
神など信じないアルバだが、あまりにも平穏な日常に夢見たくなる。
(普通の子供に生まれて、平凡に育ち、平穏な人生を送れないかしら?)
それは切なる願いとなって、いつしか祈りはアルバの日課となっていた。
※※※
アルバは知らない。
自らの死後、【夜明けの大魔女アルバ】と人々が呼び伝説になったことを。
知らぬがゆえに、【大魔女】などという称号も語り継がれる伝説の内容も知るはずもなく・・・。
アルバはただ必死に守りたいものを守り続けて生きて死んだだけだから、何の因果か最後の弟子であるマリウスの孫に生まれ変わっていることにすら、今は知らない。
※※※
そして束の間の平穏な日々に終焉は訪れる。
【夜明けの大魔女アルバ】が目覚めたと世界に広まるのは、もう少しだけ後のこと・・・。
「お行儀のよいドラゴンとその仲間たち」は、無邪気にそして無慈悲にアルバの平穏な日常を、切なる祈りを打ち砕いた。
けれど、のちに弟子たちは語る。
「幾つもの偶然が重なり合って必然が生まれるというなら、アルバの転生は必然」だったのだと・・・。
※※※
その日、七人の弟子たちは確かに異変に気がついた。
暁の国の辺境の地ノルドを目指して、七賢人が集結するのはまた後日のお話。
20
あなたにおすすめの小説
本当の外れスキルのスロー生活物語
転定妙用
ファンタジー
「箱庭環境操作」という外れスキルしかないエバンズ公爵家の長男オズワルドは、跡継ぎの座を追われて、辺境の小さな土地を与えられて・・・。しかし、そのスキルは実は・・・ということも、成り上がれるものでもなく・・・、スローライフすることしかできないものだった。これは、実は屑スキルが最強スキルというものではなく、成り上がるというものでもなく、まあ、一応追放?ということで辺境で、色々なことが降りかかりつつ、何とか本当にスローライフする物語です。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ちっちゃくて可愛いものがお好きですか。そうですかそうですか。もう十分わかったので放してもらっていいですか。
南田 此仁@書籍発売中
恋愛
ブラック企業を飛び出すように退職した日菜(ヒナ)は、家で一人祝杯を上げていた――はずなのに。
不意に落ちたペンダントトップへと手を伸ばし、気がつけばまったく見知らぬ場所にいた。
周囲を取り巻く巨大なぬいぐるみたち。
巨大化したペンダントトップ。
あれ?
もしかして私、ちっちゃくなっちゃった――!?
……なーんてね。夢でしょ、夢!
と思って過ごしていたものの、一向に目が覚める気配はなく。
空腹感も尿意もある異様にリアルな夢のなか、鬼のような形相の家主から隠れてドールハウスで暮らしてみたり、仮眠中の家主にこっそりと触れてみたり。
姿を見られたが最後、可愛いもの好きの家主からの溺愛が止まりません……!?
■一話 800~1000文字ほど
■濡れ場は後半、※マーク付き
■ご感想いただけるととっても嬉しいです( *´艸`)
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる