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side正義(父)
可愛い息子と告白へ向かう。
しおりを挟む亮太を着飾らせ、次はホテルディナーだ、と逸る気持ちを抑えて手順を思い返す。
そうだ、今日の私は“王子様”だった。
髪型や衣装が替われば“王子様”はすぐ気付いて褒めるんだったな。
「そのスーツ、よく似合ってる。
亮太はいつも可愛いけど、今日は格好いいよ。」
亮太は可愛いと褒めると、嬉しそうしながら『格好いいって言ってよ!』と反論する。
そのやり取りも可愛くていいんだが、今日の私は“王子様”だからストレートに褒めよう。
そうだ、“王子様”は、一緒の移動はいつもエスコートするんだっけ。
こんな可愛くて格好いい亮太を目にしたら誰でも、不埒な気持ちを抱いて当然だろう。
できるだけ他人の目に触れさせたくない。
帝王ホテルが近くて良かった。
私は優雅にだが急いでホテルへと向かった。
◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆
帝王ホテルのロイヤリティスイートは、フロントを通らない。
この部屋直通の専用エレベーターにある網膜認証でのチェックインとなる。
王族専用となるこの部屋には専属のスタッフが付いており、ルームサービスなど全てに対応する。
この部屋であった事はどんな事であっても口外しない。
だから私はココを選んだ。
この部屋に来るのも久しぶりだな。
胸ポケットのチーフを薔薇に変えたが、トイレに行ったままの亮太が、まだ帰らない。
何かあったのだろうか。
そう思って探してみると、茶室の側で目的地が見付からずウロウロしている亮太を見つけた。
半泣きの亮太も可愛い。
「亮太?迷子かい?可愛いね。」
亮太をトイレへとエスコートし、待っている間に茶室を覗くと、頼んでおいた鶴と亀が来ていた。
縁起物・・・ちょっと大きいな。
そう言えば熊はどこにあるんだろう。
ベッドルームがハネムーン仕様になってるはずだからそこかな?
ぼんやり鶴と亀を見ているとトイレから亮太が出てきた。
そのまま、亮太をディナーの席までエスコートする。
自分も席に着いたところで亮太が切り出した。
「今日はどうしたの?父さん。」
「ん?今日は亮太との特別な日にしようと思ってね。」
亮太にじっと見つめられ、顔が緩む。
「今日・・・何かの記念日だった?」
今日から記念日になるんだよ。
まだ納得がいかなそうな亮太に微笑む。
「それは兎も角、夕ご飯の前に移動して、お腹空いたでしょ。
取り合えず食事にしようか。
亮太、今日も沢山食べてね。」
「うん。」
お腹が空いていたのだろう、亮太が素直に頷く。
「乾杯する?」
“王子様”的には『君の瞳に乾杯。』的な事を言わないといけないんだが・・・思い付かない。
「ううん。お腹空いた。
ご飯食べたい。」
そうだね、育ち盛りに随分我慢させたもんね。
“王子様的コメント”を創り出せない私も助かるよ。
「ふふ、じゃ、いただきますか。」
「「いただきます。」」
亮太の好きな物だけで準備させたフルコースを、モリモリ食べる可愛い亮太を堪能した。
「「ごちそうさまでした。」」
いつも亮太を待ってごちそうさまを言うのは、お腹いっぱい食べて欲しいからと、一生懸命食べる可愛い亮太を見ていて忘れているのと理由が2つある。
でも一緒のごちそうさま、に嬉しそうにする亮太が可愛いから良しとしている。
スタッフが食事を片付けてたので、さて本番ですね、と思っていると、亮太に想定外の提案を受けた。
「父さん、そろそろ帰る?」
今からが本番なのに撤収するの?
しないよ。
「ん?今日はここに泊まるよ?」
何も始めてないのに帰れないよ。
「このホテルの部屋を取ってるの?」
「?
ココが泊まる部屋だよ?」
「??
レストランの個室って泊まってもいいの??
確かに凄く設備が整ってるから泊まれそうだけど・・・」
・・・ああ、この部屋をホテルのレストランと勘違いしてたのか。
「ふふ、成る程。
いや、今日の夕食は部屋食だよ。
ココが・・・
◆◆ ◆ ◆ ◆◆
「部屋を案内しようか。」
ロイヤリティスィート、の説明も無事に済んだ。
私はそろそろ本題に入りたいんだが。
「え?」
「良い部屋があるんだ。」
腰に手を回し、エスコートして景色を見るためだけに造られた部屋に入る。
バーカウンターもあり、呼べばスタッフがカクテルを作りに来てくれる仕様だ。
「夜景すごい!ヤバい!!
父さん見て!
東京タワーもスカイツリーも見えるよ!!
スゲー!!!
・・・ぁ。」
カクテルは要らなさそうだな。
応援ありがとうございます!
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