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水曜日ディナー本番。
市井兄と弟とウェイター。
しおりを挟む・・・それにしても、さっきから俺の天使とウェイターの会話が随分と盛り上がっている。
「デッカい象さんのデッカい壺がある~♪
大っきいねぇ~!」
「コチラは甕でございます、健様。」
「カメ?亀?あ、甕~♪」
「この甕は、フランス王家よりご寄贈頂きました、中世ヨーロッパの品で、文化遺産の認定品となっております。
直径3m18cm、高さは2m35cmとなっています。」
俺を差し置いて健介とイチャイチャするなど許さん!
許さんぞウェイター!
「甕、入ってみてもいい~?」
「それも楽しそうだね。
でも私の姫君、お腹空いてるんじゃないかな?
先に食事にしませんか。
可愛いけどお転婆は控えめにね、姫。」
健介の目は本気だ。
『王子キャラの鉄則、会話は上品かつユーモアを忘れずに。』なんぞやってる場合か!
健介が甕に入っちゃうじゃないか!
「申し訳ございません、健様。
甕に入ったら・・・出るのが大変でして・・・!!」
そしてウェイター!
止める理由がおかしい!
文化遺産の認定品に入ったら不味いだろ!
「入った事あるの~?」
「清掃中、中に滑り落ちた者がおります。」
「はしごで脱出~?」
「甕を傷付けないために、天井に滑車を設置し、滑車からロープをたらしました。
それでも落ちた者を引きあげるのに数人必要でした。
引き上げられた者も大変そうでしたよ。」
「そうなの~。
空中ブランコみたい~?」
「はい。」
「すご~い。」
「・・・空中ブランコは見て楽しむモノだよ、私の姫君。」
・・・ダメだ、俺ではツッコミ切れん・・・もう流そう・・・。
「コチラが本日の市井様のディナールームになります。」
「わ~♪
兄ちゃん見て見て~!!
東京タワーだよ、お~い♪」
ディナールームは、壁面がガラス張りになっており、東京タワーの夜景が一望できる。
圧巻だ。
室内が明るいと、ガラスに室内が映って夜景が見えなくなりそうなもんだが、この部屋のガラスは室内が明るくても外の景色が綺麗に見える。
反射を抑えた特殊なガラスが壁全面に使われているんだろう。
えぇ、凄。
健介は景色に喜びすぎて、俺をグイグイ引っ張って行く。
もう正直エスコート云々では無い。
姫と言うよりは、オモチャ売り場に祖父母を引っ張って行く孫か、散歩が嬉しくてリードをビンビン引っ張る小型犬の様だよ、健介。
そんなウチの天使、可愛い。
今すぐ撮影したい、静止画と動画で。
撮影したいが、それよりも。
「この部屋は姫の為に用意させたんだよ。(と言うセレブ設定。)
夜景は食事の後でゆっくり案内するからね。(俺が分かるところだけ。)」
「そうだ、僕お腹ぺこぺこだった~♪」
健介がハッとした顔で俺を見上げた。
ココに来る道中、コンビニ肉まんの陳列ケースに視線がくぎ付けだったもんね。
「食事の席からも夜景が見えるんだ。(多分)」
ウインクしてから夜景がより美しく見える方の席へと健を促す。
「きゃ~♪兄ちゃん格好いい~!
うん~♪」
椅子の後ろでウェイターが既に待っていた。
椅子を動かすのはウェイターの仕事だ。
だから俺のエスコートは健を席に連れて行くまで、と言うことか。
「市井様。
本日はフレンチのフルコースとなっております。
お楽しみ下さい。」
「ありがとう。」
「いただきま~す!」
応援ありがとうございます!
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