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水曜日ディナー本番。
市井兄とソワソワ弟。
しおりを挟むそして、健介はフレンチのフルコースを満面の笑みで食べ切った。
フレンチのコースはオードブル(前菜)から始まり、スープ、ポワソン(魚料理)、ソルベ(口直し)、アントレ(肉料理)、デセール(デザート)で終わりとなる。
もちろん料理は一品ずつ運ばれてきた。
健介は、その都度パンをお代わりし、その上俺が食べきれなかったパンにまで手を延ばしてきた。
「兄ちゃん、ちょうだい?」
コテンと首を傾ける健介可愛い、超可愛い。
・・・そんなにお腹を空かせていたんだね。
こんなに食べるなら、ここに来る道中にチョコミント肉まんも買ってあげればよかった。
「どうぞ、私の健、愛しい姫君。
もっと何か注文する?」
「ううん、兄ちゃんのパンで大丈夫~♪」
ウェイターに目配せすると、コースの残り分、アントレとデセールを健介の分だけ大盛りにしてきてくれた。
流石帝王ホテルのウェイター、悔しいが優秀だ。
それをペロッと食べる可愛い健介。
ウェイターが驚いた顔になる。
そうなんだ、うちの子最近凄くたくさん食べるんだよ。
うちの子はそんな所も超可愛いんだ。
そうだろう、そうだろう、可愛いだろう。
お前にはやらんがな!
俺も大満足でディナーを終え・・・ようと思っていた。
ただ、コースの中盤から健介の様子がおかしい。
初めは料理に夢中の健介だったが、ウェイターがポワソンの皿を下げた辺りから、パンを囓りつつソワソワと落ち着かない。
いや、健介の場合、ソワソワしているのはいつもの事で、落ち着いているのは家事してる時か勉強中くらいだが、それにしても落ち着きがない。
・・・何だ?
喉でも渇いたのかな?と、取り合えず、飲み物を注文した。
健介が未成年だから、飲み物はシャンパンやワインでは無く、2人一緒にオレンジジュースだ。
「オレンジジュースでございます。」
「兄ちゃんと一緒だ~♪」
「乾杯する?
この宝石のような夜に。」
「うん♪♪
王子様みたいでステキ!!」
俺のセリフに大喜びだ。
クサい台詞、練習して良かった。
宗太郎(友人)、アドバイスありがとう。
ウキウキオレンジジュースを飲んでいた健介は、だが最終的に飲み干したグラスの底を覗いていた。
なんだろう・・・喉が渇いたのとは違うのか?
「私の姫、グラスが気になるの?
君の瞳の方が夜景よりも輝いて美しいよ。」
と、ためしに微笑んでみたが、俺を見て頬を染めた健介は、
「う、ううん~!
なんでも無い~!」
と挙動不審になっただけ。
料理は進んでいくが、健介のソワソワは止まらない。
終いにはデセールの時に出た紅茶のティーポットまで覗いていた。
「飲み物を別に注文しようか?」
「ううん、僕もうお腹いっぱい~!」
何なんだろう。
何故そんなに水分が気になるんだろうか。
・・・そう言えば、健介はソルベやアントレ、デセールも余す所なく見てから丁寧に切り分けて食べていた。
美味しそうに食べていたから、味に不服がある訳では無さそうだし・・・。
料理の皿やグラスに興味があるのか?とも思ったが、健介は陶器に興味が無い。
興味が無いのだから、知識も無い。
知らないハイブランドのロゴが気になる訳もない。
・・・何か探してるのか?
・・・食べ物に何か・・・?
食品か?
食品以外の物か?
ふと最近の健介の愛読書が頭を掠める。
まさかな・・・。
いやでも・・・。
チラッと健介を見ると、今度は俺のティーカップの底を覗いている。
・・・やっぱりそうだ。
結婚情報誌!!
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