僕の恋、兄の愛。4

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水曜日ディナー本番。

市井兄とルームサービス。

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それから、しばらくはルームサービスへ俺の希望を伝えるのに徹した。

正直プレゼンテーションが学会発表よりも難しい。

こんなんで伝わるのか?

『畏まりました。
ご希望の商品は、ジュエリー、でございますね。
中でも、ブライダルリングとエンゲージリングを含めたペアリングをご所望、でよろしいでしょうか?。
当ホテルは、各ブランドや工房と提携しており、品揃えに自信がございます。
ジュエリーブランドや工房のご指定はございますか?
デザインのご希望などは?』

流石、帝王ホテルのルームサービス。

ソコソコの説明から的確に必要情報をピックアップしてくれる。

そうだよ、『白金属』じゃ素材だ。
『装飾品』じゃなくて『ジュエリー』だ。

・・・分からん。

「そうですね、それでお願いします。
指輪は、可愛いデザインの物がいいのですが・・・。
工房を指名できるのであれば、日本ではあまり見かけないブランドですが、“sea angel.white”か、“Œuf de neige”が欲しいです。」

健介が喜ぶものを妥協せずに選びたい。

・・・勿論俺の希望も存分に取り入れて。

『畏まりました。
お調べ致します。
少々お待ち下さい。
・・・
・・・お待たせ致しました。
“sea angel.white”、“Œuf de neige”のペアリング、どちらもご用意可能です。
ペアリングは、最新版パンフレットをこれからお渡し致します。
そのパンフレットに載っております全てのデザインをご用意できます。
エンゲージリング、ブライダルリングにつきましては、新作のデザインから1つ前の旧作デザインまでのご準備が可能となります。
その中にご希望商品はございますでしょうか。』

「ありがとう、十分です。」

“sea angel.white”と“Œuf de neige”の最新のリング、最近どこかで見たな。

「コチラ、最新のパンフレットとなります。」

「あ、どうも・・・?」

記憶を探っていると、スタッフらしき男性(じいさん)が現れ、パンフレットを俺に手渡して一礼し、帰って行った。

どっから来てドコに帰ったんだ、あのじいさん。
忍者か。

『最新版パンフレットをスタッフが茶室の市井様にお届けしたと存じます。
ペアリングのサイズはお分かりですか?』

「パンフレットありがとう。
サイズは15号と9号です。
できれば商品は本物を見て決めたいです。
できますか?」

どうしても現物を見て決めたい。

ダメ元で言ってみる。

『確認致します。
少々お待ち下さい。
・・・
・・・お待たせ致しました。
現品を手配させて頂きました。』

流石セレブ御用達の帝王ホテル。

「ありがとう。」

『工房から、市井様へ、商品につきましてお伝えすることがございます。』

「ええ、何でしょうか。」

『商品によりましては・・・
ご理解とご協力を・・・
「ええ、もちろん・・・
『つきましてはラッピング等のご希望は・・・
「それは・・・
『お届け方法に関しまして・・・
「では届け先は・・・


指輪の説明を聞きながら、友人の宗太郎に
『至急!お姫様へのプロポーズの言葉を教えてくれ!』
とメッセージを送った。

自分プロデュースのプロポーズじゃ無いのが悔しいが、状況が状況の為、そんなこと言っていられない。

と言うか、追い詰められすぎて思い付かない。

健介を“姫”扱いすべく王子様を一夜漬けしから、今の俺は王子様で手一杯だ。

肝心の姫の“プロポーズご希望”が想定外すぎて・・・もうウンともスンとも・・・セリフも仕草も出てこない。

宗太郎しんゆう!(急遽格上げ)
俺を助けろ!

宗太郎からすぐにメッセージが返ってきた。
『時間・場所・状況を教えてくれ。
誰が姫にプロポーズするんだ?』

今からホテルレストランの個室で、夜景を見ながら、王子が姫にプロポーズするんだ、と返事をすると、すぐにシチュエーションや台詞が返ってきた。

流石売れっ子脚本家宗太郎様。

昼の美容師しんごのといい、大学の友人しんゆう達には感謝しかない。


劇の王子様役をもっと真面目にしておけばよかった、と謎の後悔をしながら、友人作のプロポーズの言葉を必死で覚えた。










備考:市井弟はホテルマンとお留守番中です。


※sea angel.whiteとŒuf de neigeは、適当に考えたブランド名です。
実在しません。
直訳「白いクリオネ:海の生き物」と「雪卵:海外のお菓子」です。
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