息子の運命、父の執着。3

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side 亮太

特別な日の始まり。

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一緒に歩きながら、チラッと父さんを見上げる。

今日の父さんは、いつもよりいいスーツで、髪型もおしゃれにセットされてる。

普段も格好いいけど、今日はより格好いい。

どうしたんだろう。

「亮太も衣装チェンジだよ。」

「え?」

このまま夕飯だと思っていたら、どうも俺も服を着替えるらしい。

え?ドレスコードのある店に夕飯食べに行くの?

・・・学校の制服じゃダメな店ってあんの?

冠婚葬祭の正装だぜ?

しかも保護者同伴だぞ?

一旦家に帰るのかと思いきや、父さんは家と違う方へ進んでいく。

父さんに案内されて来た場所は、何かのお店、なんだろう。

入り口は大通りに面してるし、外からチラッと見える内装も上品そうだ。

だけど、お店の看板が無い。

普段の俺なら通りかかってもココが店だなんて多分気付かない。

何か・・・セレブ臭がして怖ぇ・・・。

ここで着替えんの?

「いらっしゃいませ、唐様。」

うぉ、ダレ?!

お店(?)のドアは、いつの間にか居た上品なおばさんが開けてくれていた。

「こちらへどうぞ。」

上品なおばさんは、そのまま豪華なソファと大きな鏡のある部屋に俺たちを案内してくれた。

すっげーデカい鏡。

ナニ?ここ?

「亮太、一旦座ろうね。」

ニッコリ微笑む父さんに倣って、ウロキョロしてた俺も急いでソファに腰を下ろす。

ソファに腰掛けると、さっきのおばさんがお茶を持って来てくれた。

なんかお上品なティーカップだな。

「ありがとう。」

父さんはそれを手に取り、優雅に紅茶を飲む。

俺も父さんに乗っかろう。

「いただきます。」

・・・茶が出てきたし、ソーサーにお菓子も添えてある。

あ、この部屋で着替えて、この店で夕飯食うの?

ソーサーに添えられているクッキーをバリバリ食べると、上品なおばさんがフワッと微笑んでくれた。

その笑顔・・・正解?不正確?どっち!?

でも思い直す。

いや。ココ飯屋じゃねぇな。

ご飯の匂いもしないし。

あの隙のないおばさん誰だろう。

と、店員さんに気を取られていると、

「お待たせしました。」

後ろから、更に上品なおじさんが現れた。

カバーが掛かった何かを持ってる。

父さんが穏やかにおじさんに話しかける。

「ご無沙汰してます。今日もお世話になります。」

「いえいえ、お引き立てありがとうございます。」

父さんに挨拶したおじさんがこっちを向いて微笑む。

「亮太様、お初にお目にかかります。テーラー寺島の店主、上咲です。」

寺島さんが苗字か?

うえさきが名前?

おじさん、テーラーって店の寺島うえさきさん?

テーラーって何??

この状態ではスマホの音声検索も気まずくて出来ない。

「亮太、寺島は店名。上咲さんだよ。」

俺の混乱が見て取れたんだろう、父さんがフォローしてくれた。

「う、うえさきさん、こ、こんにch、こんばんわ。」

「亮太様、いらっしゃいませ。こんばんは。
出来ましたスーツのご試着、お願い出来ますか?」

「ス、スーツ!?この部屋でですか?」

急いでソファから立ち上がる。

「はい。この部屋はフィッティングルームも兼ねております。
わたくしがお手伝い致します。
亮太様は鏡の前で真っ直ぐお立ち下さい。」

「えっと、コ、ココら辺でいいですか?
よろしくお願いします。」

「はい。ではまず・・・



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