4 / 32
side 亮太
幕間 市井兄の戦い。①
しおりを挟む◆ ◆ 17:35 ◆◆ side 市井兄
「唐所長甘々・・・」
仕事より、亮太くんが優先だもんな、所長。
俺も健介(弟兼嫁)と外食しよう。
白衣を脱ぎながらスマホを手に取った時に、コンコン、と誰かが研究室のドアをノックする音が聞こえた。
次いで研究室のドアが開いて、人が入って来る。
誰だよ。終業時間だぞ。
「唐所長、居られますか?」
お、見たことある人だった。
・・・と言うか、何でまだ居んの?
「あれ?本社の?唐所長なら退社しましたよ?」
本社の皆さんもお帰り下さい。
「・・・退っ??
いえ、唐所長は、ミーティング途中で席を外されましたので、足りない資料でもあったかと思いまして。
お手伝いしようと思って、こちらに伺ったんです。」
え゛っ。
所長さっき『終わり』って亮太くんに言ってたけど・・・。
「いえ。唐所長は帰りました。本当に。
本当に、先ほど帰りました。」
大切なことなので、念を押して繰り返す。
亮太くんファーストの所長の事だから、スマホに連絡しても無視されるだろうし。
「え?・・・えぇ?
研究所に関する説明の途中だったんですが・・・」
そんな目で見ないで。
所長、本当に帰ったんですって。
「あ~。唐所長、本社との取り決めで残業しないって事になってるって、以前言ってました。(適当)」
あの人もうこの近辺には居ないって。
ってか、亮太くんが来たって事は、“亮太くん溺愛案件” でしょ。
“亮太くん溺愛案件” の所長は絶対捕まえられませんって。
近くに居たとしても絶対無理。
ウッカリつついてみ?
エラい目に遭うって。
皆で帰ろう、今日は。
「では今回の視察に関する説明の続きは?」
「・・・明日以降に・・・なりますね。」
だって俺、今回の視察内容を知らされてないし。
「君では分かりませんか?」
悲壮な顔を向けないで、じっと見られても俺、分かんない。
・・・健介、兄ちゃん超帰りたい・・・
「社内秘として、唐所長から視察内容について詳細は何も聞かされておりませんので、私には分かりかねます。」
聞こえましたか、本社さん達が何の視察に来たか、俺は知りません。
「私達としてはですね。早急に・・・
「いや、私はただの研究員ですので・・・
「しかし、・・・
「だから、私は知らないと・・・
「ですが・・・」
しつこいー!!
知らねぇって!
もう帰れ!
・・・その後30分、本社職員と市井さんとの、どうにもならない攻防が繰り広げられ、市井さんは定時退社と健介(弟兼嫁)との外食をし損ねたという。
唐所長ズルイ!
俺を囮に自分はデートー!!
俺だって、俺だって健介とー!!!
※唐所長的には “市井兄を囮に” とか、そんなつもりは毛頭ないので、ただの二次災害です。
※確かに唐所長は本社と “残業しない・出張しない契約” を結んでいますが、市井兄は知りません。
学会(休日出勤)や出張(外泊)も亮太が一緒に行けないと唐所長は絶対行かないから、市井兄は所長の “亮太くん溺愛案件” と思ってます。
企業的にはちょっと悩みの種。でも撤回して唐所長に辞められるよりはいいし、つつくとエラい目に遭うので目を瞑っています。
10
あなたにおすすめの小説
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる