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表情筋がお亡くなりになっていらっしゃるようです。
ヴァイオレット.1
しおりを挟む白銀のふわふわとした長い髪。
アメジストを溶かしこんだようなキラキラとして涼やかな瞳。
人形師に作られたかのような整った顔立ち。
ヴァイオレット・ループは、噴水の水に写る亡き母の生き写しのような顔をぼんやりと眺めていた。
侯爵家の令嬢であるヴァイオレットはまだ7歳にして表情の変わることの無い、冷めた子供であった。
ヴァイオレットが4歳のときに見目麗しく聡明だった母が亡くなり、優しくよく笑う父は笑うことなど無く仕事に没頭するようになり、家でいつも一人きりで寝て起きてご飯を食べて勉強ばかりしているヴァイオレットからは表情が消えた。
(...ほっぺた、赤くなってる...痛い)
5歳の頃に父が再婚したマリベルはかなりの癇癪持ちでヴァイオレットはいつも暴力を受け、痣だらけだった。だが、ヴァイオレットはあまり気にしてはいなかった...というか、それどころではなかった。
マリベルはアナースタという娘も一緒に連れてきていたのだが、ヴァイオレットに八つ当たりができないと今度はアナースタにまで暴力を振るうのだ。自分が殴られる分には我慢できるが自分よりも幼い義妹が泣きわめきながら殴られているのを見るのは耐えられなかった。
今日も、アナースタの鳴き声が聞こえて駆け付けると義母はアナースタの茶色い髪を引っ張りあげていた。
「お前が不細工だからアレン様が見向きもしないんだよ!!お前が...お前のせいで私までアレン様に捨て置かれるんだ!!」
アレン...父がまた義母をぞんざいに扱ったのだろうか...
義母が手を振りあげたのを見て咄嗟に体が動いて、気がついたら頬に熱と共に痛みが走っていた。
「...なんだい、邪魔するんじゃないよ。その不細工にお仕置きしなきゃいけないんだ。早くどきな!!」
「...お母様、お父様からお手紙がきておりますわ。花束も。」
ヴァイオレットは愛されないといつも嘆いている義母を少しでも落ち着けられたらと思い、ダメもとで時々でいいから義母に手紙や花束を送ってはくれないかと手紙をだした。もちろん、義母の暴力等のことは触れずに。
結果、父は本当にたまにではあるがこうして手紙や花束を送ってくれるようになったわけだが、暴力はいっこうになくなる気配はなかった。
義母はそれを早く言えとだけ言ってそそくさと去って行き、残されたヴァイオレットはアナースタに手を差し伸べた。
「アナースタ、大丈夫...?」
「.........のよ...」
「え?」
「どこいってたのよ!!!!アンタがいないせいで私が殴られたじゃない!!髪が抜けてしまったわ!!このグズ!!」
...さすがあの義母の血を引いているだけあって、アナースタもまた癇癪持ちであった。6歳にしてこれである。
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