巷で噂の冷血令嬢と狂犬騎士

みくり

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騎士たるもの淑女を守らなければいけないものです

ミカエラ.1

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僕はとても感動していた

皇太子である僕はいつも女性の注目の的だった。何もしなくても令嬢たちからは黄色い声が上がり、大人たちはこぞって僕を褒めたたえた。王家の権力や地位を見ているだけで僕自身など見てもいないくせに

そんな僕に、ヴァイオレットは何も興味を示さなかった。庭園で会って最初に目が合ってから1度も目が合わず、僕が皇太子だと分かってからも長い長いまつ毛が上向くことはない

思わずダンスを申し込んでしまったがそれも1度断られた。初めての経験だ
天使のように美しいこの少女が欲しいと思った。逃したくないと心から渇望したのは初めてだ...

「では、私たちは先に失礼する。」

リコレットはこれでもかと言わんばかりに僕を睨みつけてきたが、今はとても気分が良いので見逃してやろう。こいつがヴァイオレットとどのような間柄であっても関係はない
僕は初めて自分が皇太子であることに感謝した。堂々と彼女を自分のものにできるのだから

ちら、とヴァイオレットを見るととても泣きそうな顔をしてリコレットを見ていた。


ダンスホールに着くとちょうど音楽が始まるところだった。僕がヴァイオレットに向き合うと彼女はゆっくりとした動きでダンスを始める姿勢になった

「ヴァイオレット嬢。ダンスのお相手を受け入れてくれてありがとう」
「いえ...私こそ、殿下のお相手など身に余る光栄。感謝いたします」

ぴくりとも動かない無表情で彼女は淡々と礼を口にした

「今夜のパーティーは私の婚約者を見繕うためのものでもあるんだ。まあこのパーティーで決めないというわけではないが、手始めに私と歳の近い者たちに集まってもらったのだ」
「...ならば余計に、私ではなく公爵家の令嬢の方々と踊った方がよろしいですわ。殿下が皇太子と知らずとも皆様、殿下に夢中ですもの」

あんな者達など、君に比べたらただの塵芥だと言いたい。言ってしまったら君はもっと困った顔をするのだろうね

「願いが叶うならば私はあなたとずっと踊っていたい。まさかこんなに美しく、私の理想の女性に出会えるとは思っていなかった」
「大げさです。他にも令嬢は沢山いるのですから、殿下の理想の女性は他にいるはずです」

早く終われ、と思っているのだろうか。リズムが少しずつずれていっている。あぁ、そんなに急いだら...

「きゃっ」

ほら、つまづいてしまう
僕が抱きとめて支えるとヴァイオレットは驚いた顔で僕の腕の中で固まっていて思わず笑いがもれてしまった

「ヴァイオレット嬢、大丈夫?」
「えぇ...ありがとうございます」

ふいに顔を上げたヴァイオレットと間近で視線が絡まった
まさか上を向くとは思わなかったから僕も一瞬固まってしまった
やっと目が合った。紫の瞳を見て嬉しさが腹の奥から込み上げてくるようで...僕は次の瞬間、膝まずいていた

「ヴァイオレット。私と婚約してくれないか」


ちょうど音楽が鳴り終わった瞬間だった。
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