『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ

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最終話:愛しの宮廷魔術師と過ごす誕生日、うさぎ獣人はこう言ってキスをする。

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 シグに店に送ってもらってる最中にさっきの化け物についての説明をしてもらった。
 あれはやっぱり国の魔獣研究施設から逃げ出した被験体で、昨日からシグはそれの対処に追われていたらしい。

 ちなみに何で俺のピンチに駆けつけられたかっていう疑問に関しては、シグは前々からこっそり俺に加護魔法をかけていたらしく、それで気がつけたらしい。今回は助かったけど勝手にこういうことされるとビビるから今度は言えよって約束をした。

「俺は城で討伐の報告をするから、また夜にね」
「おう。またな」

 俺を送り届けてすぐシグは城に戻っていった。去り際にしっかりキスをしていきやがったせいで、見ていた店の仲間から囃し立てられたのは恥ずかしかったし、ムカつくから後でどつく。

 ◇

 そうして迎えた夜のシグの来訪。
 いつも通り戸を叩いたシグが扉を開くタイミングで俺は用意していた物をこいつの顔に突きつける。

「えっ、何?お花??」
「……お、お前を、一生幸せにするから、これからも一緒にいたい」

 シグが何事か分かってないうちに畳み掛けるように言い切る。
 シグの買ってきたのと違って、近所の花屋で見繕ったチープなそれで視線を遮って俺は恥ずかしさを誤魔化した。

 (これ、言うのすごい恥ずかしいじゃねえか。よくこいつ、一ヶ月も連続で言えたな。)

 沈黙がきつくて、俺がどうでもいい事で思考を埋めていたら体が空中に浮く。

「トア、大好き。愛してる。」

 恥も臆面もなく、告げられる言葉に続いて唇が重なる。言葉は聞こえないのに却ってもっと言われてるような気になるそれがしばらく続いた後、少し上がった体温を冷やす間もなくシグが口を開く。

「トアからもしてくれると嬉しい」
「なっ!?」

 俺を抱えたまま目を閉じるシグを見つめてどうするべきか悩んだけど、このまま降ろされないのは困るから、……という言い訳を口にして俺はシグに顔を重ねた。
 こいつみたいにたくさんとか、長時間とかは無理だったからすぐ口を離した俺を見るシグの目は言葉はなくとも嬉しいっていうのが丸わかりで気恥ずかしい。

 いつまでも店でいちゃつくのも落ち着かないので、俺は初めてシグを誘って夕食に連れ出した。

 行きつけの定食屋で飯を食ってからの帰り道、人通りが少ないそこで、シグが俺の腰に手を回す。今までなかった行動に俺は前からの疑問を思い出し口に出した。

「お前、前までこういうのしなかったじゃねえか。何で急にするようになったんだよ……」
「嫌?」
「嫌じゃねえけど……こういう事興味ねえのかと思ってたから」

 一ヶ月間、全く接触してこなかったのにキスを皮切りにこうだ。流石にこの切り替えの速さは気になる。

「占いの本に……」
「は?」
「付き合ってから一ヶ月はベタベタしてはいけませんって書いてあったから」

 返ってきた答えは予想の斜め上すぎて俺は目を見開いた。内容的にそれ占いってより恋愛指南とかじゃねえの?

「う、占いってお前……」
「トアと初めて会った日、たまたま占いで『今日は上を向いているといいことがあるでしょう』って言ってて、そうしてたら本当にトアと出会えたから……」

 ちょっと待てお前それ、まさか国の占星術省とかのお告げじゃなくてテレビの占いのこと言ってんのか?エリート宮廷魔術師様が民放の適当な占い信じてんじゃねえよ。てか自分で占えるだろ。

「今日も、最高の運勢って言ってて、トアとキスできたし、トアからも好きって言ってもらえたし……」
「おい待てお前まさか……ちょっと星座教えろ」

 シグから聞き出したそれは俺と同じ星座で、俺は思わずあの日のように天を仰いだ。
 城に呼び出され、階段から落ちた時にシグに抱き止められたあの時と同じ光景が目の前に広がる。

 上を見上げて出会った相手、シグの顔が。

 俺を見つめて幸せそうに笑うシグを見てたら何だか力が抜けて、全部どうでもいいような気持ちになってきた。誰にでもあてはまる様な適当な占い一つでこんな事が起きるなんて誰も予想できない。
 とりあえず明日からはあのチャンネルを見る様にしようかと心に決めて俺はもう一度シグと唇を重ねた。

 ◇

 うさぎ獣人用の狭い家の中の一室。
 俺にはちょうどいいが背の高いシグにとっては狭いこの場所にこいつがきたのは今日が初めてだ。
 花束みたいな豪華なケーキを目の前にした今日は俺の誕生日。
 初めてのデートでもあるこの日、シグが早速口を開く。

「トア、誕生日おめでとう。これ受け取ってくれると嬉しい」
「ありがとな。開けてもいいか?」

 シグから渡された包みはプレゼントというには少し渋い作りの箱で、開くと中には仕事で使う工具が入っていた。見た目は普段使ってるのとそう変わらないが、触ると質が違うのが一目瞭然だ。

「すごい使いやすいし、丈夫で助かるけど、これ……高かっただろ。」
「トアのためだから問題ないよ」

 工具に使われているのはおそらくドラゴンの骨から取れる貴重な鉱物だ。こんな物アクセサリーサイズでも目玉が飛び出る値段のはずだが、シグはなんてことのない様に笑っている。
 これ以上値段のことについていうのは野暮って物だから俺はそれを箱にしまいながらシグに笑いかける。

「シグ、ありがとな。大事にする。」
「喜んでもらえて嬉しい」

 シグに近寄って、腕を引いて屈ませて俺はこいつの頬に頬にキスをする。

「お前の誕生日、こんな高えのは期待すんなよ。」
「トアから貰えるなら何でも嬉しいよ」

 馬鹿高いプレゼントに見返りひとつ望まない姿勢に少し気が引ける。けど、シグらしいといえばそうだった。
 ケーキを切り分けながら俺はふと浮かんだ疑問を口にする。

「そういやお前、俺のどこが好きなの?疑ってるわけじゃねえけどいまいちわかんねえからさ」

 好きになったきっかけは聞いたけど、こんなにストレートに愛をぶつけられる理由はいまだにわからないままだった。

「最初は、すごく可愛いなって思って……」

 まあ、俺は天下のうさぎ獣人だからな。可愛さでは右に出る種族はそんなにいない。強いて言えば猫獣人くらいか?まああいつらは大人になると可愛いより美人が多くなるから一概には言えねえけど。

「段々話してて、真っ直ぐなところとか、花を綺麗に飾ってくれるところとか、一つ気がつくとどんどん好きなところが増えていって……」
「お、おう……」

 プロポーズを振り続けてた一ヶ月間、こいつはそう思ってたのか。どおりで断っても断っても迫ってきたわけだ。

「付き合ってからは、美味しそうにお菓子を食べるところとか、あと仕事の話を楽しそうにするところがかっこよくて、今はトアの全部が好き」
「そ、そうかよ……ありがとな」

 可愛いとはよく言われるが、かっこいいと言われたのは初めてだった。少し照れる。

「俺他のうさぎ獣人みてえに可愛くねえけど、そこはいいのかよ?」
「どうして?トアはずっと可愛いよ」

 真面目に答えられると恥ずかしい。だけど、俺を俺として、まっすぐ見つめてくる紫の瞳が愛しくてたまらない。

「俺も、シグの事……す、好きだから。どこがとか、うまくは言えねえけど」

 最初は、とんでもない面倒なやつだと思ってたのに一緒に過ごしているうちにどんどん居心地が良くなって、気がついたらこいつが俺以外を見るのが嫌になっていた。そして今では何でかわからないけどとても大事で大好きな相手になっているのだから人生というのはわからないものだ。

 今日の占いのアドバイスは素直になる事。
 相変わらず占いってより恋愛指南じゃねえかとは思うけど、俺は気持ちに素直になって、目の前の愛しい銀髪を撫で今度は唇にキスを落とした。
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