51 / 131
2年2学期
51話: お誕生日会にご招待⑥
しおりを挟む
クリスフィアさんの誕生日会の翌日、少し窮屈な感覚を覚えながら俺は目を覚ました。
「あれ?俺正装着たまま寝てた……?」
昨日の誕生日会から帰り道の記憶がない。もしかしてカイが送ってくれたのかも?今日学校でカイに聞いてみようかな。
そんな事を考えつつ、俺は少しガタつく体を引きずってシャワーを浴びる。正装のまま寝たせいで凝った体に温かいお湯が沁みた。バスルームから出て、タオルで髪を拭きつつ、俺は机の上にある錠剤の瓶を掴む。中から取り出した薬を口に入れる前、ほんの少し躊躇うけど、この時期は仕方ないよね。着替えてる間に効いてきた薬がもたらすほんの少しの眠気を抱えて、俺は朝食を食べ学校に向かった。
◇
今日の授業はペア授業だ。俺はルカと授業の準備をしながら昨日参加した誕生日会の話をする。
「それでね、クリスフィアさんがね……」
「……」
ルカは無口だけど、無愛想ってわけじゃない。俺の話に洒落た言葉を返したりはしないけど、今もずっと俺の目を見て真剣に話を聞いてくれる。そういうところが居心地良くて俺は結構ルカと話すのが好き。そうして色々話してる内に俺はあるとんでもない事実に気がつく。
(俺、ルカの誕生日知らない……)
仲良くなって1年経つのにこんな重大な見落としがあったなんて……自慢じゃないけど俺は友達の誕生祝いを欠かした事がない。仕送りのお小遣いと短期バイトの使い道の大半がこういう事のための費用だ。なのに、言い訳になっちゃうけど……ルカと誕生日のイメージがあまりにも結びつかなくて、今の今まで話題に出す事がなかった。時期的に過ぎてる可能性が高いけど奇跡的に3月末とかならまだ間に合うし、過ぎてても後からごめんって渡そう、そう思って
「る……ルカって誕生日いつ?」
って聞いてみたんだけど
「……覚えてない」
なんて事ない調子で、とんでもない返事が返ってきたから俺は言葉を失った。
「えっ?それって……どういう」
「……誕生日ってなんに使うの?」
「あ……」
ルカから心底不思議そうな顔で尋ねられ、俺は悟る。おそらくルカは一度も誕生日を祝われる事がなかったということを。冬月祭のプレゼント交換も初めてだって言ってたから予想できないことではないのかもしれないけど、それはあまりに悲しい事実だった。勝手に悲しむのも失礼かと思ったけど、思うのは止められない。
「学生証見せて?そこに載ってるから……あ、4月なんだね。春生まれなんだ!去年渡せなかった分奮発するから楽しみにしてて?」
見せてもらった学生証の無機質な印字をなぞりながら、俺はルカに笑いかける。
「……わかった……?」
ルカは、俺の言ってる意味がよくわかってないみたいだけど返事をしてくれた。その素直な姿に心が苦しくなる。ルカの家族ってどんな人なんだろう。物語では常に悪役として描かれる邪竜。竜族にごく稀に生まれる異端とは聞くけど、本当にそんなに悪い存在なのかな?ルカを見てると少なくとも俺はそう思えない。子供の誕生日すら祝ってくれない親ってどういうことなんだろう。そんな考えが頭の中をぐるぐるして俺はつい
「ルカの……家族って……」
と思ったことを口にしていた。俺は自分で吐いた言葉が耳に入った瞬間まずいって思ったけど
「……親と弟……がいる」
ルカは感情のこもってない目で何かを思い出すように答えてくれた。
「お、弟……いるんだ」
聞いたくせに、なんて答えていいのかわからなくて、俺は一番無難そうな言葉を聞き返す。
「……どんな子?ルカに似てる?」
「………………俺より弱い」
最強の魔力を持つルカのその回答は、世界中の人に当てはまる事なので弟君の特徴は全く特定できない。でもそれ以上突っ込んだ事を聞いていいのか悩んでいるうちに授業が始まり、全てが曖昧なままこの話は終わってしまう。春の訪れ、俺にとって少し憂鬱な季節が終わるまでまだもう少しかかりそうだった。
「あれ?俺正装着たまま寝てた……?」
昨日の誕生日会から帰り道の記憶がない。もしかしてカイが送ってくれたのかも?今日学校でカイに聞いてみようかな。
そんな事を考えつつ、俺は少しガタつく体を引きずってシャワーを浴びる。正装のまま寝たせいで凝った体に温かいお湯が沁みた。バスルームから出て、タオルで髪を拭きつつ、俺は机の上にある錠剤の瓶を掴む。中から取り出した薬を口に入れる前、ほんの少し躊躇うけど、この時期は仕方ないよね。着替えてる間に効いてきた薬がもたらすほんの少しの眠気を抱えて、俺は朝食を食べ学校に向かった。
◇
今日の授業はペア授業だ。俺はルカと授業の準備をしながら昨日参加した誕生日会の話をする。
「それでね、クリスフィアさんがね……」
「……」
ルカは無口だけど、無愛想ってわけじゃない。俺の話に洒落た言葉を返したりはしないけど、今もずっと俺の目を見て真剣に話を聞いてくれる。そういうところが居心地良くて俺は結構ルカと話すのが好き。そうして色々話してる内に俺はあるとんでもない事実に気がつく。
(俺、ルカの誕生日知らない……)
仲良くなって1年経つのにこんな重大な見落としがあったなんて……自慢じゃないけど俺は友達の誕生祝いを欠かした事がない。仕送りのお小遣いと短期バイトの使い道の大半がこういう事のための費用だ。なのに、言い訳になっちゃうけど……ルカと誕生日のイメージがあまりにも結びつかなくて、今の今まで話題に出す事がなかった。時期的に過ぎてる可能性が高いけど奇跡的に3月末とかならまだ間に合うし、過ぎてても後からごめんって渡そう、そう思って
「る……ルカって誕生日いつ?」
って聞いてみたんだけど
「……覚えてない」
なんて事ない調子で、とんでもない返事が返ってきたから俺は言葉を失った。
「えっ?それって……どういう」
「……誕生日ってなんに使うの?」
「あ……」
ルカから心底不思議そうな顔で尋ねられ、俺は悟る。おそらくルカは一度も誕生日を祝われる事がなかったということを。冬月祭のプレゼント交換も初めてだって言ってたから予想できないことではないのかもしれないけど、それはあまりに悲しい事実だった。勝手に悲しむのも失礼かと思ったけど、思うのは止められない。
「学生証見せて?そこに載ってるから……あ、4月なんだね。春生まれなんだ!去年渡せなかった分奮発するから楽しみにしてて?」
見せてもらった学生証の無機質な印字をなぞりながら、俺はルカに笑いかける。
「……わかった……?」
ルカは、俺の言ってる意味がよくわかってないみたいだけど返事をしてくれた。その素直な姿に心が苦しくなる。ルカの家族ってどんな人なんだろう。物語では常に悪役として描かれる邪竜。竜族にごく稀に生まれる異端とは聞くけど、本当にそんなに悪い存在なのかな?ルカを見てると少なくとも俺はそう思えない。子供の誕生日すら祝ってくれない親ってどういうことなんだろう。そんな考えが頭の中をぐるぐるして俺はつい
「ルカの……家族って……」
と思ったことを口にしていた。俺は自分で吐いた言葉が耳に入った瞬間まずいって思ったけど
「……親と弟……がいる」
ルカは感情のこもってない目で何かを思い出すように答えてくれた。
「お、弟……いるんだ」
聞いたくせに、なんて答えていいのかわからなくて、俺は一番無難そうな言葉を聞き返す。
「……どんな子?ルカに似てる?」
「………………俺より弱い」
最強の魔力を持つルカのその回答は、世界中の人に当てはまる事なので弟君の特徴は全く特定できない。でもそれ以上突っ込んだ事を聞いていいのか悩んでいるうちに授業が始まり、全てが曖昧なままこの話は終わってしまう。春の訪れ、俺にとって少し憂鬱な季節が終わるまでまだもう少しかかりそうだった。
10
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中
油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。
背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。
魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。
魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。
少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。
異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。
今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。
激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる