50 / 131
2年2学期
50話: お誕生日会にご招待⑤sideカイ
しおりを挟む
誕生日パーティの終わり、姉貴達に別れを告げた俺とフレンは学園に向かう電車に乗り込んだ。夕方の、人のほとんどいねぇ車内で並んで座る。初めのうちは今日のパーティの話を楽しそうにしていたフレンの声がだんだん静かになり、やがて俺の方にやわらかな体温が寄りかかる。
すぅすぅと小さな寝息を立てて体重を預けてくるその姿はあまりに無防備で、目が離せない。俺はフレンの肩に静かに手を回しそっと支えた。電車の揺れで倒れるのを防ぐため、それ以外の他意はねぇなんて言って前なら誤魔化してたけど今は違う。少しでもこの体温を近くで感じたいから、明確な意思を持って俺は手を伸ばした。まだ、起きてるこいつの前では上手くできねぇけど、今だけはそれを許されたかった。
最寄りについても起きなかったフレンを姫抱きにして俺は電車を降りる。改札を出るため、フレンの鞄からパスケースを拝借する時に鞄の端で何かが揺れ、俺はそれを反射的に目で追った。
「これ……」
冬月祭で、こいつに渡した怪我避けのお守りがキーケースにつけられてるのが見えた。
こんなことでぬか喜びするのはだせぇってわかってる。けど、嬉しい。思わず走り回りたくなるほど心臓が跳ねる。バスの本数が少ねぇのもあって寮のある学園までは徒歩移動だ。腕に抱えたフレンの花のような香りに心がいっぱいになりながら、俺は俺の心を掴んではなさないこの半妖精を起こさないようゆっくり歩いた。
◇
帰り道をわざと遠回りしてたどり着いたフレンの所属する寮の入り口で、俺は一番見たくない顔に迎えられた。
「フレンを送り届けてくれて感謝する。あとはこちらで引き取るよ」
そう言ってさも当たり前というように腕を差し出すクロードの態度に心臓がひりつく。俺はそれをわざと無視して廊下を進んだ。
「……どういうつもりだ?」
それを受けて、フレンが一番信頼して慕ってる自慢の幼馴染様が、こいつの前じゃ絶対出さないような低い声で俺に問いかける。いや、これはそんな甘いもんじゃなく、威嚇だな。前にも思ったが、落ち着いているようでこいつ、意外と煽り耐性がないみてぇだ。ルカと違って魔力圧は出さねぇけど、ピリピリとした威圧が隠せてねぇ。
「どうもなにも、こいつ寝てっから起こさないよう運んでやるだけだけど?」
あまり騒ぐと目ぇ覚ましちまうぞ?言外にそう滲ませて俺はそれをかわす。
「今日のご飯何かな?」
「こら!廊下は走らない!」
「……っ!」
夕食の時間だからか、さっきまで2人きりだったエントランスに人が集まってくる。
「それじゃ、俺はここで」
人の往来で威圧を解いた、優等生の仮面を外せない目の前の男の隙をついて俺はフレンの部屋に向かった。ネームプレートでフレンの名前を確認し、カバンに入ってた鍵で扉を開く。
初めて入った部屋はどこもかしこもフレンの匂いでいっぱいで、眩暈がしそうだった。呼吸をするたびに跳ね上がる心臓と熱くなる腹の底の感覚に俺は長居はできない事を悟る。
皺になるが、正装を脱がせる勇気も覚悟もない俺は、フレンをベッドに乗せて部屋を後にする。
あのままクロードに任せてたら、あいつなら脱がしてやったのかもしれない。その光景が自然に想像できてしまい、上がった体温が一気に下がる。奴のことを考えるたびにこうだ。怖いわけじゃねぇ。フレンがそういう事を許す相手だろうって事が一番きつくて胸に刺さる。
そのまま寮を後にし、俺は夜風に身を任せる。身につけた正装に残るフレンの残り香はしばらく消えてくれそうになかった。
すぅすぅと小さな寝息を立てて体重を預けてくるその姿はあまりに無防備で、目が離せない。俺はフレンの肩に静かに手を回しそっと支えた。電車の揺れで倒れるのを防ぐため、それ以外の他意はねぇなんて言って前なら誤魔化してたけど今は違う。少しでもこの体温を近くで感じたいから、明確な意思を持って俺は手を伸ばした。まだ、起きてるこいつの前では上手くできねぇけど、今だけはそれを許されたかった。
最寄りについても起きなかったフレンを姫抱きにして俺は電車を降りる。改札を出るため、フレンの鞄からパスケースを拝借する時に鞄の端で何かが揺れ、俺はそれを反射的に目で追った。
「これ……」
冬月祭で、こいつに渡した怪我避けのお守りがキーケースにつけられてるのが見えた。
こんなことでぬか喜びするのはだせぇってわかってる。けど、嬉しい。思わず走り回りたくなるほど心臓が跳ねる。バスの本数が少ねぇのもあって寮のある学園までは徒歩移動だ。腕に抱えたフレンの花のような香りに心がいっぱいになりながら、俺は俺の心を掴んではなさないこの半妖精を起こさないようゆっくり歩いた。
◇
帰り道をわざと遠回りしてたどり着いたフレンの所属する寮の入り口で、俺は一番見たくない顔に迎えられた。
「フレンを送り届けてくれて感謝する。あとはこちらで引き取るよ」
そう言ってさも当たり前というように腕を差し出すクロードの態度に心臓がひりつく。俺はそれをわざと無視して廊下を進んだ。
「……どういうつもりだ?」
それを受けて、フレンが一番信頼して慕ってる自慢の幼馴染様が、こいつの前じゃ絶対出さないような低い声で俺に問いかける。いや、これはそんな甘いもんじゃなく、威嚇だな。前にも思ったが、落ち着いているようでこいつ、意外と煽り耐性がないみてぇだ。ルカと違って魔力圧は出さねぇけど、ピリピリとした威圧が隠せてねぇ。
「どうもなにも、こいつ寝てっから起こさないよう運んでやるだけだけど?」
あまり騒ぐと目ぇ覚ましちまうぞ?言外にそう滲ませて俺はそれをかわす。
「今日のご飯何かな?」
「こら!廊下は走らない!」
「……っ!」
夕食の時間だからか、さっきまで2人きりだったエントランスに人が集まってくる。
「それじゃ、俺はここで」
人の往来で威圧を解いた、優等生の仮面を外せない目の前の男の隙をついて俺はフレンの部屋に向かった。ネームプレートでフレンの名前を確認し、カバンに入ってた鍵で扉を開く。
初めて入った部屋はどこもかしこもフレンの匂いでいっぱいで、眩暈がしそうだった。呼吸をするたびに跳ね上がる心臓と熱くなる腹の底の感覚に俺は長居はできない事を悟る。
皺になるが、正装を脱がせる勇気も覚悟もない俺は、フレンをベッドに乗せて部屋を後にする。
あのままクロードに任せてたら、あいつなら脱がしてやったのかもしれない。その光景が自然に想像できてしまい、上がった体温が一気に下がる。奴のことを考えるたびにこうだ。怖いわけじゃねぇ。フレンがそういう事を許す相手だろうって事が一番きつくて胸に刺さる。
そのまま寮を後にし、俺は夜風に身を任せる。身につけた正装に残るフレンの残り香はしばらく消えてくれそうになかった。
20
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
俺の異世界先は激重魔導騎士の懐の中
油淋丼
BL
少女漫画のような人生を送っていたクラスメイトがある日突然命を落とした。
背景の一部のようなモブは、卒業式の前日に事故に遭った。
魔王候補の一人として無能力のまま召喚され、魔物達に混じりこっそりと元の世界に戻る方法を探す。
魔物の脅威である魔導騎士は、不思議と初対面のようには感じなかった。
少女漫画のようなヒーローが本当に好きだったのは、モブ君だった。
異世界に転生したヒーローは、前世も含めて長年片思いをして愛が激重に変化した。
今度こそ必ず捕らえて囲って愛す事を誓います。
激重愛魔導最強転生騎士×魔王候補無能力転移モブ
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる