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3年2学期
116話: 文化祭、波乱の学園演劇とライブ⑤
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「いたた……あー、やっちゃった」
チアライブ終了後、俺は会場裏口から出て1人保健室に向かっていた。本当は撤収作業があるんだけど、ライブ中の俺の異変に気がついたメンバーから保健室に行くように言われて作業を免除してもらったんだよね。カイはついてきてくれようとしたけど、カイがいないと機材が運べないから断って今に至る感じ。
ちなみにこの裏口からのルートは一般開放はされてなくて、ライブで熱狂した観客が集まってくることもない。去年の学園演劇ではそれで結構苦労したけどちゃんと対策がされたみたいだ。
保健室までの静かな道を歩いていたら不意にくすぐるような甘い声が俺の耳に届く。
「ライブすごく良かったよ。フレンに応援してもらえて、俺凄く元気が出たなぁ」
「……ジン」
誰もいないはずの廊下に当然のように佇んで彼はこちらに笑いかけてきた。関係者以外知らないはずのここをなんでジンが知ってるのかと思ったけど、まあジンならありえるのであまり疑問には思わない。
「脚、怪我してるんでしょ?お手をどうぞ」
「……はぁ、どうせなら運んでくれたりしないの?」
「そういうのは俺の管轄じゃないからね。でも1人よりはいいでしょ?」
そう言ってヘラヘラ笑いながらジンは俺に手を差し出す。
「まあいいけど、支えるくらいはしてよね」
「任せて、フレン。ああ、不安だったら抱きついてくれてもいいよ?」
「絶対そんなことしないから!」
相変わらず調子は軽いし、性格も良いとは言い難い。だけど繋いだ手は温かくてその体温に心が落ち着く自分もいる。そんな、唯一俺の孤独を知っている、奇妙な繋がりの相手。
「フレンから招待してもらえて俺すごく嬉しかったよ。ありがとう」
「別に……チケット余ってたからたまたまだけど……」
ジンから珍しくまっすぐなお礼を言われて、俺はそのむず痒さを誤魔化すように目を逸らした。
チケットを誰に渡そうか考えてる時、メッセージアプリに残っていたジンから貰った翻訳が目に入った。去年のルナソールの学園演劇の題材である『邪竜の王と夢魔の姫』の翻訳は、夢魔の偏見に晒されてる俺にとって心の支えになるような温かい物語だった。とても気に入ってて今でもよく読み返すそれが目に止まった時、俺はそれのお返しをしていない事を思い出した。ジンからは見返りはいらないって言われてたけど、貰いっぱなしでは居心地が悪い。だから、俺は前にジンが体育祭で俺に応援して欲しいって言ってた軽口に応える形でチケットを贈ることにした。
「ライブ中手を振るの迷ってたの気づいたよ。フレンって素直で可愛いよね」
「……っ、変なとこばっかり見ないでよね!本当ジンって性格悪い」
招待した手前、何かアピールしたほうがいいかなって思ったけど気恥ずかしくなってやめたのをバッチリ見られていたらしい。わざわざ指摘してくるところが本当に意地悪だと思う。
「褒めてるんだけどなぁ。それに、今日もこれをつけててくれて嬉しいよ」
「……ジンから貰ったのを差し引いたら、使いやすいし……お気に入りだから」
「俺のセンス気に入ってくれたんだ?フレンに似合うものを選んだ甲斐があったなぁ」
今の俺の言葉からよくこんなポジティブな解釈ができるよね。俺はジンの視線の先、前に冬月祭のプレゼントでもらった髪飾りの不快じゃない重さを感じながら、呆れてため息をつく。
保健室までの少し心細い道のりはいつの間にか面倒だけど寂しくはないものに変わっていた。
◇
「フレンっ大丈夫か?」
保健室で俺が治療を受けていたら、扉を勢いよく開けてクロードが飛び込んできた。
「あ、クロード!うん、大丈……」
「……っ!?なんでお前がここにいるんだ……?」
俺が返事を返す前にクロードが俺の横のジンを見て固まる。その視線からこの反応が友好的な感情ではないことは誰が見ても明らかだ。
「久しぶり幼馴染君。体育祭以来かな?その節はどうも」
「っ、俺の名前はクロードだ。そんな事より何故お前がフレンの横に……」
「一応、保健室に来るの手伝ってくれたんだよね。……まあなんで関係者通路を知ってたかはわかんないけど」
クロードが警戒心を露わにしてるから、それを緩和しようと俺は説明を挟む。
「そういう事。まだ、何もしてないから安心してくれていいよ?クロード君」
「……っお前」
なんだけど、ジンがなんでか煽るような口調でそんな事を言うからクロードの表情はますます険しくなっていく。なんでこんな事言うかな。確か前にクリスフィアさんの誕生日会でもカイに対してこんな感じだったし、性格悪いのは分かってるけど、本当にやめて欲しい。
俺がこんな感じでため息をついていたらジンが耳元に口を寄せてこう呟く。
「お迎えが来たみたいだから俺はそろそろ帰るね。お大事に」
その距離の近さに俺が文句を言う前に、優雅な仕草で手を振ってジンは保健室を後にした。
後にはいつもジンの身に纏っている良い香りだけが残っている。あまりに一瞬の出来事でまだ俺が上手く状況が飲み込めていない中、保健室の先生がそろそろ帰って欲しいと声をかけてきて、俺とクロードも保健室を出ることになった。
チアライブ終了後、俺は会場裏口から出て1人保健室に向かっていた。本当は撤収作業があるんだけど、ライブ中の俺の異変に気がついたメンバーから保健室に行くように言われて作業を免除してもらったんだよね。カイはついてきてくれようとしたけど、カイがいないと機材が運べないから断って今に至る感じ。
ちなみにこの裏口からのルートは一般開放はされてなくて、ライブで熱狂した観客が集まってくることもない。去年の学園演劇ではそれで結構苦労したけどちゃんと対策がされたみたいだ。
保健室までの静かな道を歩いていたら不意にくすぐるような甘い声が俺の耳に届く。
「ライブすごく良かったよ。フレンに応援してもらえて、俺凄く元気が出たなぁ」
「……ジン」
誰もいないはずの廊下に当然のように佇んで彼はこちらに笑いかけてきた。関係者以外知らないはずのここをなんでジンが知ってるのかと思ったけど、まあジンならありえるのであまり疑問には思わない。
「脚、怪我してるんでしょ?お手をどうぞ」
「……はぁ、どうせなら運んでくれたりしないの?」
「そういうのは俺の管轄じゃないからね。でも1人よりはいいでしょ?」
そう言ってヘラヘラ笑いながらジンは俺に手を差し出す。
「まあいいけど、支えるくらいはしてよね」
「任せて、フレン。ああ、不安だったら抱きついてくれてもいいよ?」
「絶対そんなことしないから!」
相変わらず調子は軽いし、性格も良いとは言い難い。だけど繋いだ手は温かくてその体温に心が落ち着く自分もいる。そんな、唯一俺の孤独を知っている、奇妙な繋がりの相手。
「フレンから招待してもらえて俺すごく嬉しかったよ。ありがとう」
「別に……チケット余ってたからたまたまだけど……」
ジンから珍しくまっすぐなお礼を言われて、俺はそのむず痒さを誤魔化すように目を逸らした。
チケットを誰に渡そうか考えてる時、メッセージアプリに残っていたジンから貰った翻訳が目に入った。去年のルナソールの学園演劇の題材である『邪竜の王と夢魔の姫』の翻訳は、夢魔の偏見に晒されてる俺にとって心の支えになるような温かい物語だった。とても気に入ってて今でもよく読み返すそれが目に止まった時、俺はそれのお返しをしていない事を思い出した。ジンからは見返りはいらないって言われてたけど、貰いっぱなしでは居心地が悪い。だから、俺は前にジンが体育祭で俺に応援して欲しいって言ってた軽口に応える形でチケットを贈ることにした。
「ライブ中手を振るの迷ってたの気づいたよ。フレンって素直で可愛いよね」
「……っ、変なとこばっかり見ないでよね!本当ジンって性格悪い」
招待した手前、何かアピールしたほうがいいかなって思ったけど気恥ずかしくなってやめたのをバッチリ見られていたらしい。わざわざ指摘してくるところが本当に意地悪だと思う。
「褒めてるんだけどなぁ。それに、今日もこれをつけててくれて嬉しいよ」
「……ジンから貰ったのを差し引いたら、使いやすいし……お気に入りだから」
「俺のセンス気に入ってくれたんだ?フレンに似合うものを選んだ甲斐があったなぁ」
今の俺の言葉からよくこんなポジティブな解釈ができるよね。俺はジンの視線の先、前に冬月祭のプレゼントでもらった髪飾りの不快じゃない重さを感じながら、呆れてため息をつく。
保健室までの少し心細い道のりはいつの間にか面倒だけど寂しくはないものに変わっていた。
◇
「フレンっ大丈夫か?」
保健室で俺が治療を受けていたら、扉を勢いよく開けてクロードが飛び込んできた。
「あ、クロード!うん、大丈……」
「……っ!?なんでお前がここにいるんだ……?」
俺が返事を返す前にクロードが俺の横のジンを見て固まる。その視線からこの反応が友好的な感情ではないことは誰が見ても明らかだ。
「久しぶり幼馴染君。体育祭以来かな?その節はどうも」
「っ、俺の名前はクロードだ。そんな事より何故お前がフレンの横に……」
「一応、保健室に来るの手伝ってくれたんだよね。……まあなんで関係者通路を知ってたかはわかんないけど」
クロードが警戒心を露わにしてるから、それを緩和しようと俺は説明を挟む。
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