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3年2学期
117話: 文化祭、波乱の学園演劇とライブ⑥
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「重くない?大丈夫?」
「……ああ、問題ない」
保健室から寮に帰る帰り道、俺はクロードにお姫様抱っこで運んでもらっていた。今回は痛め方が悪くておんぶだと難しかったからちょっと恥ずかしいけどこの体勢になったんだよね。痛み自体はクロードが鎮痛魔法をかけてくれたから大丈夫なんだけど、歩いて帰るのは許してもらえなかった。
なんとなく空気が重くて、俺はそれを紛らわせるために軽い話題を振ることにした。
「さっきのさ、いつもジンってあんな感じだから気にしないで良いからね」
「それは……別に気にしてないが、それよりフレン、あいつに付き纏われてるんじゃないのか?チケット制のライブにまで来て……」
クロードの眉間の皺が深くなる。どうやら彼はジンに対して深い誤解をしてるみたいだった。確かに前俺はジンの事をストーカー的な感じって言ったことがあるけれど、最近はそこまでではなくなっている。
「いや、あれは俺がチケットあげたから来てただけで、変な意味はないと思うよ」
「……な、どうしてそんな事をしたんだ……?」
俺はクロードの懸念を晴らそうと思っただけなんだけど、クロードは信じられないと言った顔で俺を見つめる。
「あー、話せば長いんだけど、今年の夏星祭色々あってジンと行くことになってさ、その時に少し借りができたからそのお礼的な感じ」
「……っ!?あ、あいつと2人で、行ったのか……?それに連絡先まで……」
「う、うん。あ!でも仕方なくっていうか成り行きでだから!!」
俺の回答にクロードが絶句して目を見開いたので、俺は自分の人選センスにドン引きされないように慌てて補足を付け足した。
「そ、そんな事よりさ、さっきは助けてくれてありがとう。まだちゃんとお礼言えてなかったから」
この気まずさを誤魔化すために加えて、やっと落ち着いて言えるから。俺はクロードの目を見てそう言った。
「クロードがいなかったら脚だけじゃすまなかったし、いつも本当にありがとう」
この脚もルカの魔法でじゃなくて、舞台に飛び込んだ衝撃で痛めたものだから、クロードが来てくれたお陰で他は一切怪我をしてない。その気持ちを込めて俺はクロードに笑いかけた。
「……間に合ってよかった……が、もう二度とあんなことはしないでくれ」
だけど返ってきた言葉は思っていたよりもずっと重くて、俺はここで初めてクロードの腕が震えていることに気がつく。
「ごめん、クロード。心配かけて」
「……謝って欲しいわけじゃないんだ」
これは意地悪とかじゃなくて、本気で俺のことを心配してる言葉。だからこそ俺は、なんて答えたらクロードが安心してくれるのかわからなかった。
「……あの時、ルカが暴走してるのに気がついたの俺だけで、気がついたら勝手に体が動いてて……」
「……フレン」
せめて理由を伝えてみようと言葉を重ねたけれど、苦しそうな声で名前を呼ばれて、俺はそれ以上何も言えなくなる。
「やはり、あいつは危険だ。……もう関わるのはやめてほしい」
「……でも、ルカも反省してたし、ちゃんと後で謝るって……っ」
あまりルカを悪く思ってほしくなくて、俺はフォローの言葉を口にした。その途中で俺を包む腕の力が強くなり、思わず声が漏れる。
「クロード、痛い……」
「……っ!?す、すまない」
俺がそう言うと、クロードからひゅっと息を呑む音が聞こえて、すぐに痛みはなくなった。掴まれた腰と太腿に締め付けられた感覚だけが残っている。
「っ、フレン……もう痛くないか?」
クロードから初めて見るような青ざめた顔でそう聞かれて、俺はさっきのがわざとじゃないことを確信する。クロードはそんな事しないし、きっと俺が余計な心配をかけたからつい力がこもっちゃっただけだよね。
「うん、大丈夫!平気!」
俺はクロードが安心してくれるように、彼の肩口に頭を擦り寄せて笑いかける。その後もクロードの言葉に安心してもらえるように返事を重ねながら、寮への道のりは過ぎていった
◇
「あー、また痛くなってきたかも……」
クロードから自室に送ってもらった後、俺はシャワーを浴びながら脚をさすっていた。かけてもらった鎮痛魔法が、温まった事できれてきたみたいだ。
そういえば俺去年も脚痛めてた気がするんだけど、もしかして文化祭に呪われてたりする?そんなくだらない事を考えながら髪を濡らしてシャンプーを手に取る。
「明日、ルカちゃんと謝れるかな?」
髪を覆う泡を流しつつ、俺は明日の学園演劇反省会に思いを馳せた。ライブを見にきてはくれたけど、楽屋でのルカはかなり動揺してたし、そのショックを考えると少し心配だ。
「けど、とりあえず今日はよく頑張ったし、あとは明日考えよっかな」
シャワーを止め、脱衣所でタオルに身を包みながら俺はそう呟く。学園演劇での事故に加えて全力でライブしたからもうクタクタだった。正直もう寝てしまいたい。
半分寝ながら髪を乾かして、俺はたった数時間だけど長かった文化祭の思い出を振り返りながら今日一日に幕を下ろした。
「……ああ、問題ない」
保健室から寮に帰る帰り道、俺はクロードにお姫様抱っこで運んでもらっていた。今回は痛め方が悪くておんぶだと難しかったからちょっと恥ずかしいけどこの体勢になったんだよね。痛み自体はクロードが鎮痛魔法をかけてくれたから大丈夫なんだけど、歩いて帰るのは許してもらえなかった。
なんとなく空気が重くて、俺はそれを紛らわせるために軽い話題を振ることにした。
「さっきのさ、いつもジンってあんな感じだから気にしないで良いからね」
「それは……別に気にしてないが、それよりフレン、あいつに付き纏われてるんじゃないのか?チケット制のライブにまで来て……」
クロードの眉間の皺が深くなる。どうやら彼はジンに対して深い誤解をしてるみたいだった。確かに前俺はジンの事をストーカー的な感じって言ったことがあるけれど、最近はそこまでではなくなっている。
「いや、あれは俺がチケットあげたから来てただけで、変な意味はないと思うよ」
「……な、どうしてそんな事をしたんだ……?」
俺はクロードの懸念を晴らそうと思っただけなんだけど、クロードは信じられないと言った顔で俺を見つめる。
「あー、話せば長いんだけど、今年の夏星祭色々あってジンと行くことになってさ、その時に少し借りができたからそのお礼的な感じ」
「……っ!?あ、あいつと2人で、行ったのか……?それに連絡先まで……」
「う、うん。あ!でも仕方なくっていうか成り行きでだから!!」
俺の回答にクロードが絶句して目を見開いたので、俺は自分の人選センスにドン引きされないように慌てて補足を付け足した。
「そ、そんな事よりさ、さっきは助けてくれてありがとう。まだちゃんとお礼言えてなかったから」
この気まずさを誤魔化すために加えて、やっと落ち着いて言えるから。俺はクロードの目を見てそう言った。
「クロードがいなかったら脚だけじゃすまなかったし、いつも本当にありがとう」
この脚もルカの魔法でじゃなくて、舞台に飛び込んだ衝撃で痛めたものだから、クロードが来てくれたお陰で他は一切怪我をしてない。その気持ちを込めて俺はクロードに笑いかけた。
「……間に合ってよかった……が、もう二度とあんなことはしないでくれ」
だけど返ってきた言葉は思っていたよりもずっと重くて、俺はここで初めてクロードの腕が震えていることに気がつく。
「ごめん、クロード。心配かけて」
「……謝って欲しいわけじゃないんだ」
これは意地悪とかじゃなくて、本気で俺のことを心配してる言葉。だからこそ俺は、なんて答えたらクロードが安心してくれるのかわからなかった。
「……あの時、ルカが暴走してるのに気がついたの俺だけで、気がついたら勝手に体が動いてて……」
「……フレン」
せめて理由を伝えてみようと言葉を重ねたけれど、苦しそうな声で名前を呼ばれて、俺はそれ以上何も言えなくなる。
「やはり、あいつは危険だ。……もう関わるのはやめてほしい」
「……でも、ルカも反省してたし、ちゃんと後で謝るって……っ」
あまりルカを悪く思ってほしくなくて、俺はフォローの言葉を口にした。その途中で俺を包む腕の力が強くなり、思わず声が漏れる。
「クロード、痛い……」
「……っ!?す、すまない」
俺がそう言うと、クロードからひゅっと息を呑む音が聞こえて、すぐに痛みはなくなった。掴まれた腰と太腿に締め付けられた感覚だけが残っている。
「っ、フレン……もう痛くないか?」
クロードから初めて見るような青ざめた顔でそう聞かれて、俺はさっきのがわざとじゃないことを確信する。クロードはそんな事しないし、きっと俺が余計な心配をかけたからつい力がこもっちゃっただけだよね。
「うん、大丈夫!平気!」
俺はクロードが安心してくれるように、彼の肩口に頭を擦り寄せて笑いかける。その後もクロードの言葉に安心してもらえるように返事を重ねながら、寮への道のりは過ぎていった
◇
「あー、また痛くなってきたかも……」
クロードから自室に送ってもらった後、俺はシャワーを浴びながら脚をさすっていた。かけてもらった鎮痛魔法が、温まった事できれてきたみたいだ。
そういえば俺去年も脚痛めてた気がするんだけど、もしかして文化祭に呪われてたりする?そんなくだらない事を考えながら髪を濡らしてシャンプーを手に取る。
「明日、ルカちゃんと謝れるかな?」
髪を覆う泡を流しつつ、俺は明日の学園演劇反省会に思いを馳せた。ライブを見にきてはくれたけど、楽屋でのルカはかなり動揺してたし、そのショックを考えると少し心配だ。
「けど、とりあえず今日はよく頑張ったし、あとは明日考えよっかな」
シャワーを止め、脱衣所でタオルに身を包みながら俺はそう呟く。学園演劇での事故に加えて全力でライブしたからもうクタクタだった。正直もう寝てしまいたい。
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