瞳が潤うまでに

夏鶴 里愛

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ばあやん

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2週間の休日が言い渡され家に帰るとばあやんがいた。

ぽっちゃりのばあやんを見るのは一ヶ月ぶりだ。
 
「よく来たね~。おばあちゃん。」

口ではおばあちゃん。ソウルはばあやん。

「うん、ありがとう。」

あれ、意外と素っ気ないな。

私が年取ったからかな。

可愛がられる側から可愛がる側になるのは辛いもんだな。

それからというものばあやんになにか聞いても渡しても塩対応をとってきた。

2歳年上のいとこには「よっ!独身。」とか、「スープを入れてくれるかい?あんたが入れると心も身もほぐれるからねガハハハハ。」

なんてじゃれ合ってる。羨ましいかと言われれば羨ましい。

ばあやんと孫のじゃれ合いイベントなんてよくあるものだが日本にいたがためこっちスタイルに慣れるのに時間がかかりすぎた。

でもこの様子…私嫌われてね?

何が原因になったんだろう。携帯を見すぎてるからか?

「若いもんが携帯いじってばかりで、少しぐらい家事の手伝いしやがれ!」とか?

実は手伝ってます。ばあやんの方を見てニッコリ笑うと目をそらされれる。

いや何したってゆうんや。

別の日、キッチンで水分補給していると、ばあやんがおじ家族の前で私について話してた。

「あの子が田舎に来たときね、わたしゃ期待したんよ、一緒の部屋で寝れるかな?ご飯一緒に食べようかな?なんてね。でもこいつときたら挨拶だけしてそれっきりなんよ?会ったの一回だけ。分かるこの意味?」

恐る恐るドアに向かうとばあやんは気づき更に追加する。

「私が会いに行こうと思ってね、見に行ったらいとこたちとでかけてるんだと。私を連れて行っても、良かったでしょう?また別の日行ってみたらなんて言われたと思う?「マリーはもう帰ったよ。」だってさ。んもうショック。」

口調や苛つき具合いを見ると笑いそうになるが、本当に悲しかったんだなと思うと申し訳なさがこみ上げてきた。

すかさずおばがフォローする。

「ほら、マリーはまだこの文化になれてないからさ…慣れ始めたばかりなんだよ。」

「慣れてるもなれてないも常識でしょう。」

挨拶に行っただけでも随分常識的だと思うけど…赤ちゃんもいたし。泊まるわけにも行かなかった。

私の常識が間違ってるのかもね。

田舎に行ったらばあやんに5回ぐらいは会いに行く。

脳の片隅にメモしときまーす。

それにしても一難去ってまた一難だなぁ。

メンタリストになれる気がしてきたよ。

 結局ばあやんの夢は叶うことになる。

同じ部屋で寝ることになり仲良くなれるかもと期待する。

「おやすみ、おばあちゃん。」

「おやすみ。」

ほう。返答はしてくれるのね。一歩前進。

だが、寝付けない。ママやパパでなれてるはずだがな…

宿敵なのかな…いびき。

アラーム設置して早めに起きれるようにしよう。

もしもの場合に1時間おきで設置しよう。

3個で十分かな。 


 目を覚まし、起きれなかった事を理解する。ばあやんが横にいたから声をかける。

「おはよう。窓開けようか?」

「朝起きたら開ける。これ常識。」

朝からテンション下げさせんなや。

「わかった。覚えたよ。もう聞かない。」

ばあやんは歳。ばあやんは歳。

支度するとばあやんがいとこたちになにか聞いていた。

英単語帳を手に取りソファーに座る。

「あなた達は静かね。」

「はぁ。そうかな?」

「うん。静かよ。携帯なんか見てないんじゃないの?」

「そんなことはないよ。」

「こいつのは朝からブルンブルンブルンブルン!止まないから止めに行ったけどわからなかったからコードを引っこ抜いたわ。」

それイヤホンー。ばあやんは私を見て続ける。

「本当だったら窓からぶん投げてやるところだったけど後々困るでしょ。」

ぜひそうしてもらいたかった。携帯なんてロクじゃない。沼よ沼。

でも、それをなんで言いふらす必要がある。

直接私に言って「あぁそうだったんだごめんね。次から気をつけるよ。」で済む話を何故ややこしくする。

いとこたちは反応に困ってる。

ため息をつく。人が仲直そうとするとき何故ぶっ壊そうとする。

いいや今は勉強に集中しよう。

手元を見ると英単語帳はクシャクシャに折れていた。

知らずに力んだか。ちょっとまずいかもな。

日が過ぎていく。眠れない。頭痛、吐き気、目がくらむ。

不眠症にでもなったか?

いびきのせい?精神的なもの?それとも両方?

今だけは…考えるのをよそう…

余計頭が痛い。

…そうだ!

こういうときのパパ!


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