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夜半の怪物

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この本、もうちょっと人を選んで欲しいなぁ。
僕、小説なんて書いたことないので正しい書き方なんて分からないのだけど……
まあ、素人のものでも良ければ、書かせていただきますけどね。









夜半の怪物









これは、僕の父から聞いた話です。
僕の父は教師でして。若い頃は転勤も多くて、色んな学校を行ったり来たりしてたらしいんですよ。
で、ある時に中学に転勤になったんですって。
そこがもう、田舎も田舎。港町にぽつんと建ってる木造校舎で。子供は一学年に三十人くらい。それでもまあ、子供達も素直で周りの人も親切だったから、いい所ではあったので苦ではなかったのだと。
それから一年そこで勤めて、暮らしにもすっかり馴染んで来た頃。
あるおかしな噂が流れ始めたんですって。



ある時から、生徒がひそひそ何かを話していたり、怯えたような顔で海を眺めていたりしていて。暗くなる前に帰りたいと、あれ程夢中になっていた部活を休むようになったりしたのだと。
疑問に思った父は、生徒に尋ねた。
すると生徒は、奇妙な話をしてくれた。
​────夜、海に怪物が現れるのだと。
怪物は見上げる程に大きく、白くぼんやりとした光を放っており姿ははっきりとは見えない。
そして、地響きの様な唸り声を上げながら獲物を探している。その声を聞いたものは呪われ、原因不明の病に襲われる。

俄には信じ難い噂だった。しかし、生徒達は本気で怯えているように見えた。
「中村のばあちゃんがずっと寝込んでるんもあれ、絶対怪物のせいなんや」
「そんなこと…」
「ほんとやって!ばあちゃん、あんな元気やったもん、おかしいやん」
父が信じていないのを察しているのか、その生徒は食い気味に話を被せてきた。「うち、帰り道で海の前通らんとあかんでいっつも怖い」
仕舞いには泣きそうな顔をして俯く生徒に、父も流石に気にするなとは言えなかったらしい。でも、噂が本当だとも思えなかった。
だから、「じゃあ先生が確かめてやる」
って言ったんだって。




それでその夜、父は本当に例の浜辺に行った。噂自体には半信半疑だったものの、街灯一つもない上に夜の海は真っ黒で底が見えないのでなかなか怖い。ざあ、と波の音がやけに不気味に聞こえた。
それから二時間くらい、夜の浜辺に座っていた。
しかしなんの気配も無い。次第に寒くなってきて、これ以上は風邪を引くなと思って帰ることにした。
生徒には、やっぱりあの噂は嘘だと伝えよう。
そう思って、立ち上がった時。
海が、膨れ上がった。

その時の光景を、一生忘れることはないだろう。父は言った。
それは、白いクジラだった。
『白鯨』って小説あるじゃないですか。
あれはマッコウクジラらしいですけど、父の見たものはシロナガスクジラって言う、世界一大きいやつっぽかったんですって。
とにかく、その大きな、山みたいなクジラがざぱりと水を噴き上げて現れたんですって。
真っ白な体が、月明かりを受けて光り輝く。黒い海と相まって際立つ白は、怪物というより神の化身のようですらあったと父は言いました。
そして、クジラは再び黒に溶けていった。夜の街を撫でる様な、低い鳴き声を奏でながら。




結局、怪物の正体はクジラだった訳だ。
なんでシロナガスがあそこに居たのかは今となっては分からないから、確かに不思議な話ではあるけど。
そんな訳で、おしまい。へたくそな小説で申し訳ないけど、文句は人選ミスした本に言ってください。








ついでに、中村のばあちゃんはただのぎっくり腰だったらしいです。



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