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第4話の3

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納得していると、テラの方から話しかけてきた。

「ヘンリー様。出過ぎた事かもしれませんご、ひとつ、提案がございます」

「ん?なんだい?」

「ヘンリー様の左腕についてです。不便なのではないでしょうか」

「まあ、そりゃもちろん不便だが……」

「さらに、左腕がないという事は戦闘能力の著しい低下につながります。この状況下では、致命的かと考えます」

「まあ、確かにそうだが、しかしだからといって腕を生やすことはさすがにできないだろう?」

「はい。現状では腕を生やすことは不可能ですが、義手を用意することはできます」

現状では、と来た。
内心驚きつつ、義手という言葉にも怪訝に思う。

「しかし、義手というのはかなり専門的な技術と、個々の状態に合わせた細かい調整が必要なのだろう。そのため、すべて特注品になると聞いたことがある。量産品の義手があるというのかい?」

「いいえ。そういった意味では、特注品の義手になります。ですが、専門の技師がいなくても、ここの設備を使用すればヘンリー様の状態に合わせた高性能な義手を作成することが可能です」

「そうなのか?しかしそれはどうやって……」

僕が口にした疑問に、テラは少し考えるような素振りをしてみせた。

「口で説明するよりも、実際に見ていただいた方が早いかと思います。もしよろしければ、コントロールルーム兼工房にご案内いたしますが」

この施設に、僕が目覚めたこの部屋以外にもいくつかの部屋があることは、さっき廊下を歩いた時にわかっていた。
この謎の施設の中を少しでも見せてもらえるというのであれば、願ったりだ。

「ああ、ぜひとも頼みたい」

僕は言った。

するとテラは、

「こちらです」

と言い、部屋の扉から廊下に出て行った。

ついていくと、地上部への階段とは逆の側に扉があり、その向こうにはさらに下へ向かう階段があった。

その階段を使って地下二階へと降りると、そこはなんとも奇妙な部屋だった。

全体的に暗く、様々なモニターやインジケーターの光が賑やかに輝いている。
実験室のような大きめの作業台があり、その奥にデスクと椅子があった。
周囲には様々な形をした機械や器具が並んでおり、壁には大きな液晶モニターが3枚もあった。
そのうちの2枚は、地図のようなものを映し出している。

そして作業台の上には透明な箱のようなものがあり、その中に、人間の腕の形をしたものが浮かんでいた。

そう、箱の中が水で満たされているわけでもないのに、浮かんでいたのだ。

「こちらが、コントロールルーム兼工房です。この施設の中枢です」

テラが言う。

僕はその部屋の様子に呆気にとられていた。

その中でも、特に箱の中に浮かんでいる義手に見とれていた。

金属のような光沢のある物質でできている。不思議と硬質な印象は受けない。

腕というのは、人の最も便利な道具だ。だからこそ、見た目にその機能が現れる。
この義手は、人間の腕よりも遥かに多くの事を可能にしてくれるだろう。

「そちらが、ヘンリー様の義手です。まだ完成品ではありませんが、微調整をすれば装着することができます。お気に召しましたか」

「ああ……。素晴らしい。こんなものをいつの間に作っていたんだい?」

「このボックスはナノテクを使用した3D出力機です。設計図があれば大抵のものは作ることができます。この義手の設計図は、私のようなアンドロイドのものを流用しました」

正直、何度もテラはアンドロイドだと言われているが、普通の人間にしか見えない。
もちろんテラの手も、普通の人間の女性のものだ。

「私のものと見た目が違うのは、より機能性を重視したためです。また、装着すれば人工皮膚によって覆われますので、実際の腕とさほど見分けがつかなくなるかと思います」

「そうなのか……。機能というのは?君の腕の流用ということは、関節が動かせたりするのか?」

僕の知っている義手は、棒のようなもので、関節が一つあればいいほうだ。
最高級品になると、魔法で動かせるものもあるが、とうてい自分の手のようにはいかない。

「基本的には、ご自分の手と同じように動かせます。電気信号と魔法とのマルチ接続ですので、違和感はほぼないかと。それに加えて、腕力の増加、反射回路による緊急自衛機能、電磁バリア、通信機能等がついています」

ふむ、わからん。
いや、インストール?とやらのおかげで単語の意味はわかるのだが、僕の知っている義手とあまりにもかけ離れすぎて理解が追いつかない。
しかし、とんでもなく高性能で便利な義手だということはわかった。

「装着いたしますか?」

「ああ」

その時、テラがぴくりと動きを止めた。何かに耳をすますように沈黙する。

少しして、テラは言った。

「探知システムに反応がありました。地上部周辺にヒトを感知。どうやら、おかわりが届いたようです。義手の慣らし運転にはちょうどよろしいかと」

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