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「ナタリー、お前との婚約は――破棄する」
ラウルのその一言は、冬の風よりも冷たくて、胸の奥まで突き刺さった。
「……え?」
わたしの口から漏れた声は、とても小さくて、まるで他人のものみたいだった。
赤い絨毯の上。真鍮のシャンデリアが光るサロンの中で、ラウルはわたしの手をつかんだまま、まるで「今日は天気がいいね」とでも言うかのように、さらりと言った。
「お前みたいな地味で、真面目すぎる女じゃ、貴族の妻は務まらない。わかるだろ?」
その目には、優しさなんてひとつもなかった。
だけど、そんなの、前から少しずつわかっていたのかもしれない。
わたしは、ラウルの好みに合うように、少しでも綺麗になろうと頑張っていた。華やかな色のドレスを着たり、お茶会で笑顔を忘れないように努力してきた。おしゃべりも、できるだけ合わせて、話題の本も読んだ。知らないふりをして、馬鹿なふりもした。
でも、全部……全部、無駄だったんだ。
「……どうして? 急に……そんな……」
「急じゃないさ。実は、前から思ってたんだ。お前って、面白くない。笑わないし、黙ってばっかり。頭がいいのは認めるけど、それだけじゃダメなんだよ。女は愛嬌だろ?」
ラウルはふっと笑った。
「貴族の令嬢は、もっと華があるもんさ。そう、たとえば――セシリアみたいにね」
「……!」
セシリア。侯爵家の令嬢で、最近ラウルがやけに親しくしている女性。
やっぱり、そういうことだったんだ。
わたしの手をラウルが離した瞬間、何かがぷつんと音を立てて、切れたような気がした。
「君も、いい人を見つけるといい。僕は、もっとふさわしい相手と未来を歩むつもりだよ。君も幸せになってくれ」
そう言い残して、ラウルはさっさと背を向けた。
まるで、捨てる価値もない紙くずみたいに。
その夜、わたしは自室のベッドの上で、声を殺して泣いた。
泣きたくなんてなかった。あんな男のことで、涙を流すなんて、悔しくてしかたなかった。
でも……心が、痛くて、どうしようもなかった。
「わたしの、何がいけなかったの……?」
声に出したって、答えなんて出るはずがない。
それでも、誰かに聞いてほしかった。
お母さまはもうこの世にいないし、お父さまも体が弱くて寝込んでいる。わたしがしっかりしなくちゃいけないのに、こんな夜くらい、弱くなってもいいでしょう?
胸がぎゅうっと苦しくなって、涙が止まらなかった。
でも、心の奥では、どこかで決意していた。
絶対に、こんなことで終わりたくない。
「見てなさいよ、ラウル……。わたしは、いつか――」
その先の言葉は、涙と一緒にベッドのシーツに染みこんで、誰にも聞こえなかった。
あれから、何日が経ったんだろう。
婚約破棄されてからというもの、毎日が灰色だった。
朝起きて、顔を洗って、鏡を見る。
そこに映るのは、どこにでもいる、地味な准男爵令嬢――わたし、ナタリー。
「……おはようございます、お嬢さま」
侍女のマリアがそっと声をかけてくれるけれど、その優しさすら胸に刺さった。
きっと彼女も、噂を聞いている。ラウルが侯爵令嬢のセシリア様と婚約したこと。
そして、わたしが――捨てられたこと。
「ありがとう、マリア。……朝食は、あとでいいわ」
「……かしこまりました」
マリアは気を遣ってくれている。でも、それが余計に申し訳なくて、苦しくて。
ラウルのことなんか、もうどうでもいいって思いたい。
でも、ふとした拍子に思い出してしまう。
「もっと華が必要だ」
「君は地味すぎる」
「セシリアみたいな貴族の花が、僕にはふさわしい」
言葉が、刃みたいに胸を刺す。
毎晩泣いて、朝になると目が腫れていて、鏡を見るたびに自分が情けなくて――
ああ、こんな自分じゃ、本当に誰にも愛されないんじゃないかって、思ってしまう。
そんなある日だった。
「お嬢さま、王都からお届け物です」
届けられたのは、一通の封筒。
金の封蝋が押された、それはとても立派なもので……送り主は――
『王国宰相 ゼノ=エルネスト』
「……え?」
わたしは思わず、二度見してしまった。
王国の宰相といえば、若くして宰相の座につき、冷酷で完璧主義者だと噂される人物。
冷たい瞳と切れる頭脳、何より人を寄せ付けない雰囲気で、近づける者は少ないと聞く。
そんな人が……なぜ、わたしに?
おそるおそる封を切って、中身を読んだ。
『准男爵令嬢ナタリー・セレスタ殿
突然の書簡、失礼いたします。
先日の春季宮廷晩餐会にて、貴嬢の振る舞いと会話力に強く感銘を受けました。
ついては、宰相府にて補佐役としてご登用申し上げたく、明朝十時、宰相執務室にお越しいただければ幸いに存じます。
宰相 ゼノ=エルネスト』
「え、な、なにこれ……!?」
目を何度こすっても、手紙の文字は消えない。
“補佐役”って……本当に?
わたし、見間違えてるんじゃないの? 何かの間違いとか、冗談じゃなくて?
でも、封蝋も本物だし、筆跡も整っていて、あきらかに正式なもの。
「ど、どうしよう……っ」
マリアに手紙を見せると、彼女も目をまんまるにしていた。
「す、すごいです! お嬢さま、まさか宰相様から直々に……!」
「わ、わたしなんかが、行っていいのかな……。あの、冷酷な宰相様に……?」
「でも……これは、チャンスかもしれませんよ。お嬢さまの、人生の転機です!」
転機――そう、かもしれない。
だって、あのままラウルの婚約者でい続けたら、わたしはただのお飾りだった。
でも今、宰相様がわたしの“知性”を見て、仕事として評価してくれている……?
「……行こう」
震える手で封筒を閉じながら、わたしは決意した。
逃げてばかりじゃ、だめだ。
誰かに必要とされることを、怖がらないでいたい。
そして翌朝。
わたしは、薄いラベンダー色のドレスに袖を通し、髪を丁寧にまとめた。
鏡の中のわたしは、いつもの地味な准男爵令嬢とはちょっと違って見えた。
「よし……」
鼓動は速くて、緊張で手が汗ばんでいたけど、足を止めなかった。
馬車に乗って、王都の政庁街へ。
そこにある、重厚な石造りの宰相府の扉を、そっと開いた。
「ナタリー・セレスタ様ですね。お待ちしておりました」
出迎えてくれたのは、銀髪の美しい女性秘書だった。
案内された廊下は静かで、荘厳で、まるで空気が凍りつくような場所。
わたしの小さな靴音が、コツコツと響く。
――そして。
扉の向こうに、彼はいた。
長身で、黒い髪。整った顔立ち。鋭い瞳がわたしを射抜くように見つめてくる。
王国宰相、ゼノ=エルネスト。
「……君が、ナタリー・セレスタ嬢か」
低くて落ち着いた、でもどこか柔らかさを含んだ声。
わたしは思わず、背筋を伸ばして礼をした。
「は、はいっ。あのっ……本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「礼はいい。……座りたまえ」
言われるままに椅子に腰を下ろしたけれど、心臓はバクバクだった。
ゼノ様は、わたしをじっと見ていた。
怖い。けれど、目が離せない。なぜだろう。
この人の目は、ただの冷たさだけじゃない。何か、奥にあるものを見ている気がする。
「先日の晩餐会、私はたまたま君の会話を耳にした。貴族の機嫌をとるのではなく、状況を正しく見極め、冷静に助言していたな」
「えっ……あれは、ただ……正しいと思ったことを言っただけです」
「そういうのを“誠実”という。……今の宰相府には、そういう者が必要だ」
そう言って、彼はまっすぐにわたしを見た。
「私は、君を信じてみたいと思った」
その一言に――涙が出そうになった。
だって、あのラウルですら、わたしの努力なんて見てくれなかったのに。
この人は、初対面なのに……わたしの“中身”を、見ようとしてくれている。
「……ありがとうございます。わたし、精いっぱい頑張りますっ!」
そのとき、確かに、何かが始まった。
ラウルに捨てられて、心がバラバラだったわたしの人生が、静かに動き出したんだ。
ラウルのその一言は、冬の風よりも冷たくて、胸の奥まで突き刺さった。
「……え?」
わたしの口から漏れた声は、とても小さくて、まるで他人のものみたいだった。
赤い絨毯の上。真鍮のシャンデリアが光るサロンの中で、ラウルはわたしの手をつかんだまま、まるで「今日は天気がいいね」とでも言うかのように、さらりと言った。
「お前みたいな地味で、真面目すぎる女じゃ、貴族の妻は務まらない。わかるだろ?」
その目には、優しさなんてひとつもなかった。
だけど、そんなの、前から少しずつわかっていたのかもしれない。
わたしは、ラウルの好みに合うように、少しでも綺麗になろうと頑張っていた。華やかな色のドレスを着たり、お茶会で笑顔を忘れないように努力してきた。おしゃべりも、できるだけ合わせて、話題の本も読んだ。知らないふりをして、馬鹿なふりもした。
でも、全部……全部、無駄だったんだ。
「……どうして? 急に……そんな……」
「急じゃないさ。実は、前から思ってたんだ。お前って、面白くない。笑わないし、黙ってばっかり。頭がいいのは認めるけど、それだけじゃダメなんだよ。女は愛嬌だろ?」
ラウルはふっと笑った。
「貴族の令嬢は、もっと華があるもんさ。そう、たとえば――セシリアみたいにね」
「……!」
セシリア。侯爵家の令嬢で、最近ラウルがやけに親しくしている女性。
やっぱり、そういうことだったんだ。
わたしの手をラウルが離した瞬間、何かがぷつんと音を立てて、切れたような気がした。
「君も、いい人を見つけるといい。僕は、もっとふさわしい相手と未来を歩むつもりだよ。君も幸せになってくれ」
そう言い残して、ラウルはさっさと背を向けた。
まるで、捨てる価値もない紙くずみたいに。
その夜、わたしは自室のベッドの上で、声を殺して泣いた。
泣きたくなんてなかった。あんな男のことで、涙を流すなんて、悔しくてしかたなかった。
でも……心が、痛くて、どうしようもなかった。
「わたしの、何がいけなかったの……?」
声に出したって、答えなんて出るはずがない。
それでも、誰かに聞いてほしかった。
お母さまはもうこの世にいないし、お父さまも体が弱くて寝込んでいる。わたしがしっかりしなくちゃいけないのに、こんな夜くらい、弱くなってもいいでしょう?
胸がぎゅうっと苦しくなって、涙が止まらなかった。
でも、心の奥では、どこかで決意していた。
絶対に、こんなことで終わりたくない。
「見てなさいよ、ラウル……。わたしは、いつか――」
その先の言葉は、涙と一緒にベッドのシーツに染みこんで、誰にも聞こえなかった。
あれから、何日が経ったんだろう。
婚約破棄されてからというもの、毎日が灰色だった。
朝起きて、顔を洗って、鏡を見る。
そこに映るのは、どこにでもいる、地味な准男爵令嬢――わたし、ナタリー。
「……おはようございます、お嬢さま」
侍女のマリアがそっと声をかけてくれるけれど、その優しさすら胸に刺さった。
きっと彼女も、噂を聞いている。ラウルが侯爵令嬢のセシリア様と婚約したこと。
そして、わたしが――捨てられたこと。
「ありがとう、マリア。……朝食は、あとでいいわ」
「……かしこまりました」
マリアは気を遣ってくれている。でも、それが余計に申し訳なくて、苦しくて。
ラウルのことなんか、もうどうでもいいって思いたい。
でも、ふとした拍子に思い出してしまう。
「もっと華が必要だ」
「君は地味すぎる」
「セシリアみたいな貴族の花が、僕にはふさわしい」
言葉が、刃みたいに胸を刺す。
毎晩泣いて、朝になると目が腫れていて、鏡を見るたびに自分が情けなくて――
ああ、こんな自分じゃ、本当に誰にも愛されないんじゃないかって、思ってしまう。
そんなある日だった。
「お嬢さま、王都からお届け物です」
届けられたのは、一通の封筒。
金の封蝋が押された、それはとても立派なもので……送り主は――
『王国宰相 ゼノ=エルネスト』
「……え?」
わたしは思わず、二度見してしまった。
王国の宰相といえば、若くして宰相の座につき、冷酷で完璧主義者だと噂される人物。
冷たい瞳と切れる頭脳、何より人を寄せ付けない雰囲気で、近づける者は少ないと聞く。
そんな人が……なぜ、わたしに?
おそるおそる封を切って、中身を読んだ。
『准男爵令嬢ナタリー・セレスタ殿
突然の書簡、失礼いたします。
先日の春季宮廷晩餐会にて、貴嬢の振る舞いと会話力に強く感銘を受けました。
ついては、宰相府にて補佐役としてご登用申し上げたく、明朝十時、宰相執務室にお越しいただければ幸いに存じます。
宰相 ゼノ=エルネスト』
「え、な、なにこれ……!?」
目を何度こすっても、手紙の文字は消えない。
“補佐役”って……本当に?
わたし、見間違えてるんじゃないの? 何かの間違いとか、冗談じゃなくて?
でも、封蝋も本物だし、筆跡も整っていて、あきらかに正式なもの。
「ど、どうしよう……っ」
マリアに手紙を見せると、彼女も目をまんまるにしていた。
「す、すごいです! お嬢さま、まさか宰相様から直々に……!」
「わ、わたしなんかが、行っていいのかな……。あの、冷酷な宰相様に……?」
「でも……これは、チャンスかもしれませんよ。お嬢さまの、人生の転機です!」
転機――そう、かもしれない。
だって、あのままラウルの婚約者でい続けたら、わたしはただのお飾りだった。
でも今、宰相様がわたしの“知性”を見て、仕事として評価してくれている……?
「……行こう」
震える手で封筒を閉じながら、わたしは決意した。
逃げてばかりじゃ、だめだ。
誰かに必要とされることを、怖がらないでいたい。
そして翌朝。
わたしは、薄いラベンダー色のドレスに袖を通し、髪を丁寧にまとめた。
鏡の中のわたしは、いつもの地味な准男爵令嬢とはちょっと違って見えた。
「よし……」
鼓動は速くて、緊張で手が汗ばんでいたけど、足を止めなかった。
馬車に乗って、王都の政庁街へ。
そこにある、重厚な石造りの宰相府の扉を、そっと開いた。
「ナタリー・セレスタ様ですね。お待ちしておりました」
出迎えてくれたのは、銀髪の美しい女性秘書だった。
案内された廊下は静かで、荘厳で、まるで空気が凍りつくような場所。
わたしの小さな靴音が、コツコツと響く。
――そして。
扉の向こうに、彼はいた。
長身で、黒い髪。整った顔立ち。鋭い瞳がわたしを射抜くように見つめてくる。
王国宰相、ゼノ=エルネスト。
「……君が、ナタリー・セレスタ嬢か」
低くて落ち着いた、でもどこか柔らかさを含んだ声。
わたしは思わず、背筋を伸ばして礼をした。
「は、はいっ。あのっ……本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「礼はいい。……座りたまえ」
言われるままに椅子に腰を下ろしたけれど、心臓はバクバクだった。
ゼノ様は、わたしをじっと見ていた。
怖い。けれど、目が離せない。なぜだろう。
この人の目は、ただの冷たさだけじゃない。何か、奥にあるものを見ている気がする。
「先日の晩餐会、私はたまたま君の会話を耳にした。貴族の機嫌をとるのではなく、状況を正しく見極め、冷静に助言していたな」
「えっ……あれは、ただ……正しいと思ったことを言っただけです」
「そういうのを“誠実”という。……今の宰相府には、そういう者が必要だ」
そう言って、彼はまっすぐにわたしを見た。
「私は、君を信じてみたいと思った」
その一言に――涙が出そうになった。
だって、あのラウルですら、わたしの努力なんて見てくれなかったのに。
この人は、初対面なのに……わたしの“中身”を、見ようとしてくれている。
「……ありがとうございます。わたし、精いっぱい頑張りますっ!」
そのとき、確かに、何かが始まった。
ラウルに捨てられて、心がバラバラだったわたしの人生が、静かに動き出したんだ。
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