もう一度 君に会いたい

富本アキユ

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もう一度 君に会いたい

葉月の気持ち

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ソフィアの話を聞き終わり、葉月が口を開いた。

「…………あたしは…………宇宙人…………だったの……?……あは……あはは……参ったな……。思ってたのと違いすぎてビックリしちゃうね……。なんも……言葉が出てこないや……」

葉月……。

「地球にいたら死んじゃうから……名前も聞いたこともないアルファ星なんて星に行かなきゃ生きられないなんて……。そんなの……そんなのってないよ……。アルファ星で暮らすか……手術受けてもそれでも十年もアルファ星で過ごすって……。わかんない……。訳わかんないよぉ……。嫌だよぉ……。家族と離れ離れになって……こうちゃんとも……学校の皆とも……そんなの……嫌だよぉ……。ううっ……うううっ……無理だよぉ……」

俺は、葉月になんて声をかけてやればいいのか分からなかった。
何も言えず、泣いている葉月を見ている事しかできなかった。

「葉月ちゃん……。体、凄く疲れてるよね……?辛いよね……?」

ソフィアが葉月の肩を触りながら、優しく話しかけた。

「うん……。うっ……ううっ……」
「熱を下げるアルファ星の薬があるの。飲む度に耐性がついていくから何回も使う事はできないけど、ひとまずこれ飲もう?よく効くから。……ね?」

黙って頷いた葉月は、薬を飲んだ。

「どうかな?飲んだらすぐ効く薬だから楽になってない?」
「……熱……下がってくのが分かる。凄く楽になった」
「よかった。あのね、葉月ちゃん。あたし、葉月ちゃんのお母さんにも会ってちゃんとお話ししてきたの。お母さんもうすぐ来てくれるはずだから、その間、あたしとお話しない?あたし、葉月ちゃんとお友達になりたいなって思ってるの」
「うん……」

ソフィアと葉月は、お互いの事を少しずつ話し始めた。
食べ物は何が好きなのかとか漫画の話。学校であった話とか。
内容は、女の子同士の他愛もない普通のお喋りだった。
熱が下がった事もあるのだろう。
二人で喋っている間に葉月は、落ち着きを取り戻してきた。

扉の開く音がした。おばちゃんがきた。

「お母さん!!」
「葉月。事情は全部ソフィアさんから聞いたよ。お母さん驚いちゃった。これしか葉月を治せる方法がないんだね」
「うん……」
「大丈夫よ。十年くらい。宇宙旅行のつもりで行ってきなさい。なかなかできる経験じゃないわよ。宇宙旅行なんてハリウッドスターみたいね。かっこいいわよ」
「あはは……」
「うちの事とか学校の事とかは何も心配しなくていいから、全部お母さんに任せておきなさい。あんたは体をしっかり治してくるの。それが一番大事な事よ」
「……ありがとう。お母さん」

葉月は、おばちゃんを強く抱きしめた。
そして俺に向かって言った。
「こうちゃんがここにいるって事は、こうちゃんも事情は知ってるんだね?」
「うん、全部聞いたよ」
「こうちゃん。葉月のお見送りお願いね」
「おばちゃんは?葉月の見送りいいの?」
「いいんだよ、行って来て。葉月の事よろしくね」

そして俺の耳元に近づいて、こっそりと……
「おばちゃんだって空気ぐらい読めるわよ」
と言った。

ソフィアが口を開いた。
「じゃあそろそろ行きましょう。あまり長い時間いる事は出来ないわ。皆、手を繋いで」

全員で輪になって手を繋いだ。
俺は、改めて一人一人の顔を確認した。

ソフィア。明るくて優しいアルファ星人の女の子。ソフィアのおかげで葉月を助けることができそうだ。泣いた葉月にも寄り添ってくれたし、二人は良い友達になれそうだ。マスクに対しては、態度が冷たいけど……。
マスク。無口で不愛想なアルファ星人の腕の良いパイロットらしい。不審者で危ない奴だと思っていた。でもコイツはコイツで不器用なりにも一生懸命、葉月を探してくれてたんだな。悪い奴じゃなかったんだ。
葉月。昔から毎日見てる顔だ。いつもの感じだ。

「それじゃ、いくよ」
ソフィアの声と同時に瞬間移動装置ミステルが起動して移動した。
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