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もう一度 君に会いたい
もう一度 会いたい
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瞬間移動装置ミステルで移動してきた先は、町外れにある森の中だった。
「ここは、町外れの森の中か」
「宇宙船も隠せるし、人目に付かない丁度良い場所だったの。マスク。船を動かしに行くわよ」
「……………………わかった」
「じゃあ俺達も」
「あっ、二人はそこで適当に話でもしながら待ってて。起動するのに時間がかかるのよ」
「…………いや……起動は早……うぐっ……」
ソフィアがマスクの腹に拳を入れる。
「ほ、ほら、行くわよ」
ソフィアに引きずられて、マスクが連れていかれる。
葉月と二人きりになった。
生まれてからずっと家が隣同士で一緒に過ごしてきた。
高校のクラスも一緒で毎日くだらない話とか喧嘩しながら、これからも葉月と一緒に毎日を面白おかしく過ごしていくものだと思ってた。
まさかいきなり十年会えなくなるなんてな。
「……体、調子良いのか?」
「うん。熱下がって今は……良い感じだよ」
「へぇー、そっか……」
「うん……」
「……すげぇんだな。アルファ星の薬って」
「うん……」
「そんだけ凄い薬ある星なら医療も凄いだろうしさ。・・・何も心配いらねぇんじゃねぇの?」
「うん……」
「…………………………」
「……………………………………」
それからは、お互い、何も言わない時間が続いた。
しばらくして、ソフィアとマスクが宇宙船に乗ってきた。
「お待たせ。いつでも出発できるよ」
ソフィアが宇宙船の中から右手を挙げていた。
そして葉月が口を開いた。
「あたし……向こうで十年もいるんだよね。あーあー、さらばだ。あたしの青春」
「帰ったら二十六歳か。おばさんだな」
「うっせー」
グーパンチで肩を殴られた。
「いってー。グーパンはやめろよな」
「でもさー、現実的な話するとさー。あたし高校中退じゃん。帰ってきてからどうやって生きていきゃいいのかなぁ……」
「………………お、お前の面倒くらい俺が見てやる。そんな事気にすんな」
「おー?おー?プロポーズー?男だねぇー!」
「うっ、うっせー。つまんねぇ事心配してねぇで早く行けよ」
「はいはい。行ってきますよぉーだ」
葉月は宇宙船に乗り込んでいく。
乗り込んだ葉月は、くるっとこちらを振り返った。
「それじゃ、いってくるね」
宇宙船の入り口が閉まった。
不思議なエンジンの音が聞こえる。
宇宙船が宙に浮かび、空高く昇って行った。
その姿は少しずつ小さくなっていき、やがて見えなくなった。
「行ってしまったか……」
俺は何も見えない空をしばらく眺めていた。
あの日から十年が経過した。
葉月は本当に、戻ってくるのだろうか。
葉月とソフィアは、良い友達になれそうだった。
アルファ星人の葉月のお母さんのマリアさんも、葉月の事を十六年間ずっと見守ってくれていた。
そして葉月の命を助ける為に行動してくれた。
その人も間違いなく、葉月のお母さんだと言える。
きっと優しくて良い人なんだろう。
きっと二人は、会ってるんだろうな。
一緒に暮らしてるのかな?
十年という時間……。
優しいお母さんがいて、新しい友達ができて十年という時間を一緒に過ごす。
人を取り巻く環境が変化して長い年月が過ぎれば、人の考え方や価値観は変わっていく。
……変わるには十分な時間だ。
俺もこの十年で色々変わった。
高校生でなくなった。
仕事が決まって働くようになった。
昔よりか少しは、大人になった気がする。
地球で十六年。アルファ星で十年。
十年したらアルファ星を気に入るかもしれない。
高校生の時のクラスメイトだった阿部も、都会から戻る予定だったが、都会の生活が気に入っていて、ずっと向こうで暮らす事に決めたらしい。
もしかしたら葉月は、アルファ星人としての自分を受け入れて、アルファ星で生きる道を選ぶかもしれない。
もしかしたら葉月も……。
可能性がゼロではない。
そうなったとしても……。
俺は……。
葉月が納得して選んで、幸せであってくれるならそれでいい。
どこかで元気に生きてるなら……。
頭の中に葉月との色んな思い出が蘇ってくる。
色んな葉月の顔が頭に浮かんでくる。
笑った顔、怒った顔、悲しんだ顔、楽んでいる顔。
………………
でも……
願い事が叶うのならば……
もう一度 葉月に会いたい。
そう思ったのと同時だった。
空の高いところに何かが浮かんでいるのが見えた。
そしてそれは、どんどん地上に近づいてきて影が大きくなる。
それは、ついに地面に着陸した。
入口が開いた。
「ただいま」
その姿を見た俺は、泣きながら葉月を強く抱きしめた。
「ここは、町外れの森の中か」
「宇宙船も隠せるし、人目に付かない丁度良い場所だったの。マスク。船を動かしに行くわよ」
「……………………わかった」
「じゃあ俺達も」
「あっ、二人はそこで適当に話でもしながら待ってて。起動するのに時間がかかるのよ」
「…………いや……起動は早……うぐっ……」
ソフィアがマスクの腹に拳を入れる。
「ほ、ほら、行くわよ」
ソフィアに引きずられて、マスクが連れていかれる。
葉月と二人きりになった。
生まれてからずっと家が隣同士で一緒に過ごしてきた。
高校のクラスも一緒で毎日くだらない話とか喧嘩しながら、これからも葉月と一緒に毎日を面白おかしく過ごしていくものだと思ってた。
まさかいきなり十年会えなくなるなんてな。
「……体、調子良いのか?」
「うん。熱下がって今は……良い感じだよ」
「へぇー、そっか……」
「うん……」
「……すげぇんだな。アルファ星の薬って」
「うん……」
「そんだけ凄い薬ある星なら医療も凄いだろうしさ。・・・何も心配いらねぇんじゃねぇの?」
「うん……」
「…………………………」
「……………………………………」
それからは、お互い、何も言わない時間が続いた。
しばらくして、ソフィアとマスクが宇宙船に乗ってきた。
「お待たせ。いつでも出発できるよ」
ソフィアが宇宙船の中から右手を挙げていた。
そして葉月が口を開いた。
「あたし……向こうで十年もいるんだよね。あーあー、さらばだ。あたしの青春」
「帰ったら二十六歳か。おばさんだな」
「うっせー」
グーパンチで肩を殴られた。
「いってー。グーパンはやめろよな」
「でもさー、現実的な話するとさー。あたし高校中退じゃん。帰ってきてからどうやって生きていきゃいいのかなぁ……」
「………………お、お前の面倒くらい俺が見てやる。そんな事気にすんな」
「おー?おー?プロポーズー?男だねぇー!」
「うっ、うっせー。つまんねぇ事心配してねぇで早く行けよ」
「はいはい。行ってきますよぉーだ」
葉月は宇宙船に乗り込んでいく。
乗り込んだ葉月は、くるっとこちらを振り返った。
「それじゃ、いってくるね」
宇宙船の入り口が閉まった。
不思議なエンジンの音が聞こえる。
宇宙船が宙に浮かび、空高く昇って行った。
その姿は少しずつ小さくなっていき、やがて見えなくなった。
「行ってしまったか……」
俺は何も見えない空をしばらく眺めていた。
あの日から十年が経過した。
葉月は本当に、戻ってくるのだろうか。
葉月とソフィアは、良い友達になれそうだった。
アルファ星人の葉月のお母さんのマリアさんも、葉月の事を十六年間ずっと見守ってくれていた。
そして葉月の命を助ける為に行動してくれた。
その人も間違いなく、葉月のお母さんだと言える。
きっと優しくて良い人なんだろう。
きっと二人は、会ってるんだろうな。
一緒に暮らしてるのかな?
十年という時間……。
優しいお母さんがいて、新しい友達ができて十年という時間を一緒に過ごす。
人を取り巻く環境が変化して長い年月が過ぎれば、人の考え方や価値観は変わっていく。
……変わるには十分な時間だ。
俺もこの十年で色々変わった。
高校生でなくなった。
仕事が決まって働くようになった。
昔よりか少しは、大人になった気がする。
地球で十六年。アルファ星で十年。
十年したらアルファ星を気に入るかもしれない。
高校生の時のクラスメイトだった阿部も、都会から戻る予定だったが、都会の生活が気に入っていて、ずっと向こうで暮らす事に決めたらしい。
もしかしたら葉月は、アルファ星人としての自分を受け入れて、アルファ星で生きる道を選ぶかもしれない。
もしかしたら葉月も……。
可能性がゼロではない。
そうなったとしても……。
俺は……。
葉月が納得して選んで、幸せであってくれるならそれでいい。
どこかで元気に生きてるなら……。
頭の中に葉月との色んな思い出が蘇ってくる。
色んな葉月の顔が頭に浮かんでくる。
笑った顔、怒った顔、悲しんだ顔、楽んでいる顔。
………………
でも……
願い事が叶うのならば……
もう一度 葉月に会いたい。
そう思ったのと同時だった。
空の高いところに何かが浮かんでいるのが見えた。
そしてそれは、どんどん地上に近づいてきて影が大きくなる。
それは、ついに地面に着陸した。
入口が開いた。
「ただいま」
その姿を見た俺は、泣きながら葉月を強く抱きしめた。
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